何をやっても続かない人の心理学:原因と解決策、周囲の人ができること

はじめに

「何をやっても続かない」

という人に対して、あなた自身が疑問や困惑を抱えることはありませんか?

たとえば、

仕事が1年もたたずに辞めてしまったり

新しい趣味や目標を始めてもすぐにやめてしまう――

そんな行動を繰り返す人を見ると、「なぜそんなに続かないのだろう?」と思うこともあるでしょう。

今日は、上級心理士の私が

「何をやっても続かない人」

の心理を深く掘り下げ、行動の背景にある要因を心理学的視点から解説します。

また、そういった人が身近にいる場合に、どのように接したりアドバイスをするべきかについても触れていきたいと思っていますので、よかったら最後まで読んでみてください。

なぜ「何をやっても続かない」のか?心理学的な原因

「続かない」

という行動には、いくつかの心理的な原因が考えられます。

これらを理解することで、ただ批判的に捉えるのではなく、問題の根本を見つける手助けができます。

1. 自己効力感の低さ

心理学で「自己効力感」とは

「自分にはそれを達成する能力がある」

と信じる感覚のことを指します。

この感覚が低い人は、新しいことに挑戦しても「どうせ自分にはできない」と感じ、途中で諦めてしまうことが多いです。

具体例:

・何かを始めても、「自分はこの分野に向いていない」と思い込んでしまう。

・他人と比較して落ち込む。

対策:

小さな成功体験を積み重ねることで、自己効力感を少しずつ高めることが有効です。

たとえば、短期間で達成可能な小さな目標を設定し、それをクリアすることで自信を育てることが大切です。

2. 完璧主義の影響

意外かもしれませんが、「何をやっても続かない」人の中には、実は

完璧主義的な考え

を持っている人が少なくありません。

「完璧にできないなら意味がない」と感じ、途中でやめてしまうのです。

具体例:

・習い事を始めても、少しうまくいかないと「自分には無理」と決めつける。

・計画通りにいかないと、一気にやる気を失う。

対策:

「失敗も過程の一部」と捉える柔軟な思考を養うことが重要です。完璧でなくても「まずやってみる」ことに価値を見出せるようになると、続ける力がついてきます。

3. 外的動機に依存している

「外的動機」とは、他人からの評価や報酬、社会的な期待によって行動を起こすことです。

この動機に頼りすぎると、内側からの「やりたい」という気持ちがないため、続けるのが難しくなります。

具体例:

・「親に言われたから」「周りがやっているから」と始めたことが長続きしない。

・仕事も、「収入だけが目的」と割り切ってしまう。

対策:

外的動機ではなく、

自分の内的動機(=心からの興味や楽しさ)

を見つけることが大切です。

「自分はこれをやりたい」
と感じられることを見つけられれば、自然と続ける力が生まれます。

4. 目標が漠然としている

「何をやるのか」

「なぜやるのか」

が曖昧だと、行動に一貫性を持たせるのが難しくなります。

>>漠然とした目標では、進捗が分からずモチベーションが保てなくなるのです。

具体例:

・「健康になりたい」と思って運動を始めたが、具体的な計画を立てずにやめてしまう。

・目標が大きすぎて、どこから手をつければいいか分からなくなる。

対策:

目標を「具体的で達成可能なレベル」にまで分解することが重要です。たとえば、「毎日10分だけ運動する」「週に1冊本を読む」といった具体的な行動に落とし込むと効果的です。


