
はじめに:KB5067036は「お試し用」の大型プレビュー更新
2025年10月28日、Windows 11 バージョン 24H2/25H2 向けに非セキュリティプレビュー更新プログラム「KB5067036」が配信されました。Microsoft サポートによると、本更新は機能・パフォーマンス・信頼性の改善が目的であり、通常の「月例セキュリティ更新」とは性格が異なります。
特に注目されているのが、
- スタートメニューの大幅リニューアル
- Administrator Protection(管理者保護)機能の導入
- タスクバーやバッテリー表示など UI 周りの改善
といった「見た目とセキュリティを一気に変える」アップデートである一方、インストール後にTask Manager(タスクマネージャー)が複数起動する不具合や、スタートメニュー/タスクバーが反応しなくなるトラブルなども報告されています。
この記事では、「何が変わるのか」「どんな不具合があるのか」「今入れていい人/待った方がいい人」を、Windowsトラブルに慣れた方向けに整理して解説します。
1. KB5067036 の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 更新番号 | KB5067036 |
| 対象OS | Windows 11 バージョン 24H2 / 25H2(全エディション) |
| OSビルド | 24H2:26100.7019/25H2:26200.7019 |
| 更新の種類 | 非セキュリティ/オプション/プレビュー更新(任意インストール) |
| 主な目的 | 機能追加・UI刷新、パフォーマンス・信頼性改善(セキュリティ修正ではない) |
| 配信日 | 2025年10月28日(日本時間) |
| 入手方法 | [設定]→[Windows Update]→「最新の更新をいち早く取得」をオン→「更新プログラムのチェック」で手動インストール |
いわゆる「お試し版(Preview)」更新なので、自動では勝手に入らず、ユーザーが明示的にインストールを選んだ場合のみ適用されます。企業ではテスト用PCに先行適用し、問題がなければ本番環境へ…という使い方が想定されています。
2. 追加された主な新機能・改善点
2-1. 新しいスタートメニュー
KB5067036 でもっとも話題になっているのが、「新しいスタートメニュー」です。
- すべてのアプリがスクロール式の単一ビューに統合
- 「グリッド表示」と「カテゴリ表示」の2モードでアプリ一覧を切り替え
- 「ピン留め」「おすすめ」エリアをある程度カスタマイズ可能(非表示オプションなど)
- Phone Link(スマホ連携)パネルが統合され、最近の着信やメッセージに素早くアクセス
- 大画面では情報量を増やし、小型画面ではシンプル表示に自動調整
なお、これらの変更は段階的ロールアウトのため、KB5067036 をインストールしてもすぐに全員が新デザインになるとは限りません。
「見た目が大きく変わるのはちょっと…」という方は、本番PCへの適用を遅らせる判断も十分アリです。
2-2. Administrator Protection(管理者保護)
Administrator Protection は、Windows 11 の権限管理を強化する新しいセキュリティ機構です。
- 管理者権限を悪用しようとするアプリやスクリプトを検知・ブロックする仕組み
- 特に企業環境(管理者権限を持つアカウントが多い環境)での被害軽減が狙い
- 家庭用PCでも段階的に有効化される予定だが、「目に見える変化」は限定的
「今すぐ効果を体感できる機能」ではありませんが、中長期的にはランサムウェアや管理者権限の乱用を減らすための基盤と考えておくと良いと思います。
2-3. タスクバー・バッテリー表示などの UI 改善
その他にも、KB5067036 では次のような UI 改善が含まれています。
- バッテリーインジケーターの刷新(残量%表示のわかりやすいデザイン)
- タスクバーのサムネイル表示やアニメーションの調整
- Media Creation Tool が動作しない不具合の修正 など
見た目の変化・細かい使い勝手の改善が中心で、日常的に触れる部分がじわっと変わる更新といえます。
3. KB5067036 適用後に報告されている不具合・リスク
ここからが本題です。KB5067036 は便利な更新である一方、いくつか気になる不具合報告があります。
3-1. Task Manager が複数起動して閉じられないバグ
もっとも有名なのが、タスクマネージャーが「閉じたのに裏で増殖し続ける」バグです。
- [×]で閉じてもプロセス
taskmgr.exeが終了せず、バックグラウンドで残る - 何度も開閉を繰り返すと、見えないタスクマネージャーが大量に増え、メモリを圧迫
- 環境によっては 100 個近いインスタンスが溜まり、数GB単位でメモリを消費した報告も
Microsoft もこの問題を正式に認識しており、「10月28日以降の更新(KB5067036など)を適用した後に発生する」既知の問題として公開しています。
一応、11月中旬の更新で修正が配信されているため、最新の更新をまとめて適用すれば解消するケースが多いものの、「KB5067036 だけ」先に入れた状態だと発生するリスクがあります。
回避・対処の例
- タスクマネージャーを何度も開閉しない(常に開きっぱなしで使う)
- 挙動がおかしい場合は、別のプロセスから
taskkill /im taskmgr.exe /fで一括終了する - 後続の累積更新を適用して、不具合が修正されたビルドへ更新する
3-2. スタートメニュー/タスクバーなど UI 全般が壊れるケース
一部の環境では、10月以降の Windows 11 24H2/25H2 更新を適用した結果、
- サインインしてもスタートメニューやタスクバーが表示されない/真っ黒な画面になる
