
はじめに
2025年9月30日、Microsoftは Windows 11 バージョン 25H2(OS ビルド 26200) を一般提供(GA)として公開しました。
25H2は 24H2と同一コードベースの上に載る“軽量アップデート(有効化パッケージ/eKB)”で、1回の再起動で切り替わるのが特徴です。提供は段階的に進み、まずは [最新の更新プログラムをできるだけ早く受け取る] をオンにしている24H2端末から配信が始まっています。
25H2の「位置づけ」と基本情報
- 提供開始日:2025-09-30(一般提供チャネル)
- OSビルド:26200.6584
- サポート期限:Home/Pro系は 2027-10-12、Enterprise/Education系は 2028-10-10
- 配信形態:24H2→25H2は有効化パッケージ(eKB)で高速切替(実体は月例LCUで段階配信済の機能を“ON”にする方式)
- ロールアウト:段階的(CFR=Controlled Feature Rollout)。まずは「最新の更新をできるだけ早く…」トグルをオンにした24H2端末に配信、再起動1回で完了。
補足:WSUS/ConfigMgr での提供開始は 2025-10-14 以降(IT 向け)。商用では段階的なパイロット(対象展開)からの検証が推奨されています。
いちばん気になる結論:「何が変わるの?」
結論から言うと、25H2は“安定化+管理性アップ”の色が濃いアップデートです。24H2で段階投入されてきた機能を包含しつつ、以下のような要点が“公式に”整理されています。
1) 管理性・企業向けの強化(新規/継続)
- プリインストール Microsoft Store アプリのポリシー削除(Enterprise/Education で GPO/MDM によりクリップチャンプ/メディアプレーヤー/Teams などを一括除去)
- Wi-Fi 7 エンタープライズ AP サポート(対応PC・ドライバー・APが前提。高スループットと安定性の向上)
- Windows Backup for Organizations(業務PCのバックアップ/復元ワークフローの強化)
- Quick machine recovery(ブート不能時の自動復旧の仕組み)
- タスクバーのピン留め運用改善、Energy Saverのポリシー化 など各種管理系の細かな改善が反映。
2) ユーザー体験まわり(継続)
- エクスプローラーのAIアクション(画像編集や要約など、対象は権限やライセンス要件あり)、
ファイル操作・アーカイブ解凍の体感改善、タスクマネージャーの信頼性改善 などが反映。
3) 削除・非推奨の整理(重要)
- PowerShell 2.0 を削除
- WMIC(WMIコマンドライン)を削除
レガシー要素の整理が進み、メンテ性とセキュリティ基盤の強化につながります。
補足:Copilot+ PC固有の機能(Recall[既定無効]、Agent in Settings、Click to Do、強化検索など)は、対応NPUを搭載した機種でのみ恩恵があります。25H2自体は24H2と機能同等の範囲が基本です。
25H2は「今すぐ」入れるべき?
使い方・環境別に判断ポイントを整理します。
A. 一般ユーザー(Home/Pro)で24H2が安定している方
- 25H2はeKBで軽量かつ、24H2と同じコードベース。ただし公開直後は既知の不具合が収束途上であることが通例です。現時点でも 「一部のBlu-ray/DVD/地デジアプリでDRM保護コンテンツ再生に支障」「WUSA経由の共有フォルダからのインストールで失敗」といった事象が「既知の問題」に挙がっています(前者は一部軽減済)。
- おすすめ:安定重視なら、10月の“ベースライン”(再起動あり)を経て、11月・12月のホットパッチで落ち着くまで様子見。すぐ使いたい場合は、[最新の更新をできるだけ早く受け取る] をオンにして入手し、復元ポイントやバックアップを取ってから適用を。
B. 新規導入PC/Copilot+ PCをこれから使い始める方
- 新規セットアップのタイミングなら、25H2でOK。企業ネットワーク下では Wi-Fi 7 対応などの利点もあります(対応機器前提)。
C. 企業・学校(IT管理者)
- 対象展開(パイロット)から開始し、アプリ・周辺機器・運用ツールの互換性を検証するのが公式推奨。WSUS/ConfigMgr への配信は 2025-10-14 以降。ポリシー削除機能やEnergy Saver管理など、運用メリットは大きめです。
参考:Microsoft自体も「25H2は24H2の月例で段階配信済みのコードをeKBで有効化する」モデルを説明しています。つまり、“未知の巨大新機能”に一気に移行するタイプではないのが今回の安心材料です。
ホットパッチ(再起動なしの月例)カレンダーと実運用
25H2のEnterpriseクライアントは、
四半期の1か月目=ベースライン(再起動要)/続く2か月=ホットパッチ(原則再起動なし)。
2025年は10月:ベースライン / 11月・12月:ホットパッチ。
で運用されます。
【用語ミニ解説】
・有効化パッケージ(eKB):既に入っている機能コードを小さな更新で“有効化”する仕組み。
・ベースライン更新:四半期の土台となる累積更新(再起動が必要)。
・ホットパッチ:セキュリティ中心の小粒更新(基本は再起動なし)。
アップグレード前チェックリスト(安全第一)
- バックアップ(個人:履歴付きバックアップ/OneDrive、企業:Windows Backup for Organizationsの運用検討)
- ストレージ空き/復元ポイントの確保(復元ポイントは近年60日保持の仕様に整理)
- デバイスドライバー(特にオーディオ/グラフィックス/ネットワーク)を最新化。
- サードパーティ セキュリティ/チューニング系は一時的に無効化して適用。
- 外付け周辺は最小構成で(トラブル切り分けが容易)。
アップデートの入手方法(個人/小規模)
公式の配布は Windows Update / インストールアシスタント / MCT / ISO の4経路。
ただし MCT(26100.6584)はArm64デバイスで不具合があり、現時点ではISO利用が無難です。
- [設定]→[Windows Update] を開く
- [最新の更新プログラムをできるだけ早く受け取る]をオン
- 利用可能になったら自動ダウンロード→再起動1回で完了
段階配信のため端末によって表示時期が異なります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 25H2は“新機能ゼロ”って本当?
