
はじめに
最近では
「古いPCを再利用したい」
「Windowsの更新に疲れた」
「開発やサーバー運用の勉強をしたい」
といった理由で、Linuxを使ってみたいという方が増えています。
しかし実際に導入してみると、「Wi-Fiにつながらない」「日本語入力できない」「USBが認識しない」といった“最初の壁”にぶつかることも多いです。
この記事では、Linux初心者が乗り換え・並行利用でつまずくポイントだけを、できるだけ早く直せるように具体的に解説します。
1. Wi-Fiがつながらない・認識しない
Linuxで最初に多いトラブルが「無線LANがつながらない」です。
原因の多くは「ドライバが自動で入らない」ことにあります。
【原因】
Linuxで最も多いトラブルの一つが、Wi-Fiが認識しない・接続できないというものです。
これは主に、無線LANアダプター(チップ)のドライバが自動でインストールされていないことが原因です。
特に Realtek や Broadcom 製のチップを使うPCでは起こりやすい問題です。
【対処法】
▶ 1. まずは有線LANで接続して更新
Wi-Fiドライバをインストールするために、最初はLANケーブル(有線接続)でネットにつないでおきます。
これにより、必要なドライバをapt経由で取得できます。
▶ 2. ネットワークデバイスを確認
お使いの無線アダプターの型番を確認します。
lspci | grep -i network
(内蔵Wi-Fiカードの確認)
またはUSB型Wi-Fiアダプターを使っている場合は
lsusb
これで表示されたメーカー名(Realtek / Broadcomなど)をメモしておきます。
▶ 3. 該当ドライバをインストール
代表的な例を挙げます。
● Broadcom系の場合(Ubuntu系)
sudo apt update
sudo apt install bcmwl-kernel-source
● Realtek系の場合(例:RTL8821CEなど)
sudo apt update
sudo apt install rtl8821ce-dkms
型番が異なる場合は、「rtl」+チップ名を含むドライバ名で検索します。
apt search rtl
💡 ヒントdkms付きのパッケージは、カーネル更新時にも自動でドライバが再構築されるため、再起動後も安定します
▶ 4. 再起動してWi-Fiを確認
sudo reboot
再起動後、右上(またはタスクバー)のネットワークアイコンをクリックしてSSIDが表示されれば成功です。
【補足:GUIでの確認】
もしコマンド操作が苦手な場合は、
「設定 → ネットワーク → Wi-Fi」からドライバの有無を確認できます。
「Wi-Fiアダプターが見つかりません」と表示される場合は、上記ドライバの導入が必要です。
【トラブルが続く場合のチェックポイント】
| 症状 | 対策 |
|---|---|
| Wi-Fiのスイッチがオフのまま | ノートPCの機能キー(例:Fn+F2)でオンにする |
| 機内モードが有効 | 機内モードをオフにする |
| DHCP設定が不安定 | ネットワーク設定からIPv4を「自動(DHCP)」に変更 |
| ドライバが複数入っている | 一度削除 → 正しいドライバを再インストール |
【ドライバ削除・再インストール例(Broadcom)】
sudo apt remove bcmwl-kernel-source
sudo apt install bcmwl-kernel-source
💡 ポイント: ドライバが正しく動作すると、コマンドで
nmcli dev wifi list
を実行したときに、周囲のSSID一覧が表示されます。
2. 日本語入力ができない(IMEが動作しない)
初期状態では、半角/全角キーを押しても入力が切り替わらないことがあります。
【原因】
日本語入力エンジン(IME)が未設定、またはibusやfcitxの設定が未完了。
【対処法】
Ubuntuの場合
sudo apt install fcitx-mozc
im-config -n fcitx
reboot
再起動後に右上の入力メニューから「日本語 – Mozc」を選択します。
💡 ヒント
Fedora系はibus-mozc、Arch系はfcitx5-mozcなどディストリビューションごとに異なります。
入力切替は Ctrl + Space または 半角/全角キー で行います。
3. USBメモリ・外付けHDDが認識しない
【原因】
USBメモリや外付けHDDがNTFSやexFAT形式でフォーマットされていると、
Linuxの初期状態ではうまく読み込めない場合があります。
特にWindowsで使っていたドライブは、これらの形式が多いため注意が必要です。
【対処法】
▶ exFAT形式(SDカード・USBメモリで多い)
Ubuntu 22.04以降では標準対応していますが、認識されない場合は以下のパッケージを追加します。
sudo apt install exfatprogs
古いUbuntu(20.04以前)を使用している場合は、次の旧方式で対応します。
sudo apt install exfat-fuse exfat-utils
▶ NTFS形式(外付けHDDで多い)
Windowsで使っていたNTFS形式のドライブを読み書きできるようにします。
sudo apt install ntfs-3g
【確認とマウント】
インストール後、USBやHDDを抜き差しして再接続し、
自動的にマウント(認識)されるか確認します。
もし自動で開かない場合は、手動でマウントします。
sudo mount /dev/sdb1 /mnt
💡 補足
多くのLinuxディストリビューションでは、GUI(ファイルマネージャ)でドライブをクリックするだけで
自動マウントされます。まずはマウス操作で試してみるのがおすすめです。
4. 音が出ない・スピーカーが認識しない
【原因】
音が出ない場合は、サウンド出力先が間違っているか、
音量管理システム(PulseAudio または PipeWire)の設定不具合が原因です。
【対処法】
1. まずは出力先を確認
「設定」→「サウンド」を開き、
出力デバイスの一覧から「HDMI出力」「内蔵オーディオ」など、正しいスピーカーを選びます。