- エクスプローラーや設定アプリが開かない/すぐ落ちる
といったUI 全般が機能しなくなる深刻な不具合も報告されています。Microsoftは、「特に企業の非永続デスクトップ環境などで発生しやすい」と説明しており、一般家庭のPCでは発生率は低いとしています。
とはいえ、業務用PCやVDI環境などで 24H2/25H2+KB5067036 を一気に入れるのは慎重にした方が良さそうです。
3-3. 起動不能・自動修復ループになる報告
国内の一部ユーザーからは、KB5067036 適用後に
- 画面が真っ暗のまま何も表示されない
- 自動修復ループから復帰できない
といった起動トラブルが報告されています。
報告例では、
- CMOSクリアで起動するようになった
- 回復環境から「システムの復元」で KB5067036 適用前に戻して復旧した
というパターンが見られますが、一般ユーザーが自力で対応するにはハードルが高い内容です。
3-4. そのほかの細かい不具合
- 更新がエラー(0x8007000d など)で失敗し、何度も再試行ループに入る報告
- サインイン画面のパスワードアイコンが消える UI バグ(別のプレビュー更新でも類似例あり)
- 起動直後に壁紙が消え、デスクトップの描画がおかしくなるといったグラフィック系の不具合
- 特定環境でゲームのパフォーマンス低下が出るという報告
これらはすべての環境で再現するわけではありませんが、「プレビュー更新にありがちな“当たり外れ“が大きいアップデート」と見ておくのが安全です。
4. KB5067036 を入れるべきかどうかの判断材料
ここまでの情報をふまえて、「どんな人は早めに試してもよいか」「どんな人は様子見が無難か」をざっくり整理します。
4-1. 早めに試してもよい人
- サブPC・テスト用PCなど、「最悪、復元してもOK」な環境を持っている
- 新しいスタートメニューや UI をいち早く触ってみたい
- 回復ドライブやイメージバックアップなど、トラブル時の復旧手段をすでに用意している
- 後続の更新(11月以降の累積更新)もこまめに適用できる
このような方であれば、事前バックアップを取ったうえで「お試しPC」に入れてみるのはアリだと思います。
4-2. 様子見をおすすめしたい人
- 仕事用・会計用など、絶対に止めたくないメインPC
- 1台しかPCがなく、起動不能になると非常に困る
- 復元ポイントやバックアップの運用にあまり自信がない
- 「新機能より安定性優先」のスタンス
この場合は、KB5067036 はスキップして、12月以降の正式な累積更新(Patch Tuesday)で統合されるのを待つのが無難です。プレビュー段階で出た不具合は、正式版ではかなり潰されていることが多く、安定性も上がります。
5. インストール方法と事前準備
5-1. インストール手順
KB5067036 は通常の Windows Update からインストールできます。
- [設定]→[Windows Update]を開く
- 「最新の更新をいち早く取得する」をオンにする
- 「更新プログラムのチェック」をクリック
- 一覧に「2025-10×× プレビュー更新プログラム(KB5067036)」が出たら選択して[ダウンロードとインストール]
- インストール完了後、指示に従って再起動
プレビュー更新なので、表示されない場合はしばらくしてから再度チェックすると出てくることがあります。
5-2. 事前にやっておきたい安全対策
- 復元ポイントの作成
[コントロール パネル]→[システム]→[システムの保護]から、「今すぐ作成」で復元ポイントを1つ作っておく。 - 重要データのバックアップ
ドキュメント、デスクトップ、会計データなどは外付けSSDやクラウドに複製しておく。 - 回復ドライブ/インストールUSBの準備
「Windowsが起動しない」ケースに備えて、Windows 11 の回復USBを1本は用意しておく。
6. KB5067036 適用後に不具合が出たときの戻し方
もし KB5067036 適用後に PC の調子がおかしくなった場合は、次の順で対処を検討します。
- 「更新プログラムのアンインストール」から KB5067036 を削除
[設定]→[Windows Update]→[更新の履歴]→[更新プログラムをアンインストールする]から KB5067036 を選択し、アンインストール。 - システムの復元を使う
復元ポイントを作っていた場合は、「KB適用前」の状態へ戻す。 - 起動不能な場合:回復環境から復元
回復ドライブやインストールUSBから起動し、「トラブルシューティング」→「システムの復元」でロールバック。
ここまでやっても改善しない場合は、ハードウェア側の要因(CMOSクリアが必要なケースなど)も関わってくるため、無理せずメーカーや専門家に相談した方が安全です。
まとめ:KB5067036は「検証用PC向け」色の強いアップデート
KB5067036 は、
- スタートメニューの全面リニューアル
- Administrator Protection による権限管理の強化
- タスクバーやバッテリー表示など UI の改善
といった魅力的な新機能・改善をまとめて体験できる一方で、
- タスクマネージャーの増殖バグ
- スタートメニュー/タスクバーなどの UI トラブル
- 一部環境での起動不能・自動修復ループ
など、プレビュー更新らしいリスクもはっきり存在するアップデートです。
結論としては、
- サブPC・検証環境:バックアップ前提なら試してみる価値あり
- 仕事用・メインPC:正式な累積更新に統合されるまで「様子見」が無難
という立ち位置になります。Windows 11 24H2/25H2 を安定して運用したい方は、トラブル事例や後続の修正状況をチェックしながら、「入れるタイミング」を自分の運用ポリシーに合わせて決めていくのがおすすめです。
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