
「シャットダウンしたのに不具合が直らない」
「更新後から挙動が変」
という相談が増えています。実はWindows 10/11の既定は“高速スタートアップ”により、通常の[シャットダウン]=完全終了ではありません。本記事では、完全シャットダウン(コールドブート)の意味、使いどころ、やり方を初心者向けにわかりやすく解説します。
完全シャットダウンとは?
通常の[シャットダウン]は起動を速くするために一部状態を保存して終了します。一方完全シャットダウンは、カーネルやドライバーの状態を持ち越さず電源を切り、次回は“まっさら”に起動します。
→ ドライバー不調・周辺機器の不安定・ネットワークの不具合などに効くことが多い手当てです。
再起動との違い
[再起動]は毎回“完全”に初期化されます(高速スタートアップは使われません)。ドライバー入れ替え・更新後の不具合など、まずは再起動が最短の対処です。直らない場合に完全シャットダウンを試しましょう。
効かなかった/できない時のチェック
完全シャットダウンで改善しない/実行できない場合は、まず下のポイントを素早く確認してください。仕組みや設定の“上書き”で効いていないだけのことがよくあります。
- Fast Startupが本当にOFFか…「コントロール パネル → 電源オプション → 電源ボタンの動作」で 高速スタートアップ のチェックを外したか再確認。
- Shift+シャットダウンを正しく実行したか…スタートメニューの電源メニューで Shift を押しっぱなし のまま「シャットダウン」をクリック(外付けデバイスは一旦外す)。
- 休止機能が影響していないか…管理者で
powercfg -a
を実行し、必要なら一時的にpowercfg -h off
(あとでon
に戻せます)。 - 再起動が必要な更新待ちになっていないか…Windows Update の保留があると挙動が不安定。まずは「再起動」で適用してから再検証。
- OEMユーティリティ/BIOSの省電力設定に上書きされていないか…メーカーの電源管理や BIOS の Fast Boot/USB給電 が干渉することがあります(無効化して試す)。
それでも改善しない場合は、デバイス マネージャーで問題のあるデバイスを一度「アンインストール」→再起動で再認識させる、またはイベント ビューアー(Windows ログ > システム)で「Kernel-Boot/Kernel-Power」周辺のエラーを手掛かりに原因を切り分けてみてください。
いつ使う?(効果が出やすい場面)
- Windows更新後にWi-FiやVPNが不安定
- USB機器・Bluetoothの認識が怪しい/途切れる
- スリープ復帰後に重い/カクつく
- 起動直後からタスクバーやスタートが固まる
やり方3選(安全・確実順)
① 一回だけ完全に落とす(Shift+シャットダウン)
- 画面右下の[電源]を開く
- Shiftキーを押しながら[シャットダウン]をクリック
- 数十秒待ってから電源を入れる
✅ メニューが開けない/固まるとき
デスクトップをクリックしてアクティブに → Alt+F4 → 「シャットダウン」を選択し、Shift を押しながら[OK]で完全終了できます。
② コマンドで完全シャットダウン
検索に cmd
と入力 → 「コマンドプロンプト(管理者でも可)」を開き、次を実行:
shutdown /s /f /t 0
/s
=シャットダウン、/f
=アプリ強制終了、/t 0
=即時。保存していない作業は先に保存してください。
③ つねに“完全”にしたい(高速スタートアップを無効化)
- コントロール パネル →「ハードウェアとサウンド」→「電源オプション」
- 左メニュー「電源ボタンの動作を選択する」→「現在利用可能ではない設定を変更します」
- 「高速スタートアップを有効にする(推奨)」のチェックを外す→[変更の保存]
起動が数秒遅くなる程度(SSDなら体感差は小)。安定性重視ならおすすめ。
※ powercfg -h off
は休止と高速スタートアップを同時に無効化します。ノートで休止を使う方は powercfg -h on
で戻せます。BitLocker 環境は再起動後に回復キー入力を求められる場合があるため、事前に回復キーを控えておきましょう。
「完全シャットダウン」で何が変わる?
