
「出勤前に共有フォルダーを開こうとしたら、エラーが出てアクセスできない…」――月曜朝やアップデート直後に増える典型的なトラブルです。本記事は、Windows 11(24H2以降)を前提に、最短で原因を切り分けるチェック順と安全な解決手順をまとめました。5~10分で“どこが詰まっているか”を把握できます。
エラー「0x80070035」とは?
0x80070035 は、Windowsがネットワーク上の共有パス(\\サーバ名\共有名 など)に到達できない/見つけられないときに表示します。実際の原因は「場所が無い」だけではなく、名前解決(DNS/NetBIOS/mDNS)不全、認証・ポリシー(パスワード保護共有、SMBサイン/暗号)、ファイアウォールやVPNの経路制御など多岐にわたります。
《表示例》
ネットワークパスが見つかりません。
エラーコード:0x80070035
まずはここから:最短チェック
- ネットワークプロファイルを「プライベート」に(共有可の前提づくり)
- 共有の詳細設定で「ネットワーク探索」「ファイルとプリンターの共有」をオン
- FWの許可:ファイルとプリンターの共有 (SMB-In) がプライベートで許可か確認
- IP直打ち:アドレスバーに
\\192.168.x.x\共有名を入力(名前解決を迂回) - 資格情報マネージャーに
\\サーバ名(またはIP)+ユーザー/パスを保存 - VPN・ルーター:スプリットトンネル/AP分離の設定を一時的に見直し
これで解決するケースが大半です。ダメな場合は、以下の詳細手順で詰まり箇所を特定します。
よくある原因と対策(2025年11月版)
| 原因(傾向) | 対策(要点) |
|---|---|
| ネットワークが「パブリック」 | 設定 → ネットワークとインターネット →(接続名)→ ネットワーク プロファイル →「プライベート」 |
| ネットワーク探索/共有が無効 | 設定 → ネットワークとインターネット → 高度なネットワーク設定 → 共有の詳細設定 でオン |
| ファイアウォールがブロック | Windows セキュリティ → 許可されたアプリ でファイルとプリンターの共有 (SMB-In)がプライベート許可 |
| PC名で解決できない | \\IP\共有名 でアクセス/ping IP で疎通確認/資格情報を保存 |
| NetBIOS/LLMNR依存 | 可能ならDNS(ルーターDHCP予約)やmDNS(.local)へ移行。必要時のみNetBIOS有効 |
| VPN経路・ポリシー | 一時的にVPN切断 or ローカルLAN許可/スプリットトンネル設定 |
| SMBバージョン不一致(旧NAS) | SMB 2.0/3.xへ更新。SMB1は短時間の切り分けのみ |
詳細手順(Windows 11 最新UIで解説)
1. ネットワークを「プライベート」に
設定 → ネットワークとインターネット →(Wi-Fi/イーサネット)→ ネットワーク プロファイル →「プライベート」を選択。これで同一ネットワーク内の端末探索・共有が許可されます。
2. 共有の詳細設定を有効化
設定 → ネットワークとインターネット → 高度なネットワーク設定 → 共有の詳細設定で、以下をオン:
- ネットワーク探索
- ファイルとプリンターの共有
(補足)旧UIの コントロールパネル → ネットワークと共有センター → 共有の詳細設定 でも設定可能です。
3. Windows Defender ファイアウォールで許可
Windows セキュリティ → ファイアウォールとネットワーク保護 → 許可されたアプリを開き、設定の変更を押して以下を確認:
- ファイルとプリンターの共有 (SMB-In) が「プライベート」で許可
- ネットワーク探索(NB-Name-In / SSDP-In / UPnP-In 等)が必要に応じて許可
項目が見当たらない場合は「別のアプリの許可」で追加します。
4. IPアドレスで直接アクセス(名前解決を回避)
エクスプローラーのアドレスバーに \\192.168.x.x\共有名 を入力してEnter。
共有元PCのIPは、共有元で ipconfig を実行しIPv4アドレスを確認します。
疎通確認:ping 192.168.x.x が応答すれば物理/ルーティングは到達しています。
認証を安定させるには、コントロールパネル → 資格情報マネージャー → Windows 資格情報 → 追加で \\サーバ名(またはIP)にユーザー/パスワードを保存します。
5. NetBIOSへの依存を減らす(推奨:DNS/mDNSへ移行)
将来的にNetBIOS/LLMNRは縮退傾向です。ルーターのDHCP予約でホスト名とIPを固定(DNS化)、もしくはmDNS(PC名.local)の活用を検討しましょう。どうしても必要な環境のみ、アダプターの詳細 → IPv4 → 詳細設定 → WINSで「NetBIOS over TCP/IP」を有効化します(最終手段)。
6. VPN・Wi-Fi・ルーター設定を見直す
