強迫性障害(OCD: Obsessive-Compulsive Disorder)は、不安や恐怖から逃れるために、特定の行動や考えを繰り返してしまう精神疾患の一つです。
元モーニング娘.道重さゆみさんがこの障害について公表したことで、多くの人がこの問題に共感し、関心を持つようになりました。
公表するのも勇気がいったと思います。しかし,こうして公表してくださったおかげで,沢山の隠れ強迫性障害の人は救われたと思います。
今日はメンタル心理カウンセラーであり、上級心理士の資格を持つ私が、強迫性障害の原因やきっかけ、対処法、そして生活の中で注意すべきポイントを詳しく解説したいと思います。
強迫性障害の症状と特徴
強迫性障害の主な症状は、
「強迫観念」と
「強迫行為」
の2つに分けられます。
1. 強迫観念
強迫観念とは、不安や恐怖を引き起こす繰り返し頭に浮かぶ考えやイメージのことです。
たとえば、
「手が汚れているのではないか」
「火の元を消し忘れたのではないか」
といった過剰な心配です。
これらは本人が不合理だと理解していても、頭から離れません。
そして、この症状がほぼほとんどの強迫性障害の人に現れる症状なのですが、『神経質だ』『気にしすぎだ』と家族や身近な人に言われる事で、ますます悪化してしまう症状の一つでもあります。
2. 強迫行為
強迫行為とは、不安を和らげるために繰り返し行う行動や儀式的な行為のことです。
具体的には以下のようなものがあります:
• 過度の手洗いや消毒
• 繰り返し戸締りや火の元を確認する
• 数字や順番にこだわる
• 物を一定の位置に並べ直す
これらの行動は一時的に不安を和らげるものの、根本的な解決には至らず、次第に生活に支障をきたします。
私のところに相談に来る人も、この症状がひどくなり
結果、外出さえも出来なくなる人が多くいます。
>>この症状の辛いところは
①こういう事をしても意味がないと頭では理解している
②それでも、やらなければ気が済まないし、心が落ち着かない
というところです。
しかも、これらを延々と繰り返してしまいます。
それでも「これが病気だ」と気づかない人も多くいるのが現状です。
強迫性障害になる原因
強迫性障害が引き起こす、これらの辛い症状には、原因があります。
1. 脳の機能異常
研究によれば、強迫性障害は脳の一部、特に前頭葉や扁桃体の過剰な活動と関連していると言われています。
この部分は感情や判断、危険の察知を司る役割を持っており、これが過剰に働くと、不安や強迫的な行動が引き起こされるようです。
2. 遺伝的要因
遺伝の影響も考えられており、家族に強迫性障害や不安障害を持つ人がいる場合、発症リスクが高まるとされています。
3. 心理的要因
過去のトラウマやストレスがきっかけになることがあります。
たとえば、いじめ、家庭内での虐待、重大な出来事(震災や事故など)により、不安が強化されることがあります。
>私の元にも、心理的要因から『強迫性障害』を発症した方が多く相談に来られます。
特に多いのは、幼児期の家庭環境から来るストレスです。
家庭環境が強迫性障害を引き起こす具体例として、以下のようなケースがあります。
例:厳格な家庭での育成と完璧主義の押し付け
家庭環境の特徴
• 親が非常に厳格であり、失敗を許さない姿勢を持つ。
• 子どもに高い期待をかけ、学業や行動において「完璧」であることを求める。
• 子どもが失敗すると、親が強い叱責や批判を与える。
• 家庭内で「汚れ」や「不潔さ」に対する過剰なこだわりがある
(例:部屋や食器の清潔さを極端に強調する)
⇨子どもの心理的反応
このような家庭環境で育った子どもは、
「失敗してはいけない」
「汚れてはいけない」
といった過度なプレッシャーを常に感じています。
その結果、次のような心理的影響が生じることがあ流ので具体例を挙げてみます。
1. 不安の高まり
親からの叱責を避けるため、常に自分の行動を確認したり、不安を抑えるための行動を繰り返すようになる。
2. 自己価値の低下
親の要求を満たせない自分に対する否定的な感情が強まり、
「自分は不十分だ」
という思い込みが形成される。
強迫性障害の具体的な発症例
この環境で育ったAさん(仮名・20代女性)の場合、幼少期から以下の行動が見られるようになりました。
