
「シャットダウンしたのに、動きが直らない…」
「更新後から、なんとなく挙動がおかしい」
という相談はとても多いです。実は、Windows 10/11 の初期設定では[シャットダウン]をしても完全には電源が切れていないことがあり、軽い不具合が残ったままになりやすい仕組みになっています。
このページでは、いわゆる「完全シャットダウン(コールドブート)」について、
- そもそも何が通常のシャットダウンと違うのか
- どんなトラブルに効きやすいのか
- 初心者でもできる安全なやり方
を、できるだけ専門用語を噛み砕きながら解説します。
✅ まず試すのは 再起動
✅ 直らなければ Shift+シャットダウン で一度だけ完全終了
✅ いつも安定させたいなら 「高速スタートアップ」をOFF にする
完全シャットダウンとは?
通常の[シャットダウン]は、次回の起動を速くするためにカーネルやドライバーの状態を一部保存して電源を切るしくみになっています(これが後述の「高速スタートアップ」です)。
それに対して、完全シャットダウン(コールドブート)は、
- カーネルやドライバーの状態を持ち越さない
- 休止ファイル(hiberfil.sys)を使わずに電源を切る
- 次回起動時に「ゼロから」初期化して立ち上がる
というのが特徴です。
そのため、次のような「ちょっとした噛み合わせ不良」系の不具合に対しては、完全シャットダウンのほうが効果が出やすいことがよくあります。
- USB機器やBluetooth機器の認識がおかしい
- ネットワークだけがいつまでも不安定
- スリープからの復帰後に動きが重くなる・カクつく
再起動との違いは?
意外かもしれませんが、Windows 10/11 では[再起動]のほうが毎回「完全」に近い動作をします。
ポイントは次のとおりです。
- 再起動 … カーネルやドライバーを含めて原則すべて再読み込み(高速スタートアップは使われない)
- 通常シャットダウン … 高速スタートアップがONだと、状態を一部保存したまま終了
「シャットダウンしたのに直らないのに、再起動したら直った」というのは、この仕様が理由であることが多いです。
そのため、トラブルが起きたときの基本の流れは、
- まずは再起動で様子を見る
- 改善しないときに完全シャットダウンを試す
という順番がおすすめです。
完全シャットダウンを試す前に確認したいポイント
「完全シャットダウンをしたつもりなのに効いていない」「やったはずなのに、また同じ症状…」というときは、次のような設定や状態が影響していることもあります。
- 高速スタートアップがONのまま
… コントロール パネル →「電源オプション」→「電源ボタンの動作を選択する」で、「高速スタートアップを有効にする」にチェックが入っていないか確認。 - Shift+シャットダウンの操作ミス
… スタートメニューから電源アイコンを開き、Shiftキーを押しっぱなしのまま「シャットダウン」をクリックできているかを確認。 - 休止機能が影響している
… 管理者でpowercfg -aを実行し、「休止状態」が有効になっている場合は、一時的にpowercfg -h offで無効化して動作を確認する方法もあります(あとからonで戻せます)。 - Windows Update の再起動待ち
… 更新プログラムの適用待ちがあると、電源動作が不安定になることがあります。まずは「再起動」で更新を終わらせてから検証を。
それでも改善しない場合は、完全シャットダウンだけではなく、ドライバー更新やストレージ診断など、もう一歩踏み込んだ対処が必要になるケースもあります。
完全シャットダウンのやり方3つ(安全順)
① 一度だけ完全に落とす:Shift+シャットダウン
- 画面左下(または中央)のスタートボタンをクリック
- 電源アイコン(⏻)をクリックしてメニューを開く
- Shiftキーを押したまま[シャットダウン]をクリック
- PCの電源ランプが完全に消えたら、数十秒待ってから電源を入れ直す
メニューやスタートボタンが固まってクリックできないときは、デスクトップをクリックしてアクティブにしたうえで、
Alt + F4 → 「シャットダウン」を選択し、Shiftを押しながら[OK] をクリックしても同じ効果が得られます。
② コマンドで完全シャットダウンする
キーボード操作に慣れている方なら、コマンドから一発で実行する方法も便利です。
- 画面左下の検索ボックスに
cmdと入力 - 「コマンドプロンプト」(管理者でなくても可)を開く
- 次のコマンドを入力して Enter キーを押す
