
はじめに:「Microsoft Agent 365」とは?
2025年11月の Microsoft Ignite 2025 で、Microsoftが新しく 「Microsoft Agent 365」 というサービスを発表しました。
名前だけ聞くと「またMicrosoft 365の何かかな?」という印象ですが、実はこれは、
会社で使うAIエージェントを“社員のように”まとめて管理するための新しい基盤
です。Microsoft自身はこれを 「AIエージェントのコントロールプレーン(制御基盤)」 と呼んでいます。
この記事では、
- Agent 365は何をするサービスなのか
- どんな会社・シナリオで役に立ちそうか
- 一般のMicrosoft 365ユーザーにどんな影響があるのか
を、「きみよや」スタイルでできるだけかみ砕いて解説します。
Microsoft Agent 365を一言でいうと?
Microsoft Agent 365を一言でまとめると、次のようなサービスです。
会社の中に増えていくAIエージェントを、一覧で把握して、権限を管理して、挙動を監視して、セキュリティもガバナンスもまとめて面倒を見る“司令塔”
Microsoftは公式ブログの中で、Agent 365を
「ユーザーを管理してきた既存の仕組みを、そのまま“エージェント”にも拡張するもの」 と説明しています。
ここでいう「エージェント」とは
- Microsoft製のCopilot系エージェント
- サードパーティが作った業務用AIエージェント
- オープンソースなどを元に社内開発したエージェント
など、「人間の代わりに作業をしてくれるAI/自動化の主体」を広く含みます。
なぜ今「AIエージェントの管理」が必要なのか?
1. “AIエージェントだらけ”の未来が見えている
Microsoftや各種メディアの試算では、2028年までに13億以上のAIエージェントが存在すると予測されています。
社内でも既に、
- 営業向けの見積もり自動化エージェント
- サポートセンターのチャットボット
- 経理・人事の業務フローを自動処理するエージェント
など、「担当者ごと」「部門ごと」にバラバラに導入されているケースが増えています。
2. 情シス・セキュリティから見ると“カオス”になりやすい
IT・情報システム部門の目線で見ると、こんな悩みが出てきます。
- どの部門が、どんなAIエージェントを使っているのか把握できない
- 誰が作ったのか不明な「シャドウIT的なエージェント」が増える
- エージェントがどのデータにアクセスしているのか見えない
- 情報漏洩や過剰な権限付与が心配
この「AIエージェントのスプロール(sprawl:散らばること)」を抑えるための仕組みとして登場したのが Agent 365 です。
Microsoft Agent 365の主な機能
Microsoftの公式情報や各種レポートを整理すると、Agent 365は大まかに以下のような機能を提供します。
1. エージェントの「レジストリ」(棚卸し・台帳)
- 組織内のすべてのAIエージェントを一覧表示
- Microsoft 365経由で公開されたエージェントは、自動でこの一覧に登録
- 外部で作られたエージェントも、登録すれば同じ画面で管理可能
- いわゆる「シャドウエージェント」も検出し、抜け漏れを減らす
イメージとしては「社員名簿のエージェント版」です。
2. エージェントごとの“Entra Agent ID”による身元管理
- それぞれのエージェントには EntraのID(エージェント用ID) が割り当てられます。
- これにより、「どのエージェントが」「いつ」「どのリソースに」「何をしたか」を追跡可能。
- 既存のユーザー管理・認証基盤(Microsoft Entra)をそのままエージェントにも適用できるのがポイント。
3. テレメトリとダッシュボードによる可視化
- エージェントの稼働状況や呼び出し回数、利用ユーザー、エラー状況などをダッシュボードで確認
- 異常な振る舞い(大量のデータ取得、特定ユーザーだけが極端に利用している等)を検知するアラート機能
- 「どのエージェントが、どれくらい業務に貢献しているのか」の可視化にもつながります。
4. アクセス制御とガードレール
- エージェントごとにアクセス可能なデータ・アプリ・システムを細かく制御
- 「このエージェントは顧客情報には触れられない」「このストレージには読み取りだけ」など、ポリシーを設定
- 最小権限の原則(least privilege)に基づいて安全な動作範囲を定義できます。
5. Defender・Purviewとの連携によるセキュリティ・コンプライアンス
- Microsoft Defender と連携して、エージェントの脆弱性や攻撃の兆候を検知
- Microsoft Purview と連携して、機密データへのアクセスや情報漏洩リスクを監視
- AIエージェントに関するセキュリティイベントや、データ露出のリスクを一元管理します。
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✔ CopilotをはじめとしたAI機能を試す前に、まずはMicrosoft 365環境を整えたい方はこちら」
- Microsoft 365 Personalなら、Word・Excelに加えて1TBのOneDriveが利用可能
- 大事なデータをクラウドに自動バックアップしておけば、PCトラブル時のリスクを大きく減らせる
- PC・スマホ・タブレットから同じファイルにアクセスできるので、日常使いの利便性もアップ
「社員の管理」と何が違う?何が同じ?
