副業や起業に踏み切れない心理とは? 〜メンタル心理カウンセラーが読み解く心のブレーキ〜

「副業を始めたい」

「自分の力で仕事をしてみたい」

そう思って情報を集めたり、SNSやブログを見たりしていても、なかなか一歩を踏み出せない——そんなご相談を、私はこれまで多くの方から受けてきました。

副業や起業を考えるとき、私たちの心にはさまざまな“心理的ブレーキ”がかかります。そのブレーキは、必ずしも「意志が弱いから」とか「能力がないから」ではなく、むしろ人として自然な不安や過去の体験から来ていることがほとんどです。

この記事では、メンタル心理カウンセラー・上級心理士としての視点から、「副業や起業に踏み切れない心理」の正体を解き明かし、どうすれば少しずつ前に進めるのかを一緒に考えていきたいと思います。

「やってみたいけれど怖い」は自然な感情

副業や起業は、多くの場合「今の環境を変えること」につながります。人間は本来、未知のことに対して“恐れ”を感じるようにできています。

たとえば、次のような声をよく聞きます。

  • 「失敗したらどうしよう」
  • 「お金を損するのが怖い」
  • 「周りに何か言われたらどうしよう」
  • 「家族に反対されたらやめるべき?」
  • 「自分には続けられる力がない気がする」

これらはすべて、自分を守るための自然な心理反応です。「恐れがあるからこそ慎重になれる」と考えれば、決して悪いものではありません。

しかし、これらの感情にずっと囚われていると、本来の「やってみたい」という気持ちまで見失ってしまいます。

私もかつて、子育てに追われていた頃、年配の女性から
「今から何かを始めなさい」
「将来のためにお金になる種を蒔いておきなさい」と助言されたことがありました。けれど当時の私は
『子育てだけで手一杯で、それどころじゃない』
と心のどこかで言い訳をして、その言葉から目を背けていました。

しかし、今ならその言葉の意味がよくわかります。

たとえ小さな一歩でも、あの時何かを始めていれば、今頃それは確かな実りになっていたかもしれません。

人は「現状維持バイアス」に引っ張られる

心理学の用語で「現状維持バイアス」というものがあります。これは、たとえ今の状況に不満があっても、変化するリスクを避けようとする人間の傾向のことを指します。

たとえば、今の職場がとてもストレスフルだったとしても

「辞めたあとどうなるか分からない」

「副業で失敗したら元も子もない」

と考えてしまい、結局動けなくなるのです。

このバイアスは、私たちの中にある「安全を優先したい」という防衛本能に根ざしています。無理に抗う必要はありませんが、「今のままで本当にいいのか?」と立ち止まって考えるきっかけになることもあります。

「誰かに否定されるかも」という恐れ

副業や起業に関する行動が止まってしまう理由の一つに、「人にどう思われるかが気になる」という感情があります。

  • 「え、そんなこと始めたの?」
  • 「そんなのうまくいくわけないじゃん」
  • 「安定した仕事を捨てるなんてバカだ」

こうした“他人の声”を想像するだけで、手が止まってしまうのです。

しかし、その「誰か」とは一体誰でしょうか? 多くの場合、それは「心の中にいる“批判する他人”の幻影」であり、実際に批判してくる人がいるとは限りません。

また、仮に否定的な言葉をかけてくる人がいたとしても、その人自身が「挑戦する勇気を持てなかった経験」を抱えている可能性もあります。

否定を恐れるよりも、「共感してくれる人は必ずいる」と信じることが第一歩です。

「自信がない」は、経験不足から来る思い込み

「自信がなくて…」という言葉もよく聞きます。

でも、本当に“自信”が必要でしょうか? 実は多くの場合、自信とは「経験を通して自然に積み重なるもの」です。始める前から自信がある人など、ほとんどいないのです。

自信がない状態でも、まずは小さく始めてみることが大切です。たとえば

  • ブログを1本書いてみる
  • イラストをSNSに1枚投稿してみる
  • 無料で誰かにサービスを試してもらう

このように小さな「やってみる」の積み重ねが、自信という形であとから戻ってきます。

「家族や周囲に理解されない」ときの心の整理

特に女性の方に多いのが、

「副業や起業を考えているけれど、家族に言えない」

「パートナーに反対されている」

というケースです。

このとき大切なのは、「相手の反応=自分の価値」だと思い込まないことです。

相手の反応は、あくまで“その人の価値観”から出てくるものであり、自分の挑戦の正しさを否定するものではありません。

理解されないと感じたときこそ、「まずは自分の中で納得できる理由を持つこと」が支えになります。そして、できれば「感情」ではなく「目的や意味」を丁寧に伝えることを意識してみましょう。

「不安」は消すものではなく、付き合うもの

不安を完全に消してからスタートしようとすると、いつまでたっても動けなくなってしまいます。なぜなら、不安は人間の本能だからです。

大切なのは、不安と共に歩く覚悟です。

「失敗しても、学びが残る」

「お金が減っても、やり方を変えられる」

「うまくいかなくても、支えてくれる人がいる」

このような“再起の選択肢”を持っておくことで、不安と付き合う力が育ちます。

心の声を無視しないでください

あなたが「やってみたい」と思っているその気持ちは、本物です。

心の中で何度も浮かんでくることには、意味があります。

誰かと比べなくてもいい。

完璧でなくてもいい。

すぐに稼げなくてもいい。

大切なのは、あなた自身の納得と、心の声を大事にすることです。

まとめ|踏み出す前にできる3つのこと

最後に、「副業や起業を始めたいけれど怖い」という方に、今からできる3つのステップをご紹介します。

  1. 紙に書き出す
     →「やってみたいこと」と「不安なこと」を可視化することで、心が整理されます。
  2. 小さく始める
     →1日10分、週1回、など「できそうな範囲」にハードルを下げることで、第一歩が踏み出しやすくなります。
  3. 一人で抱えない
     →同じような悩みを持つ人とつながったり、相談できる人を見つけることが大きな支えになります。

不安を抱えたままでも、大丈夫。

あなたの「変わりたい」という気持ちは、確かにここにあります。

そして、その気持ちがあるかぎり、人生はいつでも変えることができるのです。