shutdown /s /f /t 0/s がシャットダウン、/f は実行中アプリの強制終了、/t 0 は「待ち時間ゼロ」です。保存していないファイルがある場合は、必ず事前に保存してから実行してください。
③ いつも完全にしたい:高速スタートアップを無効化
毎回 Shift を押すのが面倒な場合や、安定性を最優先にしたい場合は、そもそも高速スタートアップを無効化してしまう方法がおすすめです。
- コントロール パネルを開く(検索ボックスに「コントロール パネル」と入力)
- 「ハードウェアとサウンド」→「電源オプション」をクリック
- 左側の「電源ボタンの動作を選択する」をクリック
- 「現在利用可能ではない設定を変更します」をクリック
- 「高速スタートアップを有効にする(推奨)」のチェックを外し、[変更の保存]をクリック
これで、今後の[シャットダウン]は原則として完全シャットダウン寄りの動作になります。SSDを使っているPCであれば、起動時間の違いはほとんど気にならないことが多いです。
また、休止機能もまとめて無効化したい場合は、管理者権限のコマンドプロンプトで、
powercfg -h offと実行すると、休止状態+高速スタートアップの両方が無効になります(休止に戻したい場合は powercfg -h on)。
※ BitLocker やデバイス暗号化が有効な環境では、設定変更後の再起動時に回復キーの入力を求められる場合があります。事前に回復キーを控えておくと安心です。
完全シャットダウンで改善しやすい症状
完全シャットダウン(または再起動)で改善が見込めるのは、主に次のような「一時的な状態不良」が原因のトラブルです。
- Wi-Fiは繋がっているのに通信が遅い/途切れる
- Bluetoothマウス・キーボード・イヤホンが頻繁に切れる・再接続に失敗する
- 外付けSSD/USBメモリだけが突然認識しなくなる
- スリープ復帰後に画面がつかない/真っ黒のまま
- Windows Update 適用後から、なんとなく全体の挙動が不安定
逆に、
- ストレージの故障(HDD/SSDの物理エラー)
- システムファイルの重大な破損
- 電源ユニットやメモリのハードウェア不良
といったトラブルは、完全シャットダウンだけでは解決しません。この場合は sfc /scannow や DISM、ストレージ診断ツールなど、別のアプローチが必要です。
よくある勘違い(神話と事実)
神話: シャットダウンのほうが再起動より“深く”電源が切れる。
事実: 高速スタートアップがONだと、再起動のほうが完全に近い動作になります。
神話: BIOSの「Fast Boot」とWindowsの「高速スタートアップ」は同じもの。
事実: 別物です。前者はマザーボード側の自己診断を短縮する機能、後者はWindowsが終了時の状態を一部保存する機能です。
神話: コマンドからシャットダウンすれば必ず完全終了になる。
事実: 設定次第です。確実に完全シャットダウンしたいときは、Shift+シャットダウンか、高速スタートアップをOFFにするのが一番わかりやすい方法です。
よくある質問(FAQ)
Q. 完全シャットダウンでデータが消えることはありますか?
→ 通常の操作であれば、設定やファイルが消えることはありません。ただし、保存していない文書や編集中のファイルは失われてしまうので、必ず保存してから実行してください。
Q. ノートPCで「ふたを閉じる」と完全シャットダウンになりますか?
→ 既定では「スリープ」のことが多いです。完全に電源を切りたい場合は、電源オプションの「ふたを閉じたときの動作」で「シャットダウン」を選ぶか、この記事の手順でシャットダウンを実行してください。
Q. いつも完全シャットダウンにしても大丈夫?
→ 起動時間が少し長くなる可能性はありますが、SSDを使っているPCであれば体感差は小さいことが多いです。安定性を重視したい方や、トラブルが起きやすい環境では「常に完全」にしてしまうのも一つの考え方です。
まとめ:まずは再起動、それでもダメなら“完全”に落とす
Windows 10/11 は、見た目は同じ[シャットダウン]でも、内部の仕組みで「完全に切れる場合」と「一部を残したまま終わる場合」があります。
トラブル時の基本の流れは、次のように覚えておくと便利です。
- まずは再起動(もっとも手軽で効果的)
- 改善しなければ Shift+シャットダウン で一度だけ完全終了
- 安定性重視なら 高速スタートアップをOFF にして常に“完全”にする
それでも症状が続く場合は、ドライバー更新・システムファイルの修復・ストレージチェックなど、別の切り口での対処が必要です。まずは「完全シャットダウン」で一度状態をリセットし、それで改善するかどうかを見てから、次のステップに進んでみてください。

