
Windowsのプロダクトキーを確認する方法
— いざという時に慌てないための、やさしい実践ガイド
はじめに
「再インストールやPC買い替えの前に、プロダクトキーを確認しておきたい」「今入っているWindowsがOEM版かリテール版か知りたい」「設定画面では“キーそのもの”が見つからない」——こんなお悩みは意外と多いものです。
本記事では、Windows 10/11でプロダクトキーを確認するための実用的な手順を、初心者の方にもわかりやすく解説します。PowerShell/コマンドの“そのまま使える例”に加え、取得できない時の理由やライセンスの基本も丁寧に補足します。
まず押さえたい「ライセンス」の基礎
プロダクトキーの“居場所”や“見え方”は、ライセンスの種類で変わります。
- OEM版(メーカー製PCに付属)
多くはPCのUEFI(BIOS)内の「MSDMテーブル」にキーが埋め込まれます。クリーンインストールでもネット接続で自動認証されることが多く、キーを画面に表示できる場合がある(後述のPowerShell)。 - リテール版(パッケージ/ダウンロード購入)
キーはカードやメールに記載。Windows 10/11では“デジタルライセンス”でMicrosoftアカウントにひもづける運用が標準的で、キー自体を画面に表示できないこともある。 - ボリュームライセンス(KMS/MAK)
企業・学校などの管理下。ユーザー自身で完全なキーを確認する運用にはなっていないことが多く、画面に出るのは“末尾5桁(Partial Product Key)”のみが一般的。
ポイント
「設定 > システム > ライセンス認証」には“キーそのもの”は表示されません。 ここで確認できるのはエディションや認証状態です。
方法①:PowerShellで“埋め込み(OEM)キー”を取得する
OEM PC なら、UEFI(BIOS)のMSDMテーブルにOEMキーが格納されている可能性が高いです。
- PowerShellを管理者として起動
スタートボタン右クリック →「Windows PowerShell(管理者)」または「ターミナル(管理者)」。 - 次のいずれかを実行します。
A. SoftwareLicensingService経由
(Get-CimInstance -ClassName SoftwareLicensingService).OA3xOriginalProductKey
B. MSDMテーブルから直接読む(ある場合)
(Get-CimInstance -Namespace root\wmi -ClassName MSDM).SerialNumber
- いずれかで25文字のキーが返れば、それがOEMキーです。
- どちらも空白/nullなら、埋め込みキーが存在しないか、リテール/ボリューム系の可能性が高いです。
補足:
一部の機種でMSDM
クラスが存在しないことがあります。その場合はAの方法で取得できるかお試しください。
方法②:slmgr
で“インストール済みのキー末尾5桁”とチャネルを確認
完全なキーは見えませんが、管理や照合に役立つ情報が得られます。
- 有効期限・チャネルなど詳細
slmgr /dlv
- 簡易表示(末尾5桁を含む)
slmgr /dli
- 現在の認証状態(永続/期限付き)
slmgr /xpr
表示ウィンドウにPartial Product Key(末尾5桁)が出ます。
社内台帳や購入記録にあるキー末尾と突合することで、どのキーが使われているかを判断できます。
方法③:レジストリで“識別情報”を把握(キーそのものは不可)
よく誤解されますが、レジストリのHKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion
にある ProductId はプロダクトキーそのものではありません。
ただし、エディションやビルドの把握には役立ちます。キーの復元はできません。
方法④:Microsoftアカウントの“デジタルライセンス”で考える
Windows 10/11 では、キー文字列を入力せずとも「デジタルライセンス」で認証・再認証できるケースが増えています。
- 同一PCに再インストール → ネット接続で自動認証される場合が多い
- ハードウェアを大きく変更 →「トラブルシューティング」からライセンスの再割り当てが可能なことも(Microsoftアカウントでサインインしている前提)
コツ:
日頃から設定 > アカウントでMicrosoftアカウントにサインインし、“デバイスはこのアカウントに関連付けられています”の状態にしておくと安心です。
方法⑤:紙・カード・メール・納品書を探す
リテール版やダウンロード購入の場合、いちばん確実なのは購入時の証憑です。
- パッケージのカード・ラベル
- オンライン購入メール(Microsoft/販売店)
- 家電量販店のレシート/保証書
- 企業であれば資産管理台帳やライセンス管理表
ひとこと:
家族・職場の複数アカウントで購入しているケースも多いです。可能性のあるメールアドレスで検索してみましょう(「Product Key」「プロダクトキー」「キー」「Windows 10/11」などのキーワード)。
