Windows 10 / 11 の「アプリ」一覧や「プログラムと機能」を開くと、
- Microsoft Visual C++ 2005 Redistributable
- Microsoft Visual C++ 2008 Redistributable
- Microsoft Visual C++ 2010 …
- Microsoft Visual C++ 2015–2022 …
など、よく分からない“Microsoft Visual C++”が年号違いでズラッと並んでいて、びっくりしたことはありませんか?
しかも、32bit / 64bit など似た名前がいくつも並ぶので、
「古そうだし、消してもいいのでは?」
「こんなにたくさん要らないでしょ?」
と不安になり、「visual c++ 消していい?」と検索する人が急増しています。
先に結論から言うと――
Microsoft Visual C++ は、基本的に“消さないほうが安全”です。
理由を、初心者向けに順番に解説していきます。
Microsoft Visual C++ ってそもそも何?

アプリやゲームが使う「共通部品(ランタイム)」のセット
Microsoft Visual C++ は、マイクロソフトの C++ 開発環境の名前です。
その中で作られたアプリを動かすために必要な「ランタイム(共通部品)」をまとめたものが、
Microsoft Visual C++ 再頒布可能パッケージ(Redistributable)
です。
- 多くの Windows アプリや PC ゲームは、このランタイムを前提に作られている
- アプリ本体とは別に、「Visual C++ 再頒布可能パッケージ」がインストールされる
- 1つ入れて終わりではなく、バージョンごとに必要になる
といった特徴があります。
Wikipedia でも「多くのアプリケーションが Visual C++ ランタイムパッケージを必要としており、これらは別途インストールされる」と説明されています。
なぜ、こんなにたくさん入っているの?
「年号違い・32bit/64bit違い」が全部別物だから
アプリは 「どの Visual C++ ランタイムを使うか」を決めてビルド(コンパイル) されています。
- Visual C++ 2005 用のランタイムで作られたアプリ
- Visual C++ 2008 用のランタイムで作られたアプリ
- Visual C++ 2010 用…
- Visual Studio 2015/2017/2019/2022 系列用(VC++ 2015–2022 再頒布可能パッケージ) など
このように、「年号が違う = 別バージョンのランタイム」であり、互換性は基本的にありません。
Superuser でも「アプリは特定バージョンの C++ ランタイムに対して書かれているので、2005 アプリは 2008 や 2010 のランタイムでは動かない」と説明されています。
さらに、
- 32bit アプリ → x86 版ランタイムが必要
- 64bit アプリ → x64 版ランタイムが必要
なので、
Visual C++ 2010 x86
Visual C++ 2010 x64
といった 「同じ年号で 2つ」 入っているのも普通です。
【重要】Visual C++ を消すとどうなる?
アプリやゲームが起動しなくなるリスクが高い
Microsoft コミュニティなどでも、何度も繰り返し、
「Visual C++ 再頒布可能パッケージは基本的にアンインストールしないでください」
と案内されています。
主な理由は次のとおりです。
- あるアプリが 特定バージョン の Visual C++ を必要としている
- それをユーザー側で削除すると、そのアプリが起動時にエラーを出す
- 場合によっては、Windows の一部機能やドライバ更新ツールなどにも影響が出る
典型的なエラー例
- 「MSVCP***.dll が見つかりません」
- 「アプリケーションの構成が正しくないため起動できません」
- 「side-by-side の構成が正しくありません」
など、原因が分かりにくいエラーになって返ってきます。
いったん消してしまうと、「どのアプリがどのバージョンを使っていたか」を後から特定するのはほぼ不可能です。
「新しいバージョンがあるから、古いのはいらないのでは?」問題
ここも勘違いしやすいポイントです。
「2015–2022 って書いてあるし、2008 や 2010 はもう古いから消していいのでは?」
と考えがちですが、実はそれぞれ別物です。
- 2005 用に作られたアプリ → 2005 ランタイムが必要
- 2008 用に作られたアプリ → 2008 ランタイムが必要
- 2010 用に作られたアプリ → 2010 ランタイムが必要
新しいバージョンが「過去すべてを完全に互換でカバーする」わけではないため、古いバージョンを消すと、その世代向けのアプリが動かなくなる可能性があります。
ディスク容量はどのくらい食っているの?
「容量を節約したいから消したい」という理由もよくあります。
しかし、Visual C++ 再頒布可能パッケージは 1 本あたり数十 MB 程度のものが多く、10 本入っていてもせいぜい数百 MB 程度です。
- 最近の PC は SSD でも 256GB や 512GB が一般的
- それに対して、Visual C++ 全部合わせても数百 MB ~ 1GB 未満程度
ということを考えると、トラブルのリスクに対して、得られる空き容量はかなり小さいです。
容量を空けたいなら、
・使っていないソフトのアンインストール
・巨大な動画や写真の整理
・OneDrive や外付けドライブへの移動
のほうが、よほど効果的で安全です。
じゃあ、ユーザーはどうすればいい?
