実家じまいは、親が住んでいた家を処分・整理する過程のことを指します。
感情的にも物理的にも大きな負担が伴うため、計画的に進めることが重要です。
今日は、元税理士事務所勤務していた私が、実家じまいの注意点、相続や税金の基本、費用の計算方法について詳しく解説します。
相続相談の中でも、ややこしく難しい案件が多かった「実家じまい」をテーマにしました。クライアント様から何度も『親が生きているうちに聞いていたら良かった』という言葉を聞いてきた経験から、今からできることも含めてわかりやすく解説いたします。
実家じまいの基本と注意点
事前準備と計画
実家じまいを進める際には、以下の準備が必要です。
• 処分するものと残すものの選別
家具や遺品などを整理し、必要なものを決めます。
専門業者に依頼するのも有効です。
>>専門家とは
専門家について、具体的な種類と役割を詳しく説明します。
状況によって相談すべき相手が異なるため、適切な専門家を選ぶことが重要となります。
1. 遺品整理業者
• 役割:遺品整理をプロの手で効率よく行います。不要なものの処分、大切なものの保管、貴重品の発見などをサポートします。
• 相談のタイミング:家財道具が大量に残っていて整理が困難な場合。
• ポイント:遺品整理士の資格を持つ信頼できる業者を選びましょう。
• 参考リンク:日本遺品整理協会
2. 不動産会社
• 役割:実家の売却や活用方法を提案してくれます。不動産の査定や市場価格に基づいたアドバイスが受けられます。
• 相談のタイミング:実家を売却、賃貸、または解体するか迷っている場合。
• ポイント:地元で実績のある不動産会社に相談すると、スムーズに進みます。
3. 税理士
• 役割:相続税や不動産売却による譲渡所得税の計算、申告を代行します。また、節税のアドバイスも受けられます。
• 相談のタイミング:相続税が発生するかどうか、具体的な税額を知りたい場合。
• ポイント:相続税に詳しい税理士を選ぶことが大切です。
「税理士だったら全員同じ」と思われがちですが、相続の強い先生と、そうでない先生はいます。色々な評判を聞いたり調べて地元の『相続に強い先生』を探し出して下さい!今は相続申告の3人に1人は税務調査が入るという説もあります。そうなった時に断然違いが出てきます。
4. 弁護士
• 役割:遺産分割協議のサポートや、親族間でのトラブル解決をサポートします。遺言書の有効性や法的手続きの相談にも対応します。
• 相談のタイミング:親族間で意見がまとまらない場合、法的手続きが複雑な場合。
• ポイント:相続問題に精通した弁護士を探しましょう。
5. 司法書士
• 役割:不動産の名義変更や相続登記の手続きを代行します。書類作成が得意な専門家です。
• 相談のタイミング:実家の不動産を相続する際の登記手続きを進めるとき。
• ポイント:全国対応可能な司法書士事務所もあります。
6. ファイナンシャルプランナー(FP)
• 役割:相続や実家売却後の資金運用、節税対策、家計全般のアドバイスを行います。
• 相談のタイミング:相続後の財産運用や、生活資金の見通しを立てたい場合。
• ポイント:独立系FPで信頼できるプロを選ぶと中立的なアドバイスが得られます。
7. 建築・解体業者
• 役割:実家の老朽化が進んでいる場合、解体やリフォームの提案をしてくれます。
• 相談のタイミング:実家を解体する必要がある、またはリフォームして賃貸活用したい場合。
• ポイント:複数社から見積もりを取って比較することが重要です。
専門家選びのコツ
• 初回相談無料の専門家を活用:費用を抑えるために、初回無料相談を提供している専門家を探しましょう。
• 口コミや評判を確認:信頼できる業者や専門家を選ぶには、口コミや評判を参考にしましょう。
• 複数の専門家と相談する:一人の専門家に頼らず、複数の意見を聞いて最適な選択をしましょう。
親族間の話し合い
親族間で事前に合意形成を図ることが大切です。遺産分割や実家の扱いについて全員が納得しないと、トラブルに発展する可能性があります。
*私も税理士事務所勤務時代は数多くの親族間トラブルを見てきました。本当に「これが家族の姿なのか・・」と思ことも多々ありました(悲しいことです)
特に相続税に関しては、兄弟など全員の印鑑が必要になる場合があります。少しでもスムーズに話が進むようにしたいものです。
相続の基本と手続き
相続の流れ
1. 相続人の確定
法律で定められた順位に従って相続人を確定します。
法律で定められた相続人の順位をわかりやすく表にまとめてみました。
順位 | 相続人の対象 | 補足 |
---|---|---|
第1順位 | 配偶者 + 子供(直系卑属) | 配偶者は常に相続人となり、子供と一緒に相続します。子供が亡くなっている場合は孫が代襲相続します。 |
第2順位 | 配偶者 + 直系尊属(親など) | 子供がいない場合に、親や祖父母が相続します。親がいない場合、さらに上の世代(祖父母など)が対象です。 |
