
はじめに
KB5064403 は Windows 11 バージョン 22H2 / 23H2 向けの .NET Framework 3.5 / 4.8.1 の累積更新です。更新自体は小規模に見えても、.NET を使うアプリ全般に関わるため失敗事例が出やすいカテゴリとなっているようです。まずは Windows Update の基本修復 → .NET の修復 → スタンドアロン(MSU)での手動適用の順に進めるのが安全です。公式の配布・入手方法は Windows Update(オプション更新に表示されることあり)と Update Catalog が案内されています。
KB5064403 とは
- 対象:Windows 11 22H2 / 23H2
- 内容:.NET Framework 3.5 / 4.8.1 の品質・信頼性(セキュリティを含む)更新
- 配布:Windows Update(「オプションの更新プログラム」に出る場合あり)/Microsoft Update Catalog(手動ダウンロード可)
- リリース:2025年8月26日(プレビュー)→ 9月9日(ロールアップに同梱)。既にプレビューを入れている場合は追加操作不要の扱いです。
重要:OS の大型機能更新ではなく .NET ランタイム層の更新です。とはいえ、.NET 依存アプリが多い環境ほど影響は無視できません。
よくある症状
- 「ダウンロードは完了するが、インストール段階で失敗する」
- 再試行しても同じエラーコードで止まる(例:0x80070005 / 0x800f081f / 0x80073712 など)
- 再起動後に「未適用として再度表示」される/繰り返し失敗する
多くのユーザーが報告しているのは、インストールプロセス自体が途中で止まる・再試行しても繰り返し失敗するというパターンです。特に、進行バーが「インストール中」から動かず数十分経過するケースや、再起動後に「更新に失敗しました」と表示され、同じ KB5064403 が再び配信される状態がよく見られます。
このような現象は、Windows Update コンポーネントの破損や、.NET Framework の内部ファイルの不整合が主な原因です。特に過去にプレビュー版(例:2025年8月末配信)をインストールしている場合、内部バージョンの整合性が崩れていると、同一KBの再適用で競合が発生することがあります。
また、企業ネットワークやセキュリティソフトを利用している環境では、一部の更新ファイルがブロックされる、.NET関連DLLがロックされるといったケースも確認されています。こうした場合、セーフモードやクリーンブートで再試行することで成功することがあります。
ユーザー側でできる対処は、次のステップにあるように トラブルシューティング → キャッシュ削除 → DISM / SFC修復 → 手動インストール(MSU適用) の順で行うのが基本です。これらはシステムに影響を与えず安全に実施できるため、初心者にもおすすめの手順です。
想定原因(まず疑うところ)
- Windows Update コンポーネント破損
キャッシュ(SoftwareDistribution / Catroot2)やサービスの不整合。 - .NET Framework 側の矛盾・破損
過去の適用残りや機能の有効・無効切替のズレ。 - 常駐ソフトの干渉
特にセキュリティソフトや .NET 利用アプリのロック。 - ネットワーク/配布経路の問題
WSUS/プロキシ/一時的障害でパッケージが欠損。 - ストレージ要因
空き容量不足/ファイルシステムエラー。 - 前提条件不足
.NET 3.5/4.8.1 の機能状態やソース不足で失敗。
これらの原因は一見ばらばらに見えますが、根本には「更新データの整合性が取れない」状態があります。
Windows Update は複数の仕組み(WUサービス、BITS、CryptSvc など)が連動して動作しており、どれか一つでも破損・停止・アクセス拒否があると、KB5064403 のような .NET 関連更新が途中で止まってしまいます。
特に .NET Framework の更新は、単なるファイルの上書きではなく、既存アセンブリとの署名照合・証明書検証・依存関係の再構成が行われるため、通常のセキュリティ更新よりも失敗しやすい傾向があります。
過去に .NET 3.5 を一時的に無効化していたり、旧バージョンの残骸がレジストリや WinSxS 内に残っていると、「一部が認識されないまま適用が始まり、途中で整合性エラーが発生する」というパターンもよくあります。
解決の最短ルート(優先順でどうぞ)
前提の確認
- 再起動を1回実施してからやり直します。
- 空き容量(Cドライブ)を確保してください。
- 業務時間外に実施(失敗時の検証時間を確保)
ステップ1:Windows Update トラブルシューティングを実行