• 過剰な手洗い
親が「汚い手で何かを触ると病気になる」と繰り返し言ったため、外出後や何かに触れた後、何度も手を洗う癖がついた。
• 宿題や作業の繰り返し確認
学校の課題を「ミスがあってはいけない」と考え、何度も同じ内容をやり直す。
• 不潔恐怖
家の中が少しでも散らかっていると不安を感じ、何時間も掃除を続ける。
>>その後の影響
Aさんは成長とともに、日常生活にも強迫的な行動が広がり、特に「確認」や「清潔さ」に対する執着が強まりました。大学に入った後も、何度も手を洗ったり、部屋の掃除に何時間も費やすようになり、勉強や友人との交流に支障をきたしました。
専門的な分析と対応
この例では、家庭環境が強迫性障害の発症に大きく寄与していると考えられます。
厳しい家庭のルールや親の影響で、
「恐れ」を回避するために強迫的な行動
を取るようになったのです。
対応策
1. 認知行動療法
• 「汚れても問題ない」という認識を少しずつ育てる。
これは、本当に難しい事です。自分1人で、この認識を育てる事はかなりの時間と根気が必要になります。
• 不安を引き起こす状況に直面し、不安を和らげる儀式的行動を控える練習を行う。
2. 家族への介入
• 家族も強迫性障害の理解を深め、子どもに対する過剰な期待や叱責を控える。
• 「完璧さ」を求めず、失敗や不完全さを受け入れる姿勢を示す。
3. リラクゼーション
• ストレスを軽減するために、瞑想やヨガ、深呼吸を生活の中に取り入れるようにしましょう。
• 自分の価値を「行動や成果」ではなく、「存在そのもの」に見いだせるようにサポートしましょう。
このような家庭環境が背景にある場合、本人だけでなく家族全体の理解とサポートが本当に重要です。
問題を根本的に解決するために、家庭全体で環境を見直すことが求められます。
環境要因
家庭や学校、職場環境での過剰な規律や高い期待も、強迫性障害の発症に影響します。
「失敗してはいけない」
「完璧でなければならない」
といったプレッシャーが引き金となることが多いです。
強迫性障害のきっかけ
強迫性障害の発症には、次のような具体的なきっかけが挙げられます。
1. ストレスの蓄積
長時間の仕事や勉強、家庭内の問題が慢性的なストレスとなり、発症するケースが多いです。
2. 重要な出来事
転職、進学、結婚、出産など、人生の節目がきっかけになることもあります。
3. 感染症
一部の研究では、A群β溶血性連鎖球菌感染症が、子どもや青年における強迫性障害の発症リスクを高める可能性があると報告されています。
4. 睡眠不足
十分な休息が取れないことで脳機能が低下し、不安を抑えられなくなることがあります。
強迫性障害の治療法
1. 認知行動療法(CBT)
認知行動療法は、強迫性障害に対する最も効果的な治療法の一つです。
この治療法では、以下の2つの手法が中心となります。
• 暴露反応妨害法(ERP)
患者が不安を引き起こす状況に少しずつ直面し、不安を和らげる行動(例:手洗い)を控える練習をします。
• 認知再構成
「不安な考えは現実ではない」
という認識を持てるように、思考パターンを修正します。
2. 薬物療法
心療内科を受診することで、強迫性障害の症状を緩和する効果がある薬物を処方されます。
処方箋で指示されている用法容量を守り服薬することが望ましいです。
症状が重度の場合、抗不安薬が処方されることもあります。
3. マインドフルネス
最近では、マインドフルネス瞑想が不安を軽減し、強迫的な思考をコントロールするのに効果があるとされています。
普段の生活で気をつけること
1. ストレス管理
瞑想やヨガ、ウォーキングなどのリラクゼーション活動を取り入れましょう。
ストレスをためないことが重要です。
2. 生活リズムの改善
規則正しい睡眠とバランスの取れた食事を心がけ、脳の機能を正常に保つことが必要です。
3. 適度な運動
運動は脳内のセロトニン分泌を促し、不安を軽減する効果があります。
4. サポートを求める
一人で悩まず、家族や友人、専門家に相談することが大切です。
自助グループへの参加もおすすめです。
次のページでは克服に向けてのステップをご紹介します。
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