- VPN:一時的に切断、またはローカルLANへのアクセス許可/スプリットトンネルを有効に
- Wi-Fi/ルーター:AP分離(プライバシーセパレーター)がオンだと端末間通信不可。オフに
- 再起動:クライアント/共有元PC、ルーター/スイッチを順番にリブート
7. サービス状態の確認(見落としがち)
services.msc を開き、以下が実行中(自動)か確認
- Function Discovery Provider Host
- Function Discovery Resource Publication
停止しているとPC名探索が機能しません。開始後に再テストします。
SMB 1.0 は“短時間の切り分け用”(原則は機器の更新)
古いNAS/機器がSMB 1.0/CIFSしか話せない場合、Windows 11では既定で無効のため接続できません。最終手段として短時間だけ有効化し、原因がSMB1依存だと分かったら即オフに戻すのが安全です。恒久対策はNASのファーム更新や機種更新(SMB 2.0/3.x対応)です。
有効化の手順(最終手段)
コントロールパネル → プログラムと機能 → Windows の機能の有効化または無効化 で「SMB 1.0/CIFS ファイル共有のサポート」にチェック → 再起動。検証後は必ずオフへ戻してください。
注意:SMB1は既知の脆弱性が多く、業務端末では推奨されません。NAS側のSMB3/サイン対応を優先しましょう。
【24H2以降の補足】最近増えた“見えない壁”
- パスワード保護共有:匿名アクセスが遮断される環境が増加。ユーザー名+パスワードでの接続/資格情報保存が安定
- SMBサイン/暗号の必須化:企業PCや一部セキュリティ製品の方針で、旧NASが非対応だと失敗。NASのSMB3・サイン対応をONに
- 大型更新で設定が初期化:アップデート後にプロファイルがパブリック化/探索がオフ化されることあり。再確認をルーチン化
出勤前チェックリスト(保存版)
| チェック項目 | 状態 |
|---|---|
| ネットワークプロファイルがプライベート | □ |
| 共有の詳細設定で探索/共有がオン | □ |
| ファイルとプリンターの共有 (SMB-In)がプライベート許可 | □ |
\\IP\共有名で到達/ping応答あり | □ |
| 資格情報マネージャーに正しい認証情報を保存 | □ |
| 旧機器はSMB2/3へ更新(SMB1は短時間のみ) | □ |
| VPNのローカルLAN許可/スプリットトンネルを確認 | □ |
それでも解決しないとき
- 共有元PCが起動し共有が有効か(共有名/パーミッション)
- LANケーブル・スイッチ・ルーターを再接続/再起動
- セキュリティソフトの一時停止(検証後は必ず戻す)
- グループポリシーやMDMでの制限(SMBサイン必須等)の有無をIT管理者に確認
重要:切り分けのために緩めた設定(SMB1有効化やFW例外の追加など)は、復旧後に必ず元へ戻すことを推奨します。恒久対策は、機器ファーム更新・SMB3対応・資格情報の適正化です。
- SMB サイン必須化:Win11 24H2(Pro/Enterprise/Education 等)は既定でサイン必須。古いNASやルーターUSB共有がサイン未対応だと0x80070035になりやすい。
→ NAS側で SMB3+署名(signing)を有効に/FWや監査の都合でやむを得ず無効化する場合はポリシー判断で(自己責任)。 - ゲスト(匿名)アクセスが既定で無効:24H2はInsecure guest logonsがオフ。匿名共有前提の機器は認証を作成し、資格情報マネージャーに保存。
→ どうしても必要なら一時的にポリシーで許可(検証後は戻す)。 - 2025/9 の既知問題(SMBv1):9月の更新後、SMBv1 共有に接続できない不具合が発生。プレビュー更新で修正済み→最新の累積更新へ。
→ 恒久対策はSMB2/3 へ移行(SMB1は切り分け時のみ短時間)。
まずは Windows を最新化 → 本文の「プライベート化/探索・共有 ON/FW 許可/IP直打ち/資格情報保存」→ それでも不可ならNAS 側の SMB3+署名対応を確認。
▷ 参考(公式): Win11 24H2 の変更点(SMB サイン) / ゲストログオン既定と設定 / 24H2 で NAS 接続に失敗する理由 / 2025/9 の SMBv1 既知問題
おわりに
0x80070035 は、見た目は同じでも原因は複数あります。この記事の順でチェックすれば、“どこで止まっているか”を短時間で特定できます。アップデートのたびに設定が変わることもあるため、出勤前チェックリストをブックマークしておくと安心です。
解決しない場合は、OSのバージョン、共有元/先の機器名、接続方法(Wi-Fi/有線/VPN)、表示されたメッセージ全文をメモして、社内のIT管理者や専門家に相談してください。
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