Microsoftは、Agent 365を「これまでユーザー(人間)を管理してきた仕組みを、そのままエージェントにも拡張するもの」と位置付けています。
共通するポイント
- Entra IDによる認証・認可
- アクセス権限の付与・剥奪
- ログ・監査・コンプライアンス
- セキュリティポリシーの一括適用
異なるポイント
- エージェントは24時間動き続ける“自動処理の主体”
- 一つのエージェントが複数のユーザーの代行を行うこともある
- 人間の感覚とは違うペース・ボリュームでデータにアクセスしうる
つまり、
人間と同じレベルで「身元」と「権限」を管理しながら、AI特有のスピードとスケールにも対応するための仕組み
が Agent 365 というイメージです。
中小企業・情シス目線での具体的な利用イメージ
「うちにはそんな高度なAIなんて…」と思うかもしれませんが、シナリオとしては意外と身近です。
シナリオ1:部門ごとに勝手に増えていくAIツールを整理したい
- 営業部:外部サービスのAIを使った見積自動作成
- 総務:問い合わせ対応のAIチャットボット
- 経理:経費精算チェック用のカスタムエージェント
こうした「部門単位で導入が始まったAI」を、まずはAgent 365のレジストリに登録し、“社内公認のエージェント”として見える化 する、という使い方が考えられます。
シナリオ2:生成AI導入を進めたいが、情報漏洩が怖い
- Copilotや社内向けエージェントを試したいけれど、どこまで社外に情報が出てしまうのかが不安
- 法務・セキュリティ担当から「ログと管理が効くならOK」と言われている
こういう場合に、Agent 365で
- エージェントごとのアクセス権限を設定
- Defender・Purviewと連携してモニタリング
- 利用ログと監査レポートを関係者と共有
…といった運用ができるようになると、「AI導入が進まない心理的ハードル」を下げる 効果が期待できます。
一般のMicrosoft 365ユーザーにも関係がある?
現時点で、Agent 365は 企業向け・IT管理者向けのサービス として位置付けられています。
ただし、一般ユーザーにも次のような形で影響してくる可能性があります。
- 職場で使うCopilotやAIエージェントの「挙動」が、より安全な範囲に制限される
- 「このエージェントで個人情報は扱っちゃダメ」など、ルールが明確になる
- 「どのエージェントを使っていいか」「どこまで任せていいか」が案内されやすくなる
つまり、
「AIエージェントが野放しで怖い」 → 「ちゃんと会社の仕組みの中で管理されている」
という方向に変わっていく、その裏側を支える仕組みがAgent 365だと考えるとイメージしやすいと思います。
いつから使える?現時点の提供状況
2025年11月時点では、Agent 365は 一部の顧客向けの早期アクセスプログラム/プレビュー という位置づけで提供が始まっています。
- 対象は主にエンタープライズ企業や、先行してAI活用を進めたい組織
- Microsoft 365 管理センターから利用できる形になる予定
- 今後、Copilotや各種エージェントプラットフォームとの連携が順次強化される見込み
中小企業や一般向けにどこまで開かれるかは、今後のアナウンス待ちですが、「エージェント管理の標準」の一つになる可能性は高そうです。
ブログ運営者としての注目ポイント
Windows・Microsoft関連の情報を扱うサイトとしては、次のような観点でフォローしておくと良さそうです。
- 「AIエージェント管理」という新しいカテゴリの登場
- 「Copilot」「WindowsのAI機能」と組み合わせた、実務寄りの解説
- 将来的に、中小企業向けのライセンス・価格体系が出てきたときの解説記事
今後、
「Copilot導入 → エージェント導入 → Agent 365での管理」
という流れになっていく可能性が高く、シリーズ化も視野に入れられます。
まとめ
- Microsoft Agent 365 は、会社で使うAIエージェントを一元管理する「コントロールプレーン(司令塔)」
- エージェントにEntra IDを付与し、アクセス権限・ログ・セキュリティ・コンプライアンスをまとめて管理できる
- IT部門の課題である「エージェントのスプロール」や情報漏洩リスクに対処するための新しい基盤
- 現時点ではエンタープライズ向け色が強いものの、今後のAI導入の“土台”になる可能性が高い
「AIをどう導入するか?」だけでなく、
「導入したAIをどう管理・統制するか?」
という視点が、これからの数年で一気に重要になっていきそうです。
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