
Windows 11の大型アップデート(バージョン24H2)を適用したあと、
「なぜか画面が真っ暗に…」
「急に解像度が落ちた」
「グラフィックボードが認識されない」
といった深刻なトラブルが報告されています。こうした問題の多くは、「グラフィックドライバがアップデート後に壊れる」という現象が原因です。
特に、KB5060533やKB5060842などの更新を適用したあとに、署名のない古いドライバがブロックされて使えなくなるケースが多発しています。
この記事では、グラフィックドライバが破損した場合の具体的な症状から、再インストールの方法、根本的な解決策までをくどいほど丁寧に解説します。初心者の方でも安心して読めるよう、ステップごとに詳しくご紹介していきます。
【よくある症状】グラフィックドライバが壊れたときのサインとは?
アップデート後、次のような異常が見られる場合は、グラフィックドライバの破損や削除を疑ってください。
- パソコンの画面が真っ暗になり、音だけが聞こえる
- ロゴ表示後にフリーズ、もしくはWindowsの起動が異常に遅くなる
- ディスプレイの解像度が極端に低くなる(例:1024×768など)
- デバイスマネージャーで「標準VGAドライバ」と表示される
- NVIDIAやIntel、AMDの専用コントロールパネルが起動しない
- デバイスマネージャーに「エラーコード43」や「エラーコード31」が表示される
これらはすべて「グラフィックドライバが正しく読み込まれていない」ことが原因で起こります。
【原因】なぜアップデートでドライバが壊れるの?
この問題の背景には、Windowsのセキュリティ強化があります。
特に2025年6月~7月のアップデートでは、以下の変更が影響していると見られています。
セキュアブート対応の強化(KB5060533)
セキュリティ向上のため、Windowsは「ドライバにデジタル署名が正しく施されているかどうか」を厳密にチェックするようになっています。とくにSecure Boot(セキュアブート)が有効な環境では、Windowsカーネルモードで動作するすべてのドライバに、Microsoft公認の有効な署名が必須となります。
この署名は、ドライバが「信頼できる開発元によって改ざんなく提供されていること」を証明するものであり、万が一、署名が失効していたり、古すぎたり、まったく署名されていなかった場合は、Windowsがそのドライバの読み込み自体を拒否します。
アップデート前までは問題なく使えていた古いGPUドライバでも、新しいWindowsの署名チェック基準には適合しないことがあり、その結果、「ドライバが壊れた」「認識されない」「標準ドライバに置き換わった」という状態に陥ってしまうのです。
つまり、これはドライバ自体の品質や性能の問題というより、Windowsのセキュリティポリシーが厳しくなったことによる“強制的な安全対策”といえます。特にグラフィックドライバのような深くシステムに関わるものは、影響が顕著に表れます。
Windowsが自動で標準ドライバに戻す動作
もう一つ厄介なのが、Windowsが自動的に「標準VGAドライバ」などに戻してしまう動作です。
これは、アップデート後に本来のグラフィックドライバが互換性の問題や署名エラーによって無効化された場合、Windowsが「とりあえず画面を表示させるため」に汎用の基本ドライバを自動適用する仕組みです。
この標準ドライバは最低限の表示機能しか持っておらず、以下のような制限があります。
- 解像度が極端に低くなる(例:1024×768固定)
- 外部ディスプレイが認識されない
- 動画再生やゲームなどのGPU支援機能が使えない
- NVIDIA/AMD/Intelの専用ツールが使用不可になる
ユーザー側に通知がなく、見た目には「ドライバが壊れたように見える」ため、原因に気づきにくいのもこの動作の厄介な点です。
このようなときは、Windowsが“勝手に戻した”のではなく、“安全性のために代替を当てた”という背景を理解し、手動で正しいドライバを再インストールする必要があります。
また、繰り返し自動的に置き換わってしまう場合は、「Windowsによるドライバの自動更新」を停止する設定も検討するとよいでしょう。
特に影響が出ているのは以下の環境です。
対象ハードウェア | 備考 |
---|---|
Intel UHD Graphics 第11世代以前 | 古いチップセットでの発生例多数 |
NVIDIA GeForce 900シリーズ以前 | 最新ドライバの署名が更新されていないケースあり |
AMD Radeon RX 400番台以前 | 廃番扱いのGPUで署名未更新の場合あり |
これらのグラフィックチップは、すでにサポート終了やドライバの更新停止となっていることが多く、Windows側のセキュリティ強化により「未署名ドライバ」と判断されてブロックされやすくなっています。