方法⑥:サードパーティの“キー表示ツール”は要注意
NirSoft系など有名なキー表示ツールはありますが、企業PC/持ち出しPC/ウイルス対策の厳しい環境では検知・ブロックされることがあります。また、不正ライセンスの混入や広告付き配布サイトもあるため、公式配布元を厳密に確認し、自己責任でご使用ください。
基本はPowerShellやslmgr、購入証憑での確認を優先しましょう。
うまく見つからない時の“理由”チェック
- そもそも埋め込み(OEM)キーがない
自作PCやリテール版アップグレードではMSDMに無いのが普通です。 - ボリュームライセンス(KMS/MAK)
末尾5桁しか見えない設計です。管理者へ確認しましょう。 - Windows 10/11の“デジタルライセンス”運用
キー文字列よりアカウント紐づけが主役。キー自体は表示されないことも。 - 中古PC
前オーナーの状態次第。COAラベルや購入店の説明を確認し、正規ライセンスかチェックを。
ライセンスの“移行”についての注意
- OEM版はそのPCに帰属(基本は移行不可)。
- リテール版は別PCへ移行可能(同時利用は不可)。
- 会社支給PCなどは契約や就業規則に従いましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 設定画面に“プロダクトキーを表示”という項目が見当たりません。
A. Windowsはキー文字列を直接表示しないのが基本です。上記のPowerShellや slmgr /dli
(末尾5桁)、購入証憑で確認しましょう。
Q. /dli
の末尾5桁と手元のカードが一致しません。
A. 企業端末やアップグレード経由では別のキー(汎用キー・KMSキー)が入ることがあります。台帳や管理者に確認を。
Q. クリーンインストール時、プロダクトキー入力を求められました。
A. 「プロダクトキーがありません」を選択して続行しても、ネット接続で自動認証されることがあります(OEM/デジタルライセンス)。だめなら手元の正規キーを入力しましょう。
Q. PCが起動しなくなりました。キーだけ取り出せますか?
A. OEMの埋め込みキーなら、別メディアのWindows PEや他OSからMSDMを読む方法はあります。ただし手間がかかるため、まずは購入証憑やMicrosoftアカウントの関連付けを確認するのが現実的です。
すぐ使えるコマンドまとめ(コピー用)
OEMキー(あれば取得)
(Get-CimInstance -ClassName SoftwareLicensingService).OA3xOriginalProductKey
(Get-CimInstance -Namespace root\wmi -ClassName MSDM).SerialNumber
インストール済みキーの“末尾5桁”やチャネル
slmgr /dli
詳細(有効期限・チャネル)
slmgr /dlv
現在の認証状態(永続/期限付き)
slmgr /xpr
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PCをもっと安心に:必携アイテム
- FIDO2/パスキー対応セキュリティキー(Microsoftアカウントの多要素認証を強化)
- 外付けSSD 1TB(BitLocker暗号化で大事なデータを安全に保管)
- 小型UPS(更新中や設定変更中の停電対策に)
- 大容量USBメモリ(回復ドライブやセキュリティツール作成用に)
※突然のトラブルに備えて、バックアップ媒体は必ず暗号化して活用しましょう。
予防策:次回困らないための小さな習慣
- 購入証憑を1か所に集約(クラウドドライブ + 紙)
- Microsoftアカウントとデバイスの関連付けを有効に
- 企業なら資産管理台帳に末尾5桁や購入情報を記録
- 大型アップグレード前に
slmgr /dli
のスクショを残す
まとめ表
状況 | まず試す | 代替策 | 備考 |
---|---|---|---|
メーカー製PC(OEM) | PowerShellで OA3xOriginalProductKey / MSDM | そのまま再インストール→ネット認証 | 多くは自動で通る |
自作PC・リテール購入 | 購入メール/カードを確認 | Microsoftアカウントの関連付け→再認証 | キー表示できない場合あり |
企業端末(KMS/MAK) | slmgr /dli の末尾5桁 | 管理台帳・情シスへ照会 | 末尾照合が基本 |
起動不能 | 証憑を探す / アカウント紐づけ確認 | MSDM読取(上級) | 修理・買替の判断も視野 |
とにかく不安 | 証憑一元化 + slmgr のスクショ | デジタルライセンスを有効化 | 予防が最強 |
おわりに
プロダクトキーは「見える」「見えない」が状況によって異なります。OEMなら埋め込みキーが取れる可能性、リテールやデジタルライセンスは“キー表示より紐づけ重視”という現在の流れを押さえておくと、いざというときも慌てません。
本記事の手順を手元に残し、次のアップグレードやPC移行に備えていただければ幸いです。