A. “大きな新機能”はありません。25H2は24H2の機能群を踏襲し、運用面の最適化・管理性の強化・削除/整理が中心です。外部報道でも「実質的な新機能なし」とされています(IT管理系の改善はあり)。
Q2. 今、23H2のままだけどどうする?
A. 23H2のHome/Proは2025-11-11でサポートが切れます。24H2→25H2の順で早めの移行計画を。
Q3. 不具合が心配…安定してからにしたい
A. 25H2の既知の問題ページで最新状況が公開されています。映像系のDRM再生など一部に注意点があり、順次軽減・修正が進行中です。
これらの事象は、いずれも現在は軽減措置(Mitigated)が適用されています。
DRM保護コンテンツの再生不具合については、2025年9月のプレビュー更新(KB5065789)以降で一部の環境で改善が確認されています。
また、WUSA でネットワーク共有上の複数の .msu を同時に適用すると失敗する問題は、KIR(Known Issue Rollback) により軽減されています。暫定的な回避策としては、対象の .msu を一度ローカルに保存してから適用していただくか、共有フォルダーには単一の .msu のみを配置して実行していただく方法が有効です。
安定重視なら10月のベースライン適用後〜11月以降が無難です。
Q4. 企業は何から始める?
A. 対象展開(パイロット)→段階拡大が公式推奨。ISO/WSUS/Autopatch の準備と、業務アプリ・周辺機器の検証を。
[PR] アップデートの前後で“困らない”ための必需品まとめ
Windows 11 25H2に備える:バックアップ&トラブル対策
- 回復ドライブ/インストール用のUSBメモリ(16~32GB推奨):USBメモリを探す(Amazon)※「回復ドライブの作成」やクリーンインストール時のメディア作成に。
- システム/写真のバックアップ用 外付けSSD:ソフマップで周辺機器を見る※バックアップは“外付け”が基本。更新前に最新のコピーを。
- ディスプレイ周りの不調/映らない対策に:HDMIケーブルを探す(Amazon)※古い/劣化ケーブルが原因の“映らない”は意外と多いです。
- 掃除で熱暴走や接点不良を予防:エアダスター(缶タイプ)を見る(Amazon)※ファンやUSBポートのホコリ除去で安定度アップ。
- 変更点の理解やトラブルシューティングに:Kindle UnlimitedでWindows本をまとめ読み※初回はお得なキャンペーンあり。最新の解説本で知識を補強。
まとめ:入れるべき人・まだ待つ人
- 今すぐ入れてOK:新規PC導入/検証好き・早期体験派/Copilot+ PCユーザー(要件を満たす場合)
- 1〜2か月様子見:業務(在宅含む)で安定最優先の方、映像再生(Blu-ray/DVD/地デジアプリ)を常用する方
- 企業:10/14以降のWSUS提供を見据え、パイロット開始→段階展開が堅実
25H2は“大改造”ではなく、“整える”アップデートです。24H2からの移行負荷は軽く、ライフサイクルがリセットされるメリット(Home/Proで+24か月、Enterpriseで+36か月の新規カウント)もあります。安定重視ならベースライン→ホットパッチの流れに合わせた計画適用が安心です。
(参考:一次情報・公式ドキュメント)
- Windows 11 リリース情報(GA日・ビルド・サポート期限・ホットパッチカレンダー
- 25H2 の既知の問題/段階配信・トグル(Get the latest…)Microsoft Learn
- IT向け「What’s new」:eKB・WSUS提供日・削除項目・各種強化Microsoft Learn
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