高速スタートアップ(Fast Startup)が有効だと、通常の「シャットダウン」はカーネルやドライバ状態の一部を休止ファイルに保存して終了します(いわば “半分ハイバネーション”)。
そのため、軽い不具合(ドライバの噛み合わせ・USB/BTの認識・ネットワークスタックの不調)が持ち越されやすいです。
一方、完全シャットダウン(コールドブート)は電源断→完全初期化→再起動の流れになるので、ハードウェア初期化やドライバ再読込が“ゼロから”になります。
つまり「再起動=完全」で、「通常シャットダウン=不完全(Fast Startup次第)」になりがちです。
再起動の方が直ることが多いのはこのためです。
“完全”にする具体ワザ(確実度つき)
A. いちどき限定(最も簡単・確実)
- Shiftキーを押しながら「電源」→シャットダウン
→ Fast Startupを無視して完全終了します。
B. ずっと“完全”にしたい(設定で固定)
- コントロール パネル → 〔ハードウェアとサウンド〕→ 〔電源オプション〕
- 左メニュー〔電源ボタンの動作を選択する〕→〔現在利用可能ではない設定を変更します〕
- 「高速スタートアップを有効にする」のチェックを外して保存
→ 以後のシャットダウンが常に完全になります。
(※ 休止状態も使わないなら、後述のpowercfg
でhiberfil.sysごと無効化も可)
どんな不調が“完全”で直りやすい?
- Wi-Fiは繋がるのに通信できない/遅い(NIC/ドライバの再初期化で改善)
- Bluetooth機器の再接続に失敗(USB BTドングル・内蔵BTともに)
- 外付けSSD/USBメモリが突然認識しない(USBホストの再列挙で復活)
- スリープ後に画面が点かない/黒画面(GPUドライバの取り直し)
- 更新後に挙動が不安定(Update適用直後のキャッシュ絡みが解消)
逆に、電源まわりのハード故障/OS破損/ストレージ不良は完全シャットダウンでは治りません。S.M.A.R.T.確認やDISM/SFC、イベントビューア解析に進みましょう。
【補足】よくある誤解(神話と事実)
神話:BIOSの「Fast Boot」とWindowsの「高速スタートアップ」は同じ。
事実:別物。前者はUEFIレベルの自己診断短縮、後者はWindowsのハイブリッド終了。
神話:シャットダウンは再起動より“深い”終了だ。
事実:Fast StartupがONだとむしろ浅い。再起動の方が完全に近い。
神話:コマンドでシャットダウンすれば必ず完全。
事実:環境設定次第。Shift+シャットダウンかFast Startup無効化が最も確実。
バッテリー・周辺機器の“地味だけど効く方法
- ノートをシャットダウンしても微妙に電池が減る→ Fast StartupやUSB給電(Always On)が原因のことも。
- 対策:Fast Startup OFF、BIOS設定でUSB給電無効(ErP/Modern Standby関連)を確認。
- Wake on LANが勝手に反応する→ 高速スタートアップ中のデバイス待機が影響。
- 対策:NICのデバイス マネージャーで電源の管理を見直す or Fast Startup OFF。
よくある質問(FAQ)
Q. 完全シャットダウンでデータが消える?
→ いいえ。通常は設定やファイルは消えません。未保存の作業は保存してから実行してください。
Q. ノートPCでふたを閉じると完全に落ちる?
→ 既定は「スリープ」のことが多いです。電源オプションの「ふたを閉じたときの動作」で変更できます。
Q. いつも“完全”にするのはアリ?
→ 起動は少し遅くなりますが、安定性重視の人やトラブルが多い環境では有効です。
まとめ:困ったら「再起動」→ダメなら“完全”に落とす
完全シャットダウンする3つの方法
- Shift+シャットダウン(一度きり確実)
- 高速スタートアップをOFF(常に完全)
powercfg -h off
(休止ごと無効・空き容量増)
困ったらまずやる
- 完全シャットダウン → 起動
- デバイスマネージャーで問題デバイスの再認識
- それでもダメならドライバ更新/クリーン再インストール
まずは再起動、それで改善しない“更新後の不安定・デバイス不調”には完全シャットダウン。一回だけならShift+シャットダウン、習慣化したいなら高速スタートアップを無効化。これだけ覚えておけば、たいていの不調は最短で立て直せます。