Hyper-Vは、Windowsに標準搭載されている強力な仮想化機能であり、個人のテスト環境から企業のサーバー運用まで幅広く活用されています。しかし、便利さの一方で、「設定ミス」や「セキュリティ対策の不備」によって、重大なリスクを招く可能性があります。
今回は、2025年5月時点で報告されているHyper-Vに関連する脆弱性の事例とその対処法を、詳しく解説します。
【要注意!】セキュアブートが無効なまま運用していませんか?
最近の報告では、「セキュアブートを無効にしてVMを起動している環境」が標的になるケースが増えています。セキュアブートを無効にすると、改ざんされたOSやブートローダーがVM上で動作してしまう可能性があります。
【対処その1】セキュアブートを有効にする
セキュアブートを有効にする方法(Hyper-Vマネージャー使用)
「セキュアブート」は、OSの起動時に不正なプログラム(改ざんされたブートローダやマルウェアなど)を検出・防止するための機能です。Hyper-Vでは、仮想マシンが第2世代の場合にのみこの機能を使用できます。
以下の手順で、セキュアブートを有効にしましょう。
【手順】
- Hyper-Vマネージャーを開く
スタートメニューで「Hyper-Vマネージャー」と入力して起動します。 - 対象の仮想マシンを右クリック
左側の仮想マシン一覧から設定したいVMを右クリックし、[設定]を選択します。 - [ファームウェア]を選択(第2世代VMのみ表示されます)
左メニューの中から「ファームウェア」をクリックします。 - 「セキュアブートを有効にする」にチェック
右側にあるチェックボックス「セキュアブートを有効にする」にチェックを入れます。 - OSに合わせてテンプレートを選択
下にあるドロップダウンから、使用するOSに合わせてテンプレートを選びます
- Windows OS → 「Microsoft UEFI 証明書機関」
- Linux OS → 「Microsoft UEFI CA または カスタム」 - [OK]をクリックして保存
【注意点】
- 仮想マシンが第1世代の場合、「ファームウェア」の項目が表示されず、セキュアブートは使えません。
- すでにセキュアブートが無効の状態でOSをインストールしている場合、有効化後に正常起動しないことがあります。その場合は再インストールや設定調整が必要です。
【対処その2】仮想TPMの有効化とセットでセキュリティ強化
Windows 11をHyper-Vで使用する場合、「セキュアブート」だけでなく仮想TPM(Trusted Platform Module)の有効化も強く推奨されます。
▶︎TPMとは、セキュリティに関わる暗号キーなどを安全に格納するための物理的なセキュリティチップのことです。仮想環境ではこれを「仮想TPM」としてソフトウェア的に提供することで、同様のセキュリティが実現されます。
Windows 11は、インストール要件としてTPM 2.0が必要です。そのため仮想マシン上でWindows 11を動かすには、仮想TPMを有効にしておく必要があります。
【仮想TPMを有効にする手順(Hyper-Vマネージャー)】
- Hyper-Vマネージャーを開く
スタートメニューから「Hyper-V マネージャー」を起動。 - 対象の仮想マシンを右クリック →[設定]を選択
- 左のメニューから「セキュリティ」をクリック
- 「トラステッド プラットフォーム モジュールを有効にする」にチェックを入れる
この項目が表示されない場合、仮想マシンが「第1世代」である可能性があります。仮想TPMは第2世代の仮想マシンでのみ使用できます。 - 「セキュアブートを有効にする」にもチェックを入れる
仮想TPMとセットで有効にすることで、OSの起動時の信頼性も確保されます。 - 設定を保存して閉じる
【仮想TPMを有効にするメリット】
- BitLockerによるディスク暗号化が可能になる
- Windows 11のインストール条件を満たせる
- OS起動プロセスに対する信頼性と保護レベルが向上
仮想TPMは、2025年現在ではWindows 11の動作において標準化されたセキュリティ機能となっています。手間はかかりませんが、非常に効果的なセキュリティ強化策ですので、Windows 11仮想マシンを使うなら必ず設定しておきましょう。
共有フォルダに要注意!
ホストOSと仮想マシン間で共有フォルダを利用していると、ホスト側で感染したマルウェアがVMに流入したり、その逆も起こりえます。特にHyper-Vではファイル共有の設定が手軽なため、リスクに気づきにくいのが問題です。
【対処法】
- 仮想マシンとホストのファイル共有は必要最小限にとどめる
- 信頼できるソースからのファイルのみを共有する
- 仮想マシンにもウイルス対策ソフトを導入する
外部接続型の仮想スイッチが狙われる
外部ネットワークに直接接続された仮想スイッチ(外部スイッチ)を利用していると、VMが直接インターネットの影響を受けることになり、DDoS攻撃やポートスキャンの対象になることがあります。
【対処法】
- 業務用途では「内部ネットワーク」または「プライベートスイッチ」に切り替える
- 外部接続を行う場合は、ファイアウォールとポート制限を必ず設定する
- Windows Defenderのリアルタイム保護をオンにし、ネットワーク監視も併用する
管理者権限の仮想マシンを複数人で共有していませんか?
仮想マシンに複数人がアクセスできる環境を構築している場合、「誰が何をしたのか」が追跡できない状態になります。また、ユーザーによる意図しない設定変更も脆弱性を招きます。
【対処法】
- 仮想マシンのアクセス権は、最低限の権限に制限する(管理者権限は1人に)
- 必要に応じて、監査ログや操作履歴を記録するソリューションを併用する
- 定期的に設定を見直し、不要なユーザーやサービスを削除する
Hyper-V自体の脆弱性が放置されているケースも
Microsoftは毎月のセキュリティ更新(Patch Tuesday)で、Hyper-Vに関する脆弱性も公表・修正しています。2025年5月には、「CVE-2025-2176」など、仮想マシンからホスト環境へ不正にアクセスできる可能性がある重大な脆弱性が報告されています。
【対処法】
- Windows Updateを定期的に実施(ホストOSと仮想マシン両方)
- Hyper-Vの役割自体の更新状況も確認(PowerShellなどで確認可)
- Microsoftの公式脆弱性情報ページ(MSRC)を毎月チェック
当サイトでも、Hyper-Vや仮想環境に関する脆弱性情報やその対処法について、今後も随時アップデートしていく予定です。
まとめ:Hyper-Vの「使いやすさ」は「落とし穴」になることも
Hyper-Vは手軽に仮想マシンを作成・運用できる反面、セキュリティ設定を見落とすと、重大な情報漏洩やマルウェア感染の温床になることがあります。特に2025年以降は、サイバー攻撃のターゲットが「仮想環境」そのものにシフトしてきているのが現実です。
今一度、自分のHyper-V環境の設定を確認し、「使える」から「守れる」へと意識を高めていきましょう。
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