介護業界は日本の高齢化社会を支える重要な仕事ですが、その現実は厳しいものがあります。
低賃金、過酷な労働環境、人手不足…。
私は介護施設の経理主任を2年間担当し、多くの職員が心や体を壊していくのを目の当たりにしました。

しかし、現状を嘆くだけでは何も変わりません。
今日は、介護施設に勤め、補助金申請にも携わっていたからこそわかる
働く人が少しでも報われるための方法
について考えていきます。
介護業界の現状|なぜ給料が上がらないのか?
こんなに老人がたくさんいて、介護士が不足しているのに、なぜ給料が上がらないのでしょう?
実際、介護請求や申請、給与計算をしていたからこそわかる『その理由』を紐解いていきます。
① 介護業界の給与が低い理由
• 公的な介護報酬に依存している
介護事業者の収入は、国の「介護報酬」によって決まります。
企業のように自由に価格を設定できないため、収益を増やすのが難しいのです。
>介護報酬とは?
介護報酬は、介護サービスを提供する事業者(施設や訪問介護事業者)が国から受け取る報酬のことです。
これは、介護保険制度に基づいて決められ、全国一律の料金になっています。
また、介護サービスの費用は、
「介護保険からの給付」+「利用者の自己負担」
の2つで成り立っています。(下記の表参考)
介護サービス費の例
サービス内容 | 介護報酬(総額) | 利用者の負担額(1割負担) |
---|---|---|
訪問介護(30分) | 約3,000円 | 約300円 |
デイサービス(1日) | 約7,000円 | 約700円 |
特養の入居費(月額) | 約150,000円 | 約15,000円 |
このように、介護費用の約90% を国や自治体(介護保険)から支払い、1割を利用者が負担しています。
こう考えると、老人1人にかかる国の費用(負担)は大きいです。
• コスト削減の圧力が強い
介護施設は人件費がコストの大部分を占めます。
そのため、収益が伸びないと職員の給与に還元するのが難しくなります。
• 人材不足による負担増
人手が足りないことで、1人あたりの仕事量が増え、長時間労働が常態化しています。
しかし、労働時間が増えても給与が劇的に上がるわけではありません。
介護職員が直面する過酷な現実
私が直接、目の当たりにした介護の現実は、とても過酷なものでした。
入居者様に思い切り噛まれ、腕から流血している職員さんは沢山いました。
① 身体的・精神的負担
• 利用者の介助(入浴、排泄、食事)による腰痛や関節痛
• 夜勤や長時間労働による慢性的な疲労
• 認知症対応などでの精神的ストレス
② 人間関係のストレス
• 職場内での人間関係(職員間の軋轢、管理者との衝突)
>管理者は、たまに見に来て『できていない』と文句を言う人が多くて驚きました。
『実際、1日中対応してから言いなさい!』
と言いたくなるほど、現場の職員と、管理者の温度差は大きかったです。
• 利用者やその家族からのクレーム対応
>家族から見ると『介護のプロ』なのでしょうが、ご家族より今の利用者さんの状況を知っています。
「昔、大福が好きだったから」とか
「のど飴が好きだった」など、今はそれが無理な状況を受け入れられず
『好きなものも食べられなくて可哀想』と言って、隠れて勝手に食べさせて、救急搬送されていく老人を見ました。
でもそのクレームは
「食べさせてなかった施設のせい」
と言いきる理不尽なご家族も多くいるので、介護士さんは大変です。
③ 「やりがい搾取」の問題
「利用者さんのため」との思いから頑張りすぎてしまう職員が多く、適正な労働環境や給与を求める声が上がりにくいのが現状です。
介護業界で生き抜くための戦略
そんな介護業界ですが、もうどんなに頑張っても給与は上がらないのでしょうか?
いえ、ちょっと頑張れば昇給できるチャンスはあります。
① スキルアップで給与を上げる
介護業界には資格手当があります。例えば…
• 介護福祉士(資格手当1~3万円アップ)
• ケアマネージャー(さらに給与アップが期待)
• 福祉用具専門相談員(デスクワーク寄りの仕事に転職しやすい)
→ 資格取得を目指すことで給与アップを狙うのは有効な戦略です。
*私のいた施設も、皆国家資格を目指していました。
(手続きに必要な書類もあるので、経理の方と仲良くなっておいた方がいいですよ)
② 職場環境の良い施設を選ぶ
介護施設には「ブラック施設」と「ホワイト施設」があります。←本当にあります。
• ブラック施設:人手不足、残業が多い、パワハラがある
• ホワイト施設:人員配置が適正、休みが取りやすい、給与が高い
施設の口コミサイトやハローワークの情報を活用し、労働環境が良い施設を選ぶことが重要です。
③ 副業・転職を視野に入れる
「介護職のままでは生活が苦しい」
と感じるなら、副業や転職も選択肢のひとつです。
• 副業例:夜勤専従で働きながら、空いた時間にライターや動画編集の仕事
• 転職例:介護経験を活かして、福祉用具販売や介護保険関連の仕事へシフト
介護士は現在、就職率が良い職種です。
経験者なら尚更!より良い職場を目指して転職活動することをおすすめします!
>リハビリ職専門転職サイトレバウェルリハビリ
>介護職応援プロジェクト実施中の介護・福祉の転職サイト『介護JJ』
介護業界のリアル・本当に介護の未来は明るい?
現在、国も介護職の待遇改善に向けた取り組みを進めています。
• 介護報酬の引き上げ
• 介護ロボット導入による負担軽減
• 外国人労働者の受け入れ拡大
先日、取材でハローワークへ行った際に「介護業界の求人状況」を聞いてみると
『介護業界への就職率は100%超えです』
という話でした。
求人の方が多く、介護士や介護する側が全く足りていない状況だそうです。
まとめ
すぐに大きな変化は期待できませんが、今後、待遇が改善される可能性はあります。
介護業界は厳しい現実がありますが、資格取得や職場選び、副業などの工夫で収入アップや負担軽減を目指すことができます。
「給料が低いから」
と諦めるのではなく、自分に合った働き方を見つけ、無理なく長く続けられる道を探していきましょう。
<関連サイト>厚生労働省「介護士の給与一覧」