Windowsの更新プログラムがインストールされ、無事に終わったはずの翌朝──。
電源ボタンを押しても全く反応せず、画面も真っ暗、ファンの音もせず沈黙したまま…。まるで「完全に壊れた」と思ってしまうような恐ろしい状況に直面した方もいるのではないでしょうか。
実はこのような症状は、Windows Update直後にまれに発生する特殊なトラブルの一つです。
本記事では、突然「電源が入らなくなったPC」を復活させる方法を、できるだけ自宅で実践できる順番で紹介します。
なぜ更新直後に電源が入らなくなるのか?

Windows Updateによる電源トラブルは、いくつかの要素が絡み合って発生します。まずは原因を整理します。
■ Windows UpdateがBIOS/UEFIを更新している場合がある
最近のWindows Updateでは、OSの更新だけでなく、**マザーボードのファームウェア(BIOS/UEFI)**を自動で更新する場合があります。特にメーカー製のノートPCやビジネス向けPCでは頻繁に行われています。
- BIOS更新中は非常に繊細で、バッテリー切れやスリープ移行が重なると破損するリスクがある
- 万が一、BIOS更新に失敗すると、起動自体ができなくなる
更新直後の「電源すら入らない」という症状は、実はBIOS関連の不具合が原因のことも多いのです。
■ 帯電・保護回路の作動によるシャットダウン
最近のPCは、内部で異常が検出されると自己保護のために完全に電源を遮断する設計が多く採用されています。
保護回路が作動する主な要因:
- 静電気の帯電(内部回路に電荷が蓄積)
- 過電流・過電圧の検出
- USBポートや外部機器のショート
- 電源アダプターの過負荷
こうした場合、故障していなくても完全無反応に見えるのが特徴です。
電源が入らないPCを復活させる6つの方法
では、実際の復旧手順を優先度順に紹介していきます。
① 電源ケーブル・アダプターを確認する
- ACアダプターが正しく挿さっているか確認
- コンセントを別の壁の差込口に切り替える
- 可能であれば、予備のアダプターや電源ケーブルを試す
※ アダプター自体の異常も意外に多く、これだけで復活する事例もあります。
② 長押し放電を試す(内部帯電の除去)
PC内部に蓄積された帯電をリセットする方法です。
手順
- PCの電源ケーブル・アダプターを外す
- 可能ならバッテリーも外す(内蔵型はそのままでOK)
- USB機器・外部モニター・周辺機器を全て取り外す
- 電源ボタンを15秒〜30秒長押しする
- そのまま数分放置後、再度アダプターだけ接続して起動を試みる
※ この放電だけで復活する事例はかなり多く報告されています。
③ USB機器・外部モニターを外してみる
一部のUSB機器や外部接続機器が起動シーケンスに悪影響を与える場合があります。
- 外付けハードディスク
- USBハブ
- HDMIモニター
- ドッキングステーション など
まずは何も接続しない完全な単体状態で電源を入れてみてください。
④ バッテリーの完全放電・交換(ノートPC)
ノートPCの場合、バッテリーの経年劣化や充電制御回路の異常で完全に反応しなくなることがあります。
- 長期間放置して完全放電を試みる(放電に数日かかることも)
- 一部機種ではバッテリーを交換することで復旧する事例も報告されています
※ 内蔵バッテリー型は個人で交換できないことが多いので注意。
⑤ CMOSリセット(上級者向け)
自作PCやデスクトップPC限定の方法ですが、マザーボード設定の初期化で復活することもあります。
CMOS(シーモス)は、パソコン内部にある小さな記憶領域で、BIOS(UEFI)の設定情報を保存しています。日付や時刻、起動順序、ハードウェア構成などが記録されており、電池によって情報が保持されています。
もしCMOS情報が壊れたり異常になると、起動トラブルを引き起こすことがあります。そのため「CMOSリセット(初期化)」を行うことで、不具合を解消できることがあります。
CMOSリセット手順
- 電源ケーブルを抜き、マザーボードの「CMOSクリアジャンパ」を短絡
- もしくは、ボタン電池(CR2032)を10分ほど外しておく
- 元に戻して再度起動を試みる
※ ノートPCや一体型PCでは分解が必要になるため一般ユーザーは避けましょう。
