パートやアルバイトで働いている方にとって、「〇〇万円の壁」という言葉はよく聞くと思います。
その中でも最近話題になっているのが「70万円の壁」。
今回は、「70万円の壁って何?」「どうすれば社会保険に入らずにすむの?」という疑問にわかりやすくお答えします。
70万円の壁とは?
「70万円の壁」とは、年収が約70万円(月収にすると約5万8,000円)を超えると、社会保険に加入しなければならない可能性があるという目安のことです。
これは、厚生年金や健康保険の「標準報酬月額」の最低ラインが月58,000円に設定されており、この金額を基準に社会保険料が発生するからです。
つまり、月に58,000円以上稼ぐ=年間約70万円を超えると、社会保険の対象になるかもしれない目安だと考えてください。
でも、「70万円」で決まるわけじゃない?
実は「70万円の壁」というのは、正式な制度名ではありません。
実際に社会保険に加入するかどうかは、「収入額」だけでなく、次のような条件に左右されます。
社会保険に加入が必要となる主な条件(2024年10月以降)
- 週の労働時間が20時間以上
- 年収が約106万円以上(月収88,000円以上)
- 勤務先の従業員が51人以上
- 2か月以上の勤務見込みがある
- 学生ではないこと
このように、「70万円を超えた=自動的に加入」というわけではありません。
しかし、このラインを超えてくると、条件により社会保険の加入が必要になるケースが増えるため、「目安」「注意ライン」として意識する人が多いのです。
よくある誤解に注意!
▪️「70万円以下なら絶対大丈夫!」
→ 実は、会社の規模や働き方によって、70万円以下でも対象になることがあります。
▪️「70万円を少し超えたくらいなら加入しなくていいのでは?」
→ 条件に当てはまれば、加入義務は発生します。
他の「壁」とどう違うの?

壁の名称 | 内容 |
---|---|
70万円の壁 | 年収約70万円超で、社会保険加入のサイン(目安)となるライン。 |
106万円の壁 | 一定の条件を満たすと社会保険に強制加入となるライン。 |
130万円の壁 | 配偶者の健康保険の扶養から外れ、自分で保険料を負担する必要が出てくるライン。 |
このように、「70万円の壁」は予兆のようなものですが、106万円を超えると原則として社会保険加入が必要になります。
扶養を外れるとどうなる?
① 配偶者の扶養から外れると、自分で国民健康保険・厚生年金を負担する必要があります。
これまで健康保険料や年金保険料がかからなかった方でも、月に1万円以上の負担が発生することも。
② 夫(または妻)の会社の健康保険の「被扶養者」でいるためには、年収130万円未満に抑える必要があります。
これを超えると、健康保険も年金もすべて自分で支払うことになります。
社会保険に入らず働くには?
加入したくない場合は、以下のような点に注意して調整が必要です。
- 月収を安定して58,000円以下にする
→ 時給 × 労働時間をしっかり確認しましょう。 - ボーナスや臨時収入も注意
→ 一時的に収入が増えると、年収が超えてしまう可能性があります。 - 複数の職場の合算にも注意
→ 同じ会社グループ内や派遣先によっては、勤務時間を合算して判断されるケースもあります。
社会保険に加入するメリットとデメリット
「70万円の壁」や「106万円の壁」は、“社会保険に入るかどうか”という判断に直結します。
では、実際に社会保険に加入すると、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
◆ 社会保険に加入するメリット
- 将来の年金額が増える
→ 厚生年金に加入することで、将来もらえる年金額が国民年金よりも多くなります。 - 健康保険の保障が手厚い
→ 傷病手当金(病気やけがで働けないときの所得補償)や出産手当金が支給されるのは、社会保険加入者だけの特典です。 - 保険料の半分を会社が負担してくれる
→ 国民健康保険や国民年金と異なり、保険料の約半分を会社が負担してくれます。 - 国民健康保険より安くなることもある
→ 世帯構成や収入によっては、国民健康保険よりも社会保険の方が負担が軽くなるケースもあります。
◆ 社会保険に加入するデメリット
- 手取り収入が減る
→ 給与から保険料(健康保険・厚生年金)が引かれるため、実際の手取りが下がります。 - 扶養から外れると、家計に影響が出る
→ 配偶者の扶養から外れると、これまで無負担だった保険料を自分で支払うことになり、家計へのインパクトがあります。 - 働く時間の調整が難しくなる
→ 扶養内でいたい人は、シフトや収入の調整に細かく気を使う必要が出てきます。
どちらがいいかは「働き方」と「将来設計」次第
社会保険に入ることは、単なる「損得」ではなく、働き方のスタイルや将来の安心をどう考えるかがカギになります。
たとえば…
- 「しっかり働いて将来の年金も増やしたい」なら、加入のメリットは大きいです。
- 「子育てや介護などで働ける時間が限られている」場合は、扶養内にとどまるほうが安心という方も多いでしょう。
まとめ|70万円の壁は「注意すべき目安」
「70万円の壁」は、「そろそろ社会保険の加入対象になるかも…」という目安です。
実際に加入が必要になるのは、年収106万円(=月収88,000円)を超えたあたりからですが、70万円を超えた段階で一度働き方や契約内容を見直しておくと安心です。
パートやアルバイトの方が損をしないためにも、「収入」「労働時間」「勤務先の規模」「扶養条件」など、総合的にチェックしておきましょう。
国の公的機関リンク
1. 社会保険の適用拡大について(厚生労働省)
- https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/
- 社会保険の適用拡大についての詳しい情報は、厚生労働省の特設ページをご確認ください。
2. 被扶養者の認定について(全国健康保険協会)
- https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3163/1959-230/
- 130万円の壁に関係する「扶養の条件」については、全国健康保険協会(協会けんぽ)のページで解説されています。
3. 厚生年金・健康保険の加入条件(日本年金機構)
- https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html
- 厚生年金・健康保険の加入基準や報酬月額の区分などは、日本年金機構の公式サイトで確認できます。
4. 標準報酬月額の等級表(日本年金機構)
- (パンフレット)https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.files/R07ryougaku.pdf
- 「70万円の壁」に関係する標準報酬月額(最下限:58,000円)については、日本年金機構の報酬等級表をご参照ください。
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