タイプ別「続かない人」の特徴

「続かない」と一言で言っても、原因や行動パターンは人それぞれ異なります。

タイプ別に整理することで、より具体的なアドバイスを解説したいと思います。

1. 「やり始めてもすぐ飽きる」タイプ

• 特徴:新しいことに興味を持ちやすいが、継続する前に他のことに目移りしてしまう。

• 心理的背景:好奇心旺盛で新しい刺激を求める性質。目標が短期間で達成されないと飽きてしまう。

• 対策:短期的な目標を設定し、「達成感」を頻繁に得られる仕組みを作る。たとえば、毎週進捗を振り返る習慣を作る。

2. 「最初から諦めがちな」タイプ

• 特徴:挑戦する前に「どうせ無理」と思い込むため、継続に至らない。

• 心理的背景:自己効力感が低く、過去の失敗体験が原因になっている場合が多い。

• 対策:小さな成功体験を積み重ねることが大事。「やればできる」と感じられるタスクを選ぶ。

3. 「他人に影響されやすい」タイプ

• 特徴:自分の意思ではなく、周囲に合わせて物事を始めるため、継続するモチベーションが湧かない。

• 心理的背景:自己主張が苦手で、他人の期待や評価を優先してしまう傾向がある。

• 対策:自分の価値観や「やりたい理由」を見つけるため、内的動機を深掘りするワークを提案する。

継続力を鍛えるための習慣作り

継続力を育むための具体的な習慣や方法を紹介したいと思います。

1. 「習慣化の仕組み」を作る

• 簡単に始められる「トリガー」を設定する(例:毎朝コーヒーを飲みながら5分間だけ読書)など。

• 成果を細かく記録することで、達成感を味わえる仕組みを作る方法もあります。

2. 「ご褒美システム」を活用する

• 続けられたら自分に小さなご褒美をあげる習慣をつくってみませんか?

たとえば、1週間続けたら好きなスイーツを買うなど、頑張った自分を褒めてあげましょう!

3. 「人と約束する」

• 自分一人だと続けにくい場合は、誰かと一緒に目標を設定する事もオススメです。

たとえば、友達や家族と「毎週運動する」などの約束をする!と宣言して始めると続けられる人も多くいますよ。

心理学や理論的背景

心理学から改善方法をご紹介します。

1. スモールステップ法(Small Steps Theory)

• 大きな目標ではなく、小さなステップを積み重ねることで継続力を鍛える方法です。

スモールステップ法(Small Steps Theory)とは、大きな目標をいきなり達成しようとするのではなく、小さな行動を積み重ねていくことで目標達成を目指す方法です。心理学や行動科学で用いられる手法で、「続ける力」を育むのに非常に有効です。

この方法は特に、「何をやっても続かない」と悩む人や、大きな目標に圧倒されてしまう人にとって役立ちます。

小さな成功体験を重ねることで、自己効力感(「自分にもできる!」という感覚)を高め、習慣化や長期的な目標達成につなげることができます。

スモールステップ法の基本的な進め方

1. ゴールを明確にする

まず、大きな目標を明確にします。

ただし、この時点では大きな目標をそのまま実行しようとしません。

具体例を挙げると:

• 「英語を話せるようになりたい」

• 「10kgのダイエットをしたい」

• 「ブログで月1万円稼ぎたい」

などです。

2. 目標を小さく分解する

次に、その目標を達成するための小さなステップに分解します。

ポイントは、具体的で達成可能なレベルに細かく分けることです。

<例>

英語を話せるようになりたい → 「1日1フレーズ覚える」「毎日5分だけ英語のリスニングをする」

10kgのダイエットをしたい → 「毎日1駅分歩く」「夜の炭水化物を減らす」

ブログで月1万円稼ぎたい → 「1週間に1記事投稿する」「SEOの基本を1つ学ぶ」

3. 最初のステップを「これなら絶対にできる!」レベルに設定する

スタート時の行動は「これくらいなら簡単にできそう」と思えるほど小さいもので構いません。

<例>

• 英語:「毎日1単語だけ覚える」

• ダイエット:1日に5分だけストレッチをする。

• ブログ:1日1行だけ文章を書く。

など、どんな行動でも、続けることが大切です。

4. 習慣化していきましょう

小さなステップを毎日繰り返し、習慣化します。

重要なのは「やらない日を作らないこと」。

たとえ少しの時間でも、行動を毎日の習慣にすることで、継続が容易になります。

5. ステップを少しずつ大きくする

小さな成功体験を重ねて自信がついてきたら、次のステップへ進みます。

「できる!」という感覚が高まるにつれて、少しずつ行動のレベルを引き上げていきます。

<例>

• 毎日1単語覚える → 毎日1フレーズ覚える。

• 5分だけストレッチ → 10分間のウォーキングに増やす。

などです。

スモールステップ法のメリット

1. ストレスが少ない

 小さな行動から始めるため、「やらなければ」というプレッシャーが軽減されます。

2. 自己効力感が高まる

 小さな成功を積み重ねることで、「自分にもできる!」という自信が育ちます。

3. 長期的に続けやすい

 一度習慣化すると、行動が「当たり前」になり、結果的に大きな目標達成につながります。



スモールステップ法のまとめ表

ステップ内容具体例
1. ゴールを設定大きな目標を明確にする「英語を話せるようになりたい」
2. 小さく分解目標を小さな行動に分ける「毎日1フレーズ覚える」
3. 小さなステップを開始簡単で達成可能な行動から始める「1日1単語だけ覚える」
4. 習慣化行動を毎日繰り返し、習慣にするカレンダーに記録をつける
5. ステップを拡大自信がついたら行動を少しずつ大きくする「毎日1フレーズ覚える」に増やす

