
2025年7月に配信されたWindows 11の更新プログラム「KB5062552(23H2)」および「KB5062553(24H2)」の適用後、一部のユーザーから
「PCが起動しなくなった」
「BIOS設定が初期化された」
「ファームウェアが破損した」
という報告が相次いでいます。
これまでにもWindowsアップデートとBIOSの衝突によるトラブルは散発的にありましたが、今回は複数のメーカー・構成で再起動ループやファームウェア異常など、深刻な症状が確認されています。
この記事では、BIOS(UEFI)とWindowsアップデートの関係、なぜこのような事態が起こるのか、そして万が一に備えるための対策について、丁寧にわかりやすく解説します。
BIOS(UEFI)とは?アップデートとどう関係するのか
BIOS(バイオス)とは、PCの電源を入れたときに最初に起動するソフトウェアで、マザーボードに組み込まれている「基本制御プログラム」です。近年はUEFI(ユーイーエフアイ)という進化版が主流ですが、役割は同じです。
WindowsアップデートがBIOSに直接干渉することは原則ありませんが、以下のような場合に「間接的に影響」することがあります。
- セキュリティ強化による「ブート方式の変更」
- TPM 2.0やセキュアブートなど、BIOSと連動した機能の変更
- 電源再起動時の状態保存に関わる「ファームウェア設定の競合」
これらが原因で、アップデート直後にBIOS設定が強制リセットされたり、最悪の場合はファームウェアが破損する事例も報告されています。
実際に発生している症状とユーザー報告
KB5062552 / KB5062553適用後に、次のような深刻な症状が各所で報告されています。
1. BIOS設定が初期化されてしまう
再起動後に突然BIOSが「初期状態」に戻り、ブート優先順位やセキュアブートの設定、XMP(メモリ設定)などがリセットされていたというケースが多発しています。
特に以下のような設定が戻っているという報告が多いです。
- 起動順序(HDD/SSDが認識されない)
- TPMが無効に戻っている
- セキュアブートの状態が変更されている
【解説】
この現象は、アップデート後に「突然Windowsが起動しなくなった」「ブートデバイスが見つからない」という形で発覚することが多く、トラブルの原因がBIOS設定の初期化だと気づくまでに時間がかかることもあります。特に起動ディスクの順序が変わっていたり、レガシーからUEFIブートに切り替わってしまうことで、SSDが認識されないといったケースも確認されています。
また、BIOS内の設定がリセットされることで、普段は意識していなかったセキュリティ機能(TPMやVirtualization、Secure Boot)がオフになり、BitLockerが解除されたり仮想環境が起動しないなど、二次的な問題を引き起こすこともあります。
2. BIOSが壊れて再起動不能
一部のGIGABYTE製マザーボードでは、ファームウェアが破損し、BIOS自体が起動しない「ブラックスクリーン状態」に陥るケースも確認されています。これは自動修復も通用せず、BIOS書き換え作業が必要になるほどの致命的な状態です。
BIOS破損や初期化が起きる理由とは?
なぜこのような重大なトラブルがWindowsアップデート直後に起きるのでしょうか?
理由①:Windowsがセキュアブート設定を再確認・強制するため
KB5062553などの累積更新プログラムでは、セキュリティ設定の整合性チェックが強化されており、Windowsが起動時にBIOSの設定と矛盾があると、自動で修正しようとするケースがあります。これが「設定初期化」につながることがあります。
理由②:BIOSバージョンが古く、アップデートと互換性が低い
2020年以前のBIOSを使用しているPCや、メーカー独自のカスタマイズが加えられたマザーボードでは、最新のWindowsとの連携がうまくいかず、更新時にトラブルが発生しやすくなっています。
理由③:電源障害や再起動時の異常終了
アップデート適用中に電源が一時的に切れる、または再起動が異常終了することで、BIOSの設定ファイルが壊れるリスクもあります。これは家庭用PCでもまれに起こる問題です。
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影響を受けやすいPCの傾向
以下のような構成のPCで、今回の問題が発生しやすい傾向にあります。
PC構成・メーカー | 理由 |
---|---|
GIGABYTE製マザーボード | BIOSの互換性がアップデートに追いついていない |
富士通・マウスコンピューター製PC | 独自設定がリセットされやすい |
古いUEFI(2019年以前)を使用しているPC | セキュアブート・TPMとの整合性でトラブル |
UPS(無停電電源装置)なしで更新したPC | 再起動中の電力トラブルでBIOS破損の危険 |
これらの構成に共通しているのは、BIOSの更新が長期間行われていないことや、独自の制御ソフトやセキュリティ機構が有効になっていることです。特に日本国内メーカー製PCでは、Windowsアップデートのたびにファームウェアとの整合性に問題が生じやすく、設定が初期化されたり、最悪の場合BIOSが破損するリスクもあります。
また、UPS(無停電電源装置)を使わずにアップデートを実行していると、アップデート中の電源瞬断がBIOS書き換えに影響を与えるケースも報告されています。とくにデスクトップPCでは、電源トラブルがそのまま致命的な障害につながることがあるため、注意が必要です。
万が一に備える4つの対策
被害を未然に防ぐため、以下の対策をぜひ実施しておいてください。
- BIOSのバージョンを最新にしておく
メーカー公式サイトで確認し、慎重にアップデートしておきましょう。 - BIOS設定のスクリーンショットを残しておく
再設定が必要になったときに大変役立ちます。 - 無停電電源装置(UPS)の導入を検討する
特に自作PCやデスクトップでは電源保護が重要です。 - 回復ドライブとシステムバックアップの作成
Windowsが起動しない状態でも、復元できるように準備しておきましょう。
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最近のWindowsアップデートは、従来のような「単なるセキュリティ更新」ではなく、システムの基盤部分にも影響を及ぼす変更が含まれています。とくにセキュアブートやTPMなど、BIOSレベルの機能と連動する仕様変更が増えており、アップデートを実行する際は、OSだけでなくPC本体のファームウェアや電源環境にも意識を向ける必要があります。
アップデート=安全という固定観念を捨て、事前準備や環境確認を行うことが、これからのWindowsユーザーにとって不可欠なリスク管理となってきているようです。
まとめ
アップデート前の「ひと手間」が未来を守る
Windowsアップデートはセキュリティのために欠かせないものですが、その裏でBIOSやファームウェアに予期せぬ影響が出るリスクもあります。今回のKB5062552 / KB5062553のようなケースでは、たった一つの設定ミスや古い構成が、PCを使えなくなるほどの事態を招くことがあります。
「うちは大丈夫」と油断せず、できる範囲での準備と対策を行っておくことで、大切なデータや作業環境を守ることができます。次のアップデート前に、ぜひ一度、ご自身のPC環境を見直してみてください。
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