⑥ BIOS/UEFIの自動復旧機能(メーカー別)
最近のメーカー製PCには、BIOS/UEFI自体を自動で修復する仕組みが搭載されています。
BIOS(バイオス)は、パソコンの電源を入れた直後に最初に動く「基本の制御プログラム」です。
CPUやメモリ、ストレージなどのハードウェアが正しく動くように設定・管理しています。
最近では「UEFI(ユーイーエフアイ)」と呼ばれる新しい方式も使われていますが、基本の役割は同じです。
→ BIOSを安全に更新する方法はこちらをクリック↓
「【BIOSって何?】わかりやすいBIOSアップデートの安全なやり方 と注意点」
メーカー | 自動復旧機能 |
---|---|
DELL | 自動BIOSリカバリー |
Lenovo | ノボボタンからBIOS復旧 |
HP | BIOS Recovery(Win+Bキー長押し) |
ASUS | BIOS Flashback |
メーカーごとに方法が異なるため、取扱説明書や公式サポート情報を確認しましょう。
【参考】よくある似た症状と解決事例
- 電源は入るが画面真っ暗 → 実は外部モニター優先設定だった
- バッテリーが完全放電 → アダプター交換で復活
- USBハブのショート → USB全抜きで復活
- サージ保護タップの内部断線 → 直接コンセント接続で復活
【安全対策】今後このような事態を防ぐには?
事前の備えもとても重要です。
■ BIOS更新中は細心の注意を
- バッテリー残量を十分に確保
- スリープ移行禁止
- 安定したWi-Fiや有線LAN利用
■ サージ保護の利用
- 雷や電源変動から守る「サージ保護タップ」は有効
■ データの定期バックアップ
- 最悪、PCが故障してもデータを守る備えをしておく
【Q&A】よくある疑問に答えます
Q. 電源ボタンを押しても全く無反応。これって完全に故障ですか?
A. 必ずしも故障とは限りません。
本記事で紹介した「放電リセット」「アダプター交換」「USB外し」だけで復旧するケースは非常に多くあります。最近のPCは自己保護の安全設計が進んでおり、誤作動による保護状態が解除できれば復活する場合も十分考えられます。
Q. 電源ボタン長押しは何度でも試していいの?
A. 原則何度でも構いません。
電源ボタンの長押し(15〜30秒)は単なる帯電除去のため、繰り返しても問題ありません。ただし、一回の放電後は最低5分ほど時間をおいて試すのがおすすめです。
Q. BIOSリカバリーは自分でやっても大丈夫?
A. 自動修復機能が用意されていれば自己操作可能です。
例えばLenovoのノボボタンやHPのWin+B起動などはユーザー向けの設計です。ただし、操作手順を誤ると逆に状態が悪化するリスクもあるため、公式の手順書をよく読んだ上で慎重に実施してください。
Q. Windows Updateが原因と断定できるの?
A. タイミングが合致していれば関連の可能性は高いです。
特にBIOS更新が含まれていた場合は疑ってよいでしょう。ただし、偶然同じ時期にハードウェア故障が重なったケースもあり得るため、落ち着いて順番に切り分けを行うのが重要です。
Q. 放電でもダメだったら、次はどこを疑えばいいの?
A. 電源ユニット本体、マザーボードの電源系統障害が次の候補です。
特にデスクトップPCでは電源ユニット(電源BOX)が原因となる割合が高いです。ノートPCならバッテリー制御基板の異常もあります。
今回紹介したQ&Aは、実際に多くのユーザーが悩んでいる「現場の疑問」を元に整理しています。電源が全く入らない状態になると、つい慌ててしまいがちですが、原因の多くは復旧可能な軽微なトラブルであることも多いです。ひとつずつ落ち着いて確認していけば、意外なところで突破口が見つかるかもしれません。
【まとめ】
Windows更新後に突然電源が入らなくなる症例は、まさに「全く動かないからこそ原因がわからない」難しいトラブルです。ですが、多くは帯電・保護回路の作動・周辺機器の影響など、実は物理的な故障ではないケースも多く含まれます。
あきらめる前に、ぜひここで紹介した方法を一つずつ試してみてください。意外なきっかけで復活する可能性も十分あります。
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