第3順位 | 配偶者 + 兄弟姉妹 | 子供や直系尊属がいない場合に、兄弟姉妹が相続します。兄弟姉妹が亡くなっている場合、その子(甥や姪)が代襲相続します。 |
1. 配偶者の立場
配偶者は常に相続人となり、他の相続人と財産を分け合います。
2. 子供がいない場合
第2順位(親や祖父母)が相続します。
3. 子供も親もいない場合
第3順位(兄弟姉妹)が相続します。
4. 代襲相続
子供や兄弟姉妹が既に亡くなっている場合、その子供(孫や甥姪)が相続する仕組みです。
具体例
1. 配偶者と子供がいる場合
• 配偶者:1/2
• 子供:1/2を人数で等分
2. 配偶者と親がいる場合(子供なし)
• 配偶者:2/3
• 親:1/3
3. 配偶者と兄弟姉妹がいる場合(子供・親なし)
• 配偶者:3/4
• 兄弟姉妹:1/4
簡単に説明するとこういう感じになります(詳しくは専門家に聞いて下さいね)
2. 遺産分割協議
相続人全員で遺産をどう分けるか話し合います。
相続税の申告
財産が基礎控除額を超える場合は、相続税を申告する必要があります。
2-2. 相続税の基礎控除
基礎控除額は以下の計算式で求められます:
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
例)法定相続人が3人の場合:
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円
財産の合計額がこの控除額を超える場合、超えた部分に対して相続税が課されます。
2-3. 相続税の申告期限
被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に申告が必要です。
税金の計算方法
相続税の計算
1. 遺産総額を算出する
土地、建物、預金などを評価額に基づいて計算します。
2. 基礎控除を差し引く
上記の基礎控除額を引きます。
3. 課税価格に応じた税率を適用する
税率は10%~55%の累進課税が適用されます。
相続税の税率は、相続する財産の金額が大きくなるほど税率が高くなる「累進課税」という仕組みが採用されています。
簡単な例
• 小さい財産の場合(1,000万円以下):税率は 10%
• 大きい財産の場合(6億円超):税率は 55%
具体的な仕組み
課税対象の財産額をいくつかの範囲に分け、それぞれに対応した税率が適用されます。
課税対象の金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
課税額は累進的に計算されるため、金額が大きくなるほど税負担が増えます。
3-2. 不動産売却の税金(譲渡所得税)
実家を売却した場合、売却益に対して譲渡所得税がかかることがあります。
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
• 取得費:購入価格やリフォーム費用など
• 譲渡費用:仲介手数料、測量費など
また、居住用財産の3,000万円特別控除を利用することで税負担を軽減できる場合があります。
>>居住用財産の3,000万円特別控除とは、自分が住んでいた家を売却した場合に、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる制度です。
この控除を利用することで、譲渡所得にかかる税金を大幅に軽減できます。
簡単な説明
1. 控除の対象
• 売却したのが「自分や家族が住んでいた家」であること。
• 空き家でも、直前まで住んでいた場合は適用されます。
2. 譲渡所得の計算
売却益(譲渡所得)は次の式で計算します:
譲渡所得 = 売却価格 - (購入価格 + 譲渡費用)
→ この譲渡所得から3,000万円を差し引けるのが特別控除です。
3. 税金の軽減例:
• 売却益が2,500万円の場合 → 全額控除され、課税なし。
• 売却益が3,500万円の場合 → 3,000万円控除後、500万円に対して課税される。
控除を利用する為の条件
この控除を利用するには以下の条件があります
• 売却したのが「居住用財産」であること(別荘や賃貸用物件は対象外)。
• 一つの家について一度だけ適用できる。
• 家族間での売買など、特殊な取引では適用されない。
ポイント
• 自宅を売却する際にほとんどの方が利用できるため、税負担を大幅に軽減する重要な制度です。
• 不動産を売却する際は、税理士や不動産会社に「3,000万円控除が使えるか」を必ず確認しましょう。
よくあるトラブルとその対策
トラブル例
• 親族間の意見の相違
• 財産評価の不一致
• 相続税の未払い
対策:
• 専門家を交える:弁護士や税理士を仲介役にする。
• 遺言書の作成:生前に遺言書を用意する。
• 税金を早めに計算:財産評価と税金の見積もりを早めに行う。
まとめ
実家じまいは、感情面だけでなく法律や税金の面でも慎重に進める必要があります。
特に、相続税や譲渡所得税などは専門知識が必要なため、弁護士や税理士に相談する事を強くおすすめします。
>>参考リンクをまとめましたので、具体的な手続きに役立ててください。
参考リンク