
iPad ProやMacは同じ環境でもWi-Fiが安定してつながるのに、Windowsノート(例:富士通)が「電波が弱い・たまに切れる・速度が出ない」と感じることは珍しくありません。最大の原因は、PC側の「省電力」や「初期のネットワーク設定」です。メーカー製PCはバッテリー持ちを優先するため、無線アダプターの出力や探索頻度を控えめにする設計が多く、結果として“掴みが弱い”“粘りがない”挙動になりがちです。
本記事では、設定の見直しだけで接続の粘りと速度を底上げする具体策を、順にご案内します。手順どおり進めるだけで、再現よく安定化できます。
ステップ1:はじめに行う基本確認
まずは“状態をリセット”して、余計な要因を外します。ここまでで直ることもあります。
①ルーターとPCを再起動
- ルーター/モデムの電源プラグを抜き、1~2分待ってから挿し直します。
- PCは完全シャットダウン後、再起動します。
(理由:一時的な処理エラーやキャッシュで無線制御が乱れることがあるため。)
② VPNソフトの影響を除去(NordVPN等)
VPNアプリは仮想アダプターを作り、優先度や経路を変更します。Wi-Fiが不安定なときは影響切り分けが必須です。
- いったんアンインストール
設定 → アプリ(アプリと機能)→ 該当VPN →「アンインストール」 - 残留アダプターの削除
スタートを右クリック →「デバイス マネージャー」→「ネットワーク アダプター」
「…TAP Adapter」「…Lynx Adapter」等があれば右クリック→「デバイスのアンインストール」 - PCを再起動
補足:将来VPNを使う場合は、安定化後に再インストールして様子を見るのがおすすめです。
③ Wi-Fiドライバーが最新か確認
デバイス マネージャー →「ネットワーク アダプター」→ Wi-Fiアダプターをダブルクリック
→「ドライバー」タブ →「ドライバーの更新」→「ドライバーを自動的に検索」
「このデバイスに最適なドライバーが既にインストールされています」と出ればOKです。
ステップ2:アダプター設定を“粘る設計”に変える(効果大)
ここからが本編です。省電力で弱気な無線を、安定重視の積極動作へ切り替えます。
設定A:電源管理から“節電でオフ”を禁止
- デバイス マネージャー →「ネットワーク アダプター」→ Wi-Fiアダプターをダブルクリック
- 「電源の管理」タブ →
「電力の節約のために、コンピューターでこのデバイスの電源をオフにできるようにする」のチェックを外す
(理由:アイドル時に無線を止めると“復帰失敗=切断”が起きやすいため)
このタブが無い機種は次の「設定B」で同等効果を狙います。
設定B:電源オプションでWi-Fiを“最大パフォーマンス”へ
- Windows検索で「電源プランの編集」→開く
2)「詳細な電源設定の変更」→ ダイアログで
「ワイヤレス アダプターの設定」→「省電力モード」を展開
- 「バッテリ駆動」=最大パフォーマンス- 「電源に接続」=最大パフォーマンス
3)「OK」で保存
- 「電源に接続」=最大パフォーマンス
副作用:バッテリー消費がやや増え、発熱がわずかに増えることがあります。
→ 持ち歩き時は「バッテリ駆動のみ“中/省電力”」へ戻す運用も可。
設定C:ローミングの積極性を“最低”に
“より強い電波”を探して頻繁に乗り換える(ローミング)挙動を抑え、今つながっているルーターに粘り強く留まらせます。
- デバイス マネージャー → Wi-Fiアダプターをダブルクリック
2)「詳細設定」タブ → Roaming Aggressiveness / ローミングの積極性 / Roaming Policy を探す - 値を「最低(Lowest / Very Low)」にして「OK」
設定D:優先帯域・帯域幅の見直し(項目がある場合)
同じ「詳細設定」に以下がある場合は調整します。名称は機種により異なります。
- Preferred Band / 優先バンド:5GHz を優先に設定
- Channel Width(802.11n/ac/ax):Auto(自動)が基本。5GHzで80MHzを選べるなら試す価値あり
- 802.11n/ac/ax/Wi-Fi 6/6E:有効(Enabled)
(理由:5GHzは干渉に強く、広い帯域幅はスループット向上に寄与)
項目が無い場合はスキップで構いません。
設定E:ネットワーク優先度を整える(任意)
- 設定 →「ネットワークとインターネット」→「Wi-Fi」→「既知のネットワークの管理」
職場/自宅の本命SSIDを一番上に、使わないSSIDの自動接続をオフにします。
(理由:裏で別SSIDへ乗り換える動きを抑える)
すべての設定を終えたらPCを再起動してください(重要)。