設定 → システム → トラブルシューティング → その他のトラブルシューティング → Windows Update を実行。完了後に再起動。
ステップ2:Windows Update コンポーネントのリセット
管理者権限のコマンド プロンプトで以下を順に実行 → 再起動。
net stop wuauserv
net stop cryptSvc
net stop bits
net stop msiserver
ren C:\Windows\SoftwareDistribution SoftwareDistribution.old
ren C:\Windows\System32\catroot2 catroot2.old
net start wuauserv
net start cryptSvc
net start bits
net start msiserver
※サービス/ACL 初期化など詳細手順は Microsoft ドキュメントの「Windows Update コンポーネントのリセット」を参照してください。
ステップ3:システム整合性の修復(DISM → SFC)
管理者のコマンド プロンプトで実行
DISM.exe /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
sfc /scannow
DISM は既定で Windows Update をソースに使います。WU 側が壊れている場合は /Source と /LimitAccess を併用し、ISO から修復する方法も有効です。
<例>
DISM.exe /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth /Source:D:\Sources\install.wim /LimitAccess
(D: はマウントした ISO のドライブ)
ステップ4:.NET Framework の機能修復
「Windows の機能の有効化または無効化」で
.NET Framework 3.5 を一度オフ → 再起動 → 再度オン。
4.8.1 は Windows 11 に同梱の最新版で、状態の再構成で改善することがあります(.NET のバージョン概要はこちら)。
ステップ5:スタンドアロン(MSU)で手動インストール
Microsoft Update Catalog から KB5064403(OS/CPU に合う版)を直接ダウンロードし、ローカル保存した MSU をダブルクリックで適用。ネットワーク共有からの実行は避けるのが無難。
ステップ6:セーフ モードでの適用
常駐の干渉が疑われる場合、
セーフ モード(ネットワークなし)で起動 → MSU を適用。
終了後、通常起動して Windows Update を再確認。
それでも失敗するとき(回避と調査)
一時的に「非表示」または保留
不具合が業務に影響する場合、「Show or Hide Updates」相当の手段で該当更新を一時的にブロック(MSDT系ツールは段階的に廃止中のため、最新環境では代替手段の検討も)。あくまで“様子見”用で、恒久回避にはなりません。
ログから原因を絞る
C:\Windows\WindowsUpdate.log
C:\Windows\Logs\CBS\CBS.log
- イベント ビューアー(Windows Update / Setup / Application / System)
代表的なエラーの意味 - 0x80070005 = アクセス拒否(権限/セキュリティ)
- 0x800f081f = ソース不足(DISM に ISO などの Repair Source 指定で解決可)
- 0x80073712 = コンポーネント ストア破損(DISM /RestoreHealth が有効)
実務的なコツ(安全運用)
- バックアップ(復元ポイント/イメージ)を作ってから適用
- 再起動の猶予がある時間帯に実施(更新後の再構成に時間がかかることがある)
- 一斉適用を避ける(台数が多い場合は段階展開)
- ほかの累積更新(OS側)に既知の問題が出た月は、ロールアップの差し替えや臨時パッチに注意(例:直近も不具合修正の臨時累積が配布された事例あり)
まとめ
KB5064403 は .NET Framework 3.5 / 4.8.1 の更新。適用は推奨とされていますが、失敗時は WUトラブルシュート → コンポーネントリセット → DISM/SFC → .NET 機能修復 → MSU手動適用の順で対処してみてください。
続けて失敗する場合は ログのエラーコードで原因を特定し、必要に応じて Repair Source(ISO) を指定。影響が大きい環境では 一時保留や段階展開でリスクを抑えつつ、後日再挑戦が現実的です。
おすすめ関連記事
・KB5066791:Windows 10 最終パッチの内容と注意点まとめ【2025年10月】