Windowsの更新プログラムがインストールされ、無事に終わったはずの翌朝──。
電源ボタンを押しても全く反応せず、画面も真っ暗、ファンの音もせず沈黙したまま…。まるで「完全に壊れた」と思ってしまうような恐ろしい状況に直面した方もいるのではないでしょうか。
実はこのような症状は、Windows Update直後にまれに発生する特殊なトラブルの一つです。
本記事では、突然「電源が入らなくなったPC」を復活させる方法を、できるだけ自宅で実践できる順番で紹介します。
なぜ更新直後に電源が入らなくなるのか?

Windows Updateによる電源トラブルは、いくつかの要素が絡み合って発生します。まずは原因を整理します。
■ Windows UpdateがBIOS/UEFIを更新している場合がある
Windows Update後の“無反応”は、OSだけでなくデバイス用ファームウェア(UEFI/BIOS・組込コントローラ)が更新された直後に起きることがあります。
これらの更新は画面が真っ暗のまま数分〜十数分続き、ファン無音・ランプ最小で進むことも。途中で電源を切ると故障に直結するため、更新中は触らないのが正解です。
- BIOS更新中は非常に繊細で、バッテリー切れやスリープ移行が重なると破損するリスクがある
- 万が一、BIOS更新に失敗すると、起動自体ができなくなる
更新直後の「電源すら入らない」という症状は、実はBIOS関連の不具合が原因のことも多いのです。
■ 帯電・保護回路の作動によるシャットダウン
最近のPCは、内部で異常が検出されると自己保護のために完全に電源を遮断する設計が多く採用されています。
保護回路が作動する主な要因:
- 静電気の帯電(内部回路に電荷が蓄積)
- 過電流・過電圧の検出
- USBポートや外部機器のショート
- 電源アダプターの過負荷
こうした場合、故障していなくても完全無反応に見えるのが特徴です。
電源が入らないPCを復活させる6つの方法
では、実際の復旧手順を優先度順に紹介していきます。
① 電源ケーブル・アダプターを確認する
- ACアダプターが正しく挿さっているか確認
- コンセントを別の壁の差込口に切り替える
- 可能であれば、予備のアダプターや電源ケーブルを試す
※ アダプター自体の異常も意外に多く、これだけで復活する事例もあります。
② 電源リセット(帯電除去/強制再起動)
- ACアダプター/電源ケーブルを外す(デスクトップは主電源もOFF)
- 周辺機器は全て外す(USB/HDMI/ドック/SD)
- 電源ボタンを15〜30秒長押し(機種により“強制再起動”として働く場合あり)
- 5分放置 → ACのみ接続 → 電源投入
※ Li-ion の意図的“完全放電”は推奨されません。効かない場合は、次のベンダー別電源/ECリセットを実施。
③ USB機器・外部モニターを外してみる
一部のUSB機器や外部接続機器が起動シーケンスに悪影響を与える場合があります。
- 外付けハードディスク
- USBハブ
- HDMIモニター
- ドッキングステーション など
まずは何も接続しない完全な単体状態で電源を入れてみてください。
併せてサージ保護タップや延長コードを外し、壁のコンセントへ直差しで試すと、給電起因の不具合を切り分けできます。
④ バッテリーの完全放電・交換(ノートPC)
ノートPCの場合、バッテリーの経年劣化や充電制御回路の異常で完全に反応しなくなることがあります。
- 長期間放置して完全放電を試みる(放電に数日かかることも)
- 一部機種ではバッテリーを交換することで復旧する事例も報告されています
※ 内蔵バッテリー型は個人で交換できないことが多いので注意。
⑤ CMOSリセット(上級者向け)
自作PCやデスクトップPC限定の方法ですが、マザーボード設定の初期化で復活することもあります。
CMOS(シーモス)は、パソコン内部にある小さな記憶領域で、BIOS(UEFI)の設定情報を保存しています。日付や時刻、起動順序、ハードウェア構成などが記録されており、電池によって情報が保持されています。
もしCMOS情報が壊れたり異常になると、起動トラブルを引き起こすことがあります。そのため「CMOSリセット(初期化)」を行うことで、不具合を解消できることがあります。
CMOSリセット手順
- 電源ケーブルを抜き、マザーボードの「CMOSクリアジャンパ」を短絡
- もしくは、ボタン電池(CR2032)を10分ほど外しておく
- 元に戻して再度起動を試みる
注意:ノート/一体型の分解はリスクが高く、メーカー保証の対象外になる場合があります。分解前にEC/電源リセットやベンダー提供のリカバリー手順を先に試してください。
⑥ BIOS/UEFIの自動復旧機能(メーカー別)
最近のメーカー製PCには、BIOS/UEFI自体を自動で修復する仕組みが搭載されています。
BIOS(バイオス)は、パソコンの電源を入れた直後に最初に動く「基本の制御プログラム」です。
CPUやメモリ、ストレージなどのハードウェアが正しく動くように設定・管理しています。
最近では「UEFI(ユーイーエフアイ)」と呼ばれる新しい方式も使われていますが、基本の役割は同じです。
→ BIOSを安全に更新する方法はこちらをクリック↓
「【BIOSって何?】わかりやすいBIOSアップデートの安全なやり方 と注意点」
| メーカー | 自動復旧機能 |
|---|---|
| DELL | 自動BIOSリカバリー |
| Lenovo | ノボボタンからBIOS復旧 |
| HP | BIOS Recovery(Win+Bキー長押し) |
| ASUS | BIOS Flashback |
メーカーごとに方法が異なるため、取扱説明書や公式サポート情報を確認しましょう。
【参考】よくある似た症状と解決事例
- 電源は入るが画面真っ暗 → 実は外部モニター優先設定だった
- バッテリーが完全放電 → アダプター交換で復活
- USBハブのショート → USB全抜きで復活
- サージ保護タップの内部断線 → 直接コンセント接続で復活
【安全対策】今後このような事態を防ぐには?