1. 基本方針は「触らない・消さない」
- アンインストールはしない
- 「よく分からないけど邪魔だから削除」は絶対にNG
- Windows やアプリが必要になったら、勝手に入ってくるもの、と考える
Microsoft のフォーラムでも「アンインストールするとアプリが動かなくなる可能性があるので、放置がベスト」と繰り返し案内されています。
2. 不具合があるなら「修復」を試す
「特定のアプリで Visual C++ 関連のエラーが出る」「最近急に落ちるようになった」などの場合は、消すのではなく “修復” を試します。
Windows 11 の例(アプリと機能から)
- 設定 を開く
- 「アプリ」 → 「インストールされているアプリ」
- 一覧から「Microsoft Visual C++ 20xx 再頒布可能パッケージ」を探す
- 「…」メニュー → 「変更」
- 表示されるセットアップ画面で「修復(Repair)」を選ぶ
※ バージョンによっては「プログラムと機能」から操作する場合もあります。
3. どうしても必要な場合だけ、アプリ側の指示に従って再インストール
Autodesk など一部ベンダーのサポート記事では、特定の不具合対処として「Visual C++ の再インストール」を案内しているケースもあります。
この場合も手順は、
- コントロールパネル / 設定 から該当バージョンをアンインストール
- ベンダーや Microsoft 公式ページから、指定されたバージョンの再頒布可能パッケージをダウンロード
- 再インストール → PC 再起動
という流れで、自己判断で適当に消すのではなく、「ベンダーの指示に従って必要なものだけ入れ直す」 のが鉄則です。
「消してしまったかもしれない…」という場合は?
もし、
- 以前「要らなそう」と思って削除してしまった
- その後からアプリが起動しなくなった
- 「MSVCP***.dll が見つかりません」などのエラーが出る
という状況になっているなら、次のように対処できます。
- エラーが出ているアプリをいったんアンインストール
- 公式サイトから最新版をダウンロードし直して再インストール
- 多くの場合、必要な Visual C++ も一緒に入れてくれます
- それでも改善しない場合は、Microsoft 公式の Visual C++ 再頒布可能パッケージを個別にダウンロードしてインストール
※ どのバージョンが必要か分からない場合は、アプリの公式サポートページやヘルプを確認するのが確実です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「Visual C++ 2015–2022」があれば、古い 2010 や 2012 は消していい?
いいえ、基本的には消さないほうが安全です。
- 2015–2022 は「2015 以降の一部互換」ですが
- 2005 / 2008 / 2010 / 2012 などの古い世代を完全に置き換えるものではありません
古いランタイムを前提に作られたアプリは、そのランタイムがないと動作しません。
Q2. 同じ年号の Visual C++ が複数入っている。これは壊れている?
例えば、
- Microsoft Visual C++ 2015–2022 x86
- Microsoft Visual C++ 2015–2022 x64
- 更新プログラム適用後のビルド違い など
似た名前が複数並んでいるのは正常なことが多いです。
中には実体は 1 セットだが、「更新前」と「更新後」で複数エントリが残っているだけ、というケースもあります。
特にトラブルが出ていないなら、そのまま放置でOKです。
Q3. クリーンアップソフトで「不要なランタイム」と判定された。消しても大丈夫?
おすすめしません。
- 自動判定ツールは、アプリとの依存関係を完璧に把握できているわけではない
- 消した直後は問題がなくても、後から別のアプリを使ったときにエラーが出ることも
クリーンアップ系ソフトは、
- 一時ファイル削除
- ブラウザキャッシュ削除
- 大きな不要ファイルや重複ファイルの整理
など、“明らかに安全な範囲” だけに使い、Visual C++ のようなランタイム系は 触らせない のが無難です。
この記事を読んだら、今日できるチェックリスト
- アプリ一覧を見て「Visual C++」を予定表のように消そうとしていた → 考え直す
- ディスク容量を増やしたい → Visual C++ ではなく、使っていない大きなアプリやデータから整理
- 特定アプリで Visual C++ 関連エラー → 「修復」か、アプリ / ベンダー指示どおり再インストール
- クリーンアップツールの「不要ランタイム削除」 → チェックを外しておく
まとめ:Visual C++ は「意味が分からなくても残しておく」が正解
- Visual C++ 再頒布可能パッケージは、アプリやゲームの「共通部品」
- 年号ちがい・32/64bitちがいは、それぞれ別物で互換性も別
- 消すと、どのアプリが動かなくなるか分からない
- 容量節約のメリットより、トラブルのリスクのほうが圧倒的に大きい
- トラブル時は「削除」ではなく、修復 or 再インストール が基本
「よく分からないけど、Windows が勝手に入れている大事な部品」
→ そう割り切って、そのままそっとしておくのが一番安全です。