ノートPCの場合、Bluetoothイヤホンが接続中だと自動的に出力が切り替わることもあります。
2.それでも音が出ない場合は、音量管理ツールを導入
sudo apt install pavucontrol
→ アプリ一覧から「PulseAudio 音量調整(pavucontrol)」を起動し、
「再生」タブと「出力デバイス」タブで、出力先と音量を確認・調整します。
💡 Ubuntu 22.10以降では、内部的にPipeWireが標準になっていますが、pavucontrolは引き続き利用可能です。
PipeWire環境でも同じ手順で問題ありません。
3.古い設定をリセットして再起動
設定ファイルが壊れている場合は、リセットで改善します。
rm -r ~/.config/pulse
reboot
再起動後、音量設定を再確認してください。
5. ターミナルでの「sudo」が使えない/パスワードが通らない
【原因】
Linuxでは、管理者権限(root権限)を使う際にsudoコマンドを利用します。
しかし次のような状況では「sudoが使えない」「パスワードを入れても拒否される」ことがあります。
- 管理者権限が付与されていないユーザーでログインしている
- rootアカウントが無効化されている(Ubuntu標準)
- sudoグループの設定が壊れている/追加されていない
- Caps Lockの押しっぱなしなど、単純な入力ミス
【対処法】
▶ 1. Caps Lock・キーボードレイアウトを確認
まずは単純なチェックです。
- Caps Lock(大文字固定)が有効になっていないか
- 日本語キーボード/英語キーボードが切り替わっていないか
→ ターミナルのパスワード入力欄は入力文字が表示されないため、実際に違うキーが入っていることがあります。
▶ 2. rootユーザーに切り替えて修正
sudoが使えない場合、いったんroot権限に直接入る必要があります。
(rootパスワードを設定していない場合は、リカバリモードで設定できます)
su
rootパスワードを入力します。
▶ 3. sudo権限を付与したいユーザーを登録
ログイン中のユーザーに管理者権限を付け直します。
以下のコマンドをrootで実行します。
usermod -aG sudo ユーザー名
▶ 4. 設定を反映
グループ変更を反映するために、一度ログアウトまたは再起動します。
reboot
再起動後、以下で確認します。
groups
出力の中に「sudo」が含まれていればOKです。
▶ 5. Ubuntuでrootが無効な場合の設定(上級者向け)
Ubuntuではセキュリティ上、rootアカウントが初期状態で無効化されています。
どうしてもrootで直接操作したい場合は、パスワードを設定します。
sudo passwd root
root用の新しいパスワードを入力して確定します。
(ただし、通常運用ではsudoを使う方法のほうが安全です。)
💡 補足:sudoパスワード入力の仕様
- 文字が表示されないのはエラーではなく正常動作です。
- 入力後にEnterキーを押すだけでOK。
- 間違えた場合は「Sorry, try again」と表示されます。
それでもsudoが通らないときの最終手段
リカバリーモード(GRUB起動時に「Advanced options → recovery mode」)から起動し、
「root」シェルを選択して再設定します。
mount -o remount,rw /
passwd ユーザー名
これでユーザーパスワードを再設定し、再起動します。
💡 sudoは「ちょっとだけ管理者権限を借りる」仕組みです。
常時rootで作業するより安全なので、必要なときだけsudoを使うのがLinuxの基本です。
6. Windowsとデュアルブートできない・起動メニューが出ない
【原因】
GRUB(Linuxのブートローダ)がWindows Boot Managerを認識していない。
【対処法】
- Linuxにログイン後、以下を実行:
sudo update-grubWindowsの項目が表示されるはずです。 - 表示されない場合:
sudo os-prober sudo update-grub - それでもだめな場合、BIOS設定で「Boot Mode」をUEFIに統一して再インストール。
💡 注意: Windows側がBitLocker有効だと、Linuxからのアクセスに制限がかかります。
7. タイムゾーン・時計がズレる
デュアルブートでは「LinuxとWindowsで時計がズレる」現象がよく起こります。
【原因】
Linuxは「UTC(協定世界時)」、Windowsは「ローカル時間」で内部時計を管理しているため。
【対処法】
Linux側で以下を実行
timedatectl set-local-rtc 1 --adjust-system-clockこれでWindowsと同じローカル時刻を参照します。
8. apt updateでエラーが出る(キー・リポジトリ関連)
【原因】
古いリポジトリURLや公開鍵が期限切れ。
【対処法】
sudo apt update --allow-releaseinfo-changesudo apt-key adv --keyserver keyserver.ubuntu.com --recv-keys <キー番号>キー番号はエラーメッセージ中に表示されます。
また、ディストリビューションのバージョンを上げた直後は一時的なエラーも出ます。
[スポンサーリンク] Linux乗り換えを“すぐ快適”にする周辺機器
まとめ
Linuxは「少しの壁を乗り越えるだけ」で一気に使いやすくなるOSです。
最初は「Wi-Fi」「日本語入力」「音」「外部メディア」の4点を整えるだけでも、驚くほど快適になります。
もし何かうまくいかないときは、慌てずコマンドをそのままコピー&ペーストで実行し、
エラーメッセージを確認するクセをつけるのが上達への近道です。
Windowsとの違いに最初は戸惑うかもしれませんが、
Linuxは「自分の思い通りにカスタマイズできる自由な世界」です。
慣れてくると、軽く・速く・トラブルにも強い相棒になります。
ぜひ、つまずいたらこの記事を思い出して、最短で“快適なLinuxライフ”を取り戻してください。
おすすめ関連記事
・仮想化ディスク、結局どれが最適?Linux/VBox/VMwareの違いをわかりやすく解説

