首相の施政方針演説と副業推進
2025年1月24日、第217回国会において石破茂首相は施政方針演説を行い、その中で地方公務員の兼業・副業の弾力化について言及しました。この施策は、地域社会の活性化や、公務員の能力を最大限に活かせる環境を整備することを目的としています。
この背景には、少子高齢化や人口減少による労働力不足の深刻化があります。
リクルートワークス研究所の報告によると、2030年には約341万人、2040年には約1,100万人の労働力が不足すると予測されています。このような状況下で、地方公務員が副業を通じて地域社会に貢献することが期待されています。
しかし、公務員の副業推進が進む一方で、日本全体の給与水準の低下が懸念されるという側面もあります。
給与水準低下の可能性とその影響
内閣府の調査では、本業の年収が低い層ほど収入目的で副業・兼業を行う割合が高いことが示されています。この傾向が続くと、本業の収入だけでは生活が成り立たない状況が一般化し、より多くの人が副業をしなければならなくなる未来が訪れる可能性があります。
さらに、2050年までに日本の人口は約8,807万人にまで減少すると予測されています。
このような人口動態の変化は、労働市場や賃金構造に大きな影響を与え、全体的な給与水準の低下につながる可能性が高いです。
副業が必須となる未来とは?
現状のままでは、以下のような未来が想定されます。
・本業だけでは生活できないため、多くの人が副業をせざるを得ない
・本業の給与が抑えられ、副業が前提の賃金体系が定着する
・労働時間の増加により、ワークライフバランスが崩れやすくなる
・副業をできない高齢者や障がい者の生活が厳しくなる
このような状況を回避するためには、企業側の賃上げの推進や、政府による労働環境の改善施策が不可欠です。
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副業推進のメリットと課題
もちろん、副業が増えることで得られるメリットもあります。
副業推進のメリット
・収入の多様化により、経済的なリスク分散ができる
・新たなスキルを獲得し、キャリアの選択肢が広がる
・地域の人材不足を補い、地方経済の活性化に貢献できる
という事が副業推進のメリットと言えるかと思います。
副業推進の課題
・長時間労働の常態化による健康問題
・本業の業務に支障が出る可能性
・副業に頼る社会が定着すると、本業の賃上げが進まなくなる
朝8時から午後5時まで勤務しているのに、それだけでは生活できない給与額とは・・。
日本の給与は公務員の給与額が基本になっているという感覚がありましたが、このままでは日本国民全体が「副業しなければいけない」生活になりうるのでは?と考えてしまします。
他国の公務員の副業に関する事例
ここからは、私が調べた他国の公務員の副業の事例をあげていきます。
アメリカの場合
アメリカの国家公務員は、報酬の有無にかかわらず、原則として兼業が認められています。
ただし、職務上の責任と相反する外部雇用や活動は、倫理規則で禁止されているようです。
*具体的には、職務と利益相反となる可能性のある外部活動を行う場合、所属機関の事前承認が必要とされています。
イギリスの場合
イギリスの国家公務員も、報酬の有無にかかわらず、原則として兼業が可能です。
ただし、職員自身や近親者が有する有報酬の外部雇用関係や保有株式等について、採用や異動の際に所属部署に申告する義務があります。
上級公務員に関しては、外部利益の申告を年1回更新し、ウェブ上で公表することが求められています。
これらの事例から、日本の地方公務員が副業を行う際には、法令や所属自治体の規則を遵守し、適切な手続きを踏むことが重要であることがわかります。
また、他国の事例を参考にしながら、公務員の副業に関する制度や倫理規定の整備が進められることが期待されます。
給与水準は低いままの日本に求められる対策
地方公務員の副業推進は、労働力不足の解消や地域活性化に貢献する可能性があります。
しかし、その裏では日本全体の給与水準の低下や、生活のために副業をせざるを得ない社会の到来が懸念されます。
そのため、今後求められるのは、
・本業の賃上げを積極的に推進する
・働き方改革を進め、副業が強制される社会にならないようにする
・公務員の副業ルールを明確化し、公平な競争環境を整える
など、副業が選択肢の一つとして認められる社会は望ましいですが
「副業しなければ生きていけない」
社会にならないための政策が今後ますます重要になっていくでしょう。
関連サイト・総務省「地方公務員の兼業」