悪霊が消え去った後、あかりは周りを見渡した。案の定誰も今起こった出来事に気づいていない。
瞬が大きな音を出し崩れ落ちた事にも気づいていないようだった。
あかりは慌てて瞬を椅子に座らせ、両手をかざした。眩しい光が手から瞬へを流れ込み、瞬は一度激しく深呼吸をして気を取り戻した。
「大丈夫ですか?」
あかりは瞬に声をかけた。
瞬は荒い呼吸で「ありがとうございます」と言うのが精一杯だった。
「私のことは、誰にも言わないで欲しいのです。」とだけ言うと、席をたった。しかし、それを阻止するように瞬は「教えて欲しいのです!」と言いながら、あかりの手首を強く捕まえた。
あかりは立ち止まり、瞬に背を向けたま
「あなたを救うのは私の仕事ではありません。ただ放っておけなかっただけです。」
というと、瞬は
「じゃあ、正式にお願いします。仕事として、これからも僕を助けてくれませんか?」
あかりは一瞬その言葉に怯んでしまったが
「もう2度とこの件には関わりません。」
語気を強めて言った。
瞬を横目で見ると、泣きそうな程悲しそうな表情を浮かべていた。しかし、それ以上は何も言わなかった。
あかりはその場を立ち去り、再び自分の平穏な日常に戻ろうとした。しかし、あかりの心には何か消化しきれない重荷が残されたままだった。