事前の備えもとても重要です。
■ BIOS更新中は細心の注意を
- バッテリー残量を十分に確保
- スリープ移行禁止
- 安定したWi-Fiや有線LAN利用
■ サージ保護の利用
- 雷や電源変動から守る「サージ保護タップ」は有効
■ データの定期バックアップ
- 最悪、PCが故障してもデータを守る備えをしておく
【Q&A】よくある疑問に答えます
Q. 電源ボタンを押しても全く無反応。これって完全に故障ですか?
A. 必ずしも故障とは限りません。
本記事で紹介した「放電リセット」「アダプター交換」「USB外し」だけで復旧するケースは非常に多くあります。最近のPCは自己保護の安全設計が進んでおり、誤作動による保護状態が解除できれば復活する場合も十分考えられます。
Q. 電源ボタン長押しは何度でも試していいの?
A. 問題ありません。ただし毎回5分程度の待機を挟み、ACのみ接続で試すと成功率が上がります。効かない場合はベンダー別リセットを試してみてください。
Q. BIOSリカバリーは自分でやっても大丈夫?
A. 自動修復機能が用意されていれば自己操作可能です。
例えばLenovoのノボボタンやHPのWin+B起動などはユーザー向けの設計です。ただし、操作手順を誤ると逆に状態が悪化するリスクもあるため、公式の手順書をよく読んだ上で慎重に実施してください。
Q. Windows Updateが原因と断定できるの?
A. タイミングが合致していれば関連の可能性は高いです。
特にBIOS更新が含まれていた場合は疑ってよいでしょう。ただし、偶然同じ時期にハードウェア故障が重なったケースもあり得るため、落ち着いて順番に切り分けを行うのが重要です。
Q. 放電でもダメだったら、次はどこを疑えばいいの?
A. 電源ユニット本体、マザーボードの電源系統障害が次の候補です。
特にデスクトップPCでは電源ユニット(電源BOX)が原因となる割合が高いです。ノートPCならバッテリー制御基板の異常もあります。
今回紹介したQ&Aは、実際に多くのユーザーが悩んでいる「現場の疑問」を元に整理しています。電源が全く入らない状態になると、つい慌ててしまいがちですが、原因の多くは復旧可能な軽微なトラブルであることも多いです。ひとつずつ落ち着いて確認していけば、意外なところで突破口が見つかるかもしれません。
追記:ベンダー別 “電源/EC/BIOS リセット” クイック表
| メーカー | リセットの一例(機種により異なる) |
|---|---|
| Surface | 電源長押し20秒 → 10秒待機 → 起動。それでも不可なら 電源15秒 + 音量↑15秒同時長押し → 10秒待機 → 起動。 |
| Lenovo | 本体側面/底面のリセットホール(ピンで短押し)→ AC接続で起動。 |
| HP | Win + Bを押しながら電源ボタン長押し → BIOS Recovery 画面。 |
| DELL | Flea power drain:AC/バッテリー取り外し → 電源ボタン30秒長押し → AC接続で起動。 |
| ASUS | 機種によりCMOSクリア/BIOS Flashback対応。ノートは電源長押し40秒でECリセットの場合あり。 |
※ 正式手順は各社マニュアルを優先してください。
【まとめ】
Windows更新後に突然電源が入らなくなる症例は、まさに「全く動かないからこそ原因がわからない」難しいトラブルです。ですが、多くは帯電・保護回路の作動・周辺機器の影響など、実は物理的な故障ではないケースも多く含まれます。
あきらめる前に、ぜひここで紹介した方法を一つずつ試してみてください。意外なきっかけで復活する可能性も十分あります。
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