特に2025年以降のアップデートでは、セキュアブートとドライバ署名の整合性チェックが強化されているため、「以前は問題なく使えていたのに、突然表示されなくなった」と感じる方も少なくありません。
したがって、該当する環境では、公式サイトからの最新ドライバのダウンロードや、ドライバ署名の状態を確認することが、トラブル回避の第一歩になります。古いPCを継続利用している場合は、定期的に互換性のチェックを行うことも重要です。
【対処法①】まずはセーフモードで起動して状況確認
画面が真っ暗、または正常起動できない場合は、まずセーフモードで立ち上げてみましょう。
セーフモードの入り方(例:Windows 11)
- 電源ボタンを3回強制オフ(長押し)して回復モードへ入る
- 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「スタートアップ設定」→「再起動」
- F4キーでセーフモード(ネットワークなし)を選択
セーフモードで正常に起動できれば、グラフィックドライバの破損が確定的です。
【対処法②】Display Driver Uninstaller(DDU)で一度完全に削除する
壊れたドライバや古いファイルが残っていると、新しいドライバのインストールに失敗することがあります。そこで有効なのが「Display Driver Uninstaller(DDU)」という無料ツールです。
手順
- 公式サイトからDDUをダウンロード
- セーフモードで起動
- DDUを実行し、「GPUドライバを削除して再起動」を選択
- ドライバを完全に削除し、PCを再起動
DDUは非常に強力なクリーンアップツールで、通常のアンインストールでは残ってしまう古いドライバの断片やレジストリ情報までも徹底的に削除してくれます。
こうした不要なデータが残っていると、新しいドライバのインストールがうまくいかず、再起動時にまた標準ドライバに戻ってしまうという悪循環に陥ることがあります。
そのため、不具合が起きた場合は「削除してから再インストール」という流れがとても重要になります。初めて使う方でも、セーフモードで起動して画面の指示通りに操作すれば、安全に進めることができます。
【対処法③】メーカー公式サイトからドライバを直接入手・インストール
DDUでクリーンにしたあとは、必ずGPUメーカーの公式サイトから最新版ドライバを入手してください。Windows Updateでは古いバージョンが配信されることがあるため、手動ダウンロードが確実です。
【主なダウンロード先リンク先】
インストール後は念のため、再起動してください。
【対処法④】自動更新を一時停止する
せっかく入れたドライバが、Windows Updateによって再び上書きされることを防ぐために、以下の方法で「ドライバ自動更新のブロック」を検討します。
方法の一例
- 「グループポリシーエディタ(gpedit)」から制御
- 「ドライバを含めないようにWindows Update設定を変更」
- または、Microsoftが提供する「Show or Hide Updates」ツールを使用して、特定の更新を非表示にする
これらの設定を行っておくことで、せっかく手動でインストールした安定版ドライバが、再びWindows Updateによって強制的に上書きされてしまうのを防ぐことができます。
特に古いGPUや独自仕様のドライバを使用している場合は、自動更新がトラブルの原因になることが多いため、積極的にブロックを検討すべき項目です。
ただし、自動更新の停止はセキュリティアップデートまで止めてしまう可能性があるため、必ず限定的にドライバのみに適用される設定にしてください。
【補足】ドライバの復元ポイントがあるならロールバックも検討
アップデート前に「復元ポイント」が有効になっていた場合は、それを使ってドライバの状態を巻き戻すことが可能です。
【まとめ】焦らず丁寧に対応すれば直せるトラブルです!
Windows Update後にグラフィックドライバが壊れてしまうのは、意外とよくあるトラブルです。
しかし、慌てなくても大丈夫です。
- セーフモードで起動できるか確認
- DDUで古いドライバを削除
- メーカー公式ドライバを手動でインストール
- 自動更新の停止を検討
これらの手順を踏むことで、画面が真っ暗になったり、解像度が狂ったりする不具合をきちんと直すことができます。
アップデートのたびに不安になるのはつらいものですが、対処法を知っておけば落ち着いて対応できます。
大切なのは「正しい情報に基づいて、丁寧にひとつずつ手順を踏むこと」です。
この記事が、あなたのパソコンを元通りにする一助となれば幸いです。
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