ステップ3:物理環境の見直し(電波の通り道を整える)
① 無線機能のリセット
- 画面右下のネットワークから機内モードをオン → 10秒待ってオフ
- Wi-Fiを一度切断→再接続
(理由:無線スタックの軽い再初期化)
② ルーターの置き方と周波数帯
- 障害物を避ける:金属棚・水槽・電子レンジ・壁を避け、高めの見通し位置へ
- 5GHz帯を優先:同じSSIDで「2.4GHz/5GHz」があるなら、5GHzの方を選択
(5GHzは速度・安定性に優れる一方、壁に弱い。距離が長い/壁が多い家では2.4GHzの方が届くこともあります)
ステップ4:ネットワークの“地ならし”(効かなければ順に実施)
① DNSとソケットのリセット
- スタートを右クリック →「ターミナル(管理者)」
- 次を1行ずつ実行 → Enter → すべて終わったら再起動
ipconfig /flushdns
netsh winsock reset
netsh int ip reset
(理由:名前解決やソケット層の不整合を解消)
②ネットワークの完全リセット(最後の手段)
設定 →「ネットワークとインターネット」→「状態」→「ネットワークのリセット」
案内に従い再起動。既知のWi-Fiは再入力が必要になります。
(理由:仮想アダプターや古い設定が絡んだ複合不具合を初期化)
ステップ5:メーカー独自“節電ユーティリティ”の見直し
富士通など一部メーカーは、Windowsとは別に省電力ユーティリティやワイヤレス制御ツールを搭載し、そこでの“節電”がWindowsの設定を上書きすることがあります。
- スタート→アプリ一覧から、電源/省電力/節電と名のつくユーティリティを開く
- 無線関連の節電(例:無線省電、通信の節電、バッテリー延命)をオフ、またはバランス/標準へ
- 変更後は再起動
(理由:OS側で最大パフォーマンスにしても、ベンダーアプリが“さらに節電”していると効果が相殺されるため)
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家じゅうサクサク:Wi-Fi 6 メッシュ(2~3台)
- 死角をなくすならメッシュ一択
- アプリ管理で導入&運用が簡単
- 有線バックホール対応ならさらに安定
うまくいったか確認するチェック
- 体感:同じ部屋・同じ距離で、切断が減り、ページ表示や動画が途切れないか
- 速度の一定性:速度テストを2~3回行い、数値が安定しているか(上下5~10Mbps程度のブレは許容範囲)
- 再現性:スリープ復帰や部屋の移動後も、自動で素早く再接続するか
体感が変わらない場合は、5GHz→2.4GHzに一時切り替えて距離耐性を検証してみてください。逆に近距離なら2.4→5GHzへ。
それでも不安定なときの“道具で解決”案(現実的な回避)
- USB Wi-Fiアダプター:最新規格(Wi-Fi 6/6E)対応で、アンテナ感度が高い製品に差し替えると、内蔵アダプターの弱点を回避できます。ドライバーはWindows Update自動か、同梱インストーラーで導入するだけ。
- 中継器/メッシュWi-Fi:物理的に遠い・間に壁が多い間取りなら、アクセスポイントを増やす方が確実です。
よくある疑問と答え
Q. iPad Proはなぜ安定?
A. アンテナ配置(筐体設計)と省電力制御の最適化が進んでおり、ローミングやスリープ復帰の挙動が一貫しています。Windows PCは機種ごとの部品・ドライバー差と、省電力の方針で挙動にばらつきが出やすいのが実情です。
Q. 省電力を切ると電池が不安
A. 持ち歩きが多い方は、「バッテリ駆動のみ省電力、電源接続時は最大」という二段運用がおすすめです。
Q. ルーター設定は触らなくていい?
A. まずはPC側で十分に改善します。なお、可能ならファーム更新と再起動、チャンネル自動/固定の切り替えを試すとより安定します。
まとめ
- 不安定の主因は省電力と初期設定。
- 電源管理の見直し(A/B)とローミング抑制(C)が第一選択。
- 必要に応じて優先帯域/帯域幅(D)とSSID優先度(E)で仕上げる。
- 物理環境(置き方・5GHz活用)とネットワークリセットで整える。
- メーカー節電ユーティリティが上書きしていないか要確認。
- 最後はハードで回避(USBアダプター/メッシュ)も有効。
上記を順番に実施すれば、「掴みが弱い」「切れやすい」Windowsノートでも安定性が大きく向上します。まずはステップ2の設定A/B/Cから着手してみてください。変化を体感しやすく、戻し方も簡単です。
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