このように、スモールステップ法は、挫折しがちな人や「続かない」と悩む人にとって、無理なく前進できる効果的な方法です。

一度に全てを達成しようとせず、少しずつ進むことで大きな成果を得られます。

2. 意思力の有限性(Ego Depletion)

• 意思力は限られたリソースであり、使いすぎると疲弊してしまいます。

そのため、一日に挑戦することを1~2つに絞るのが有効です。

3. ホーソン効果(Hawthorne Effect)

• 誰かに見られていることで、行動の質が上がる心理現象です。

たとえば、目標を公言したり、誰かに進捗を報告することで継続しやすくなります。

続かない人が得意なことを活かす

「続かない」という特性は必ずしもネガティブなものではありません。

飽きっぽさや好奇心旺盛さをポジティブに活かせる方法をご紹介します。

1. 「短期間で成果を出す仕事や趣味」を探す

• たとえば、プロジェクトごとに短期で完結する仕事(イベント運営、ライター業など)が向いている場合があります。

2. 「マルチポテンシャライト」という概念

• 一つのことに絞らず、複数の分野で幅広い興味を持ち続ける「マルチポテンシャライト」という考え方を紹介。続かないのではなく、多方面で力を発揮できると捉えられます。

周囲の人への具体的な接し方

身近な人が「続かない」場合、具体的にどう接するかについて、さらに詳しく説明します。

1. 「相談に乗るときの注意点」

• 相手の悩みに耳を傾ける際、「解決策を押し付けない」ことが大切です。相手が自分で気づけるような質問を投げかける姿勢が有効です。

2. 「ポジティブな面を褒める」

• 「続かない」と批判するのではなく、途中でやめても何かを始める行動力やチャレンジ精神を認める言葉をかける。


「続かない」ということ自体をポジティブに捉え直すという事も大事です。例えば

• 「すべてを続ける必要はない。やめたことで学んだ経験も、次の挑戦に必ず活きる」

• 「自分に合わないことを早く見極められるのは、一つの才能」

• 「何度でも挑戦し続ける限り、それは進化の証である」

など、続けられなくても、常にポジティブな言葉をかける事も大事だと思っています。

「続かない」人へのアドバイスとサポートの方法

もしあなたの身近に「何をやっても続かない人」がいる場合、どのように接すれば良いのでしょうか?以下の方法を試してみてください。

1. 批判しない

身近な人だと余計に

「なんで続かないの?」

と直接批判しがちです。

しかし、それは逆効果になってしまい、相手は防御的になり、ますます自分を否定してしまう可能性があります。

批判ではなく、「どんな部分が難しいと感じるのか?」と、相手の気持ちに寄り添いましょう

2. 小さな成功体験を共有する

「小さいけど達成できたこと」を共有することで、相手が前向きな気持ちになれるようサポートします。

>>たとえば、「今日はここまでできたんだね」と成果を認める言葉をかけてみるのも効果的は方法です。

3. 相手の内的動機を引き出す

「どうしてこれをやりたいと思ったの?」

と質問することで、相手が内的動機に気づくきっかけを与えることができると言われています。

それは、本人が心から「やりたい」と感じる理由を見つけられれば、自然と続ける力が生まれるからなのです。

「自分が自らやりたい」と思える事が必要なのです。

4. 長期的な視点で見守る

「続ける力」は一朝一夕で身につくものではありません。

短期間での結果を求めるのではなく、相手の成長を長い目で見守りましょう。

これが、自分の子どもや夫だと、ついつい厳しい目でみてしまいがちですが

本人も悩んでいます。

「なぜ、自分は長続きしないんだろう」と言う悩みを誰にも言えず苦しんでいるかもしれません。

見守ることは大変ですが、悩みを打ち明けられる環境作りをしてみて下さい。

最後に

続かない人への理解を深めよう

「何をやっても続かない」人は、単に意志が弱いわけではありません。

自己効力感や動機の問題、完璧主義など、さまざまな心理的要因が絡んでいます。

それを理解することで、相手をサポートしやすくなり、

また自分自身の考え方にも変化が生まれるかもしれません。

もしあなたの周りに続かない人がいる場合、

「なぜ続けられないのか」

を一緒に考え、相手の気持ちに寄り添ってみてください。

その人が少しでもポジティブに前進できるような手助けをすることは、きっと大きな力になるはずです。

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