広末涼子さんが2025年5月、双極性感情障害と甲状腺機能亢進症の診断を受け、芸能活動の休止を発表されました。このニュースを受け、多くの方が「双極性感情障害とは何か?」と関心を寄せています。以下に、双極性感情障害の概要、症状、原因、治療法、そして社会的な理解について詳しく解説いたします。
双極性感情障害とは?

双極性感情障害(そうきょくせいかんじょうしょうがい)は、以前は「躁うつ病」と呼ばれていた精神疾患で、気分が高揚する「躁状態」と、気分が沈む「うつ状態」を繰り返す特徴があります。この疾患は、感情やエネルギーの極端な変動を伴い、日常生活に支障をきたすことがあります。
主な症状
躁状態の症状
- 異常なほどの高揚感や自信過剰
普段よりもテンションが高くなり、自分は何でもできるという万能感に包まれます。他人の助言を無視し、自信満々に突き進むことが多くなります。 - 睡眠欲求の減少(ほとんど眠らなくても平気と感じる)
数時間しか眠っていなくても疲れを感じず、活動的になり、夜中でも動き回ることがあります。ただし、これは“エネルギーが満ちている”状態ではなく、脳の異常な興奮状態です。 - 過剰な活動性や衝動的な行動(浪費、性的逸脱など)
買い物で高額なものを次々と購入したり、異性関係に奔放になるなど、後から後悔するような行動を impulsively(衝動的に)とってしまうことがあります。 - 注意散漫や思考の飛躍
アイデアが次々と浮かんではすぐに話が飛び、会話の内容が支離滅裂になったり、聞いている相手がついていけなくなることがあります。本人は話を止められない状態になります。 - 攻撃的または易怒的な行動
ちょっとした指摘にもイライラして怒鳴ったり、人と衝突することが増える傾向があります。自分の考えを否定されると過敏に反応しやすくなります。
このような躁状態は、本人には「調子が良い」と感じられる場合もあるため、初期段階では病気と気づきにくいことがあります。ですが、その裏には脳内の異常な興奮状態があり、放置すると深刻な問題を引き起こす可能性があるため、早期の受診と診断が大切です。
うつ状態の症状
- 持続的な悲しみや虚無感
理由がわからなくても悲しみや虚しさが消えず、1日中気分が重い状態が続きます。周囲の励ましや楽しい出来事にも反応できず、「自分はダメだ」「生きていても仕方がない」といった否定的な思考にとらわれがちです。 - 興味や喜びの喪失
以前は楽しめていた趣味や活動にも興味が持てなくなり、何をしても「楽しい」と感じられなくなります。これが続くと、社会的な関わりも避けるようになります。 - 疲労感やエネルギーの低下
睡眠を十分にとっても疲れが取れず、朝起きることすら困難になります。体が鉛のように重く感じ、日常的な家事や通勤すら負担に感じられます。 - 集中力の低下や決断力の欠如
頭がうまく働かず、仕事や勉強に集中できない状態が続きます。些細なことにも迷ってしまい、何も決められない自分にさらに落ち込むことがあります。 - 自責感や無価値感
「自分は役立たずだ」「周りに迷惑をかけている」といった思考が強まり、過去の出来事を繰り返し思い出して自分を責めてしまう傾向があります。 - 食欲や睡眠パターンの変化
食事が喉を通らなくなる、または過食してしまうなど、食欲に変化が見られます。睡眠も、寝つきが悪くなる(不眠)か、逆に一日中寝ていたいという状態(過眠)になる人もいます。 - 死にたいという思考や自殺念慮
自分の存在が周囲にとって負担だと感じたり、この苦しみから逃れたいと感じ、自殺を考えるようになる場合もあります。これは非常に危険な状態で、早急なサポートが必要です。
うつ状態では、周囲からは「怠けている」「やる気がない」と誤解されやすいですが、本人にとっては“気持ちの問題”ではなく、脳と心の機能の不調による医学的な症状です。
適切な治療と理解あるサポートが、回復の大きな鍵になります。
原因と発症の要因
双極性感情障害の正確な原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています
- 遺伝的要因:家族歴がある場合、発症リスクが高まると言われています。
- 脳の化学的要因:神経伝達物質(セロトニン、ドーパミンなど)のバランスの乱れが関与しているということが言われています。
- 環境的要因:ストレスの多い出来事や生活環境の変化が発症の引き金となることがあります。
治療法
双極性感情障害は、適切な治療によって症状の管理が可能です。主な治療法には以下が含まれます
- 薬物療法:気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など)、抗精神病薬、抗うつ薬などが用いられることが多くあるようです。
- 心理療法:認知行動療法(CBT)や家族療法が効果的と言われています。
- 生活習慣の改善:規則正しい生活リズムの維持、ストレス管理、十分な睡眠が重要です。
治療は個々の症状や状況に応じて調整され、医師との継続的な連携が必要です。
社会的な理解と支援
双極性感情障害は、適切な治療と支援によって多くの方が社会生活を送ることが可能です。しかし、精神疾患に対する偏見や誤解が根強く残っており、患者さんが孤立する原因となっています。広末涼子さんの公表は、こうした偏見を打破し、社会全体の理解を深める一助となることが期待されます。
まとめ
双極性感情障害は、気分の極端な変動を特徴とする精神疾患ですが、適切な治療と支援によって症状の管理が可能です。広末涼子さんのように、公に症状を公表することで、社会的な理解と支援の輪が広がることが望まれます。私たち一人ひとりが、精神疾患に対する正しい知識と理解を持ち、支え合う社会を築いていくことが重要です。
以下に、双極性感情障害や心の不調に悩む方、そのご家族向けに役立つ公的支援先と相談窓口一覧をまとめました。
■公的な相談窓口・支援先リンク
心の不調を感じている方、また身近な方が悩んでいる場合は、一人で抱え込まずに、以下のような専門機関への相談もご検討ください。
- こころの耳(厚生労働省)
- みんなのメンタルヘルス総合サイト
- 全国の精神保健福祉センター
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
- 日本うつ病学会