いま話題の「Defender for Endpoint」とは?家庭向けDefenderやBusiness版との違いを整理

Microsoft Defender for Endpoint(MDE)入門

Microsoft Defender for Endpointの青い盾アイコンを中心に、PC・スマホ・サーバーが放射状に接続されたイラスト。企業端末の保護とXDR連携を表現。

――P1/P2の違い・対応OS・導入のコツと最新動向まで丁寧に解説

はじめに:なぜ今「Defender for Endpoint」なのか

企業や学校、団体の端末(PC/スマホ/サーバー)を守るうえで、ウイルス対策だけでなく攻撃面の縮小(ASR)・EDR(侵入後の検知/調査)・脆弱性管理(TVM)まで一体で運用できることが重要になっています。MicrosoftのMicrosoft Defender for Endpoint(以下MDE)は、こうした要件をDefender XDRという統合基盤の中で提供する中核製品です。Windowsはもちろん、macOS、Linux、Android、iOSもカバーします。

2025年10月にはライセンス周りの名称変更もあり、ニュース経由で注目度が上がっています(後述「最新動向」)。“今から学んでおく”価値が高い守りの基本です。


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Microsoft Defender for Endpointとは?

MDEは、エンドポイントの予防・検知・自動調査・応答(EPP/EDR)を提供するエンタープライズ向けセキュリティ基盤です。単体での機能に加え、Defender XDR(旧Microsoft 365 Defender)と連携し、端末・ID・メール・SaaSまで横断的にインシデントを可視化・相関分析します。

  • 代表的な機能
    • 次世代AV(Microsoft Defender Antivirusの管理/高度化)
    • 攻撃面の縮小(ASR):Officeマクロや横展開で多用される挙動を既定で抑止
    • EDR:ふるまい検知・証跡の収集・タイムライン分析
    • 自動調査・修復:プレイブックで隔離/修復
    • TVM(脆弱性/露出管理):ソフトのEoL・CVE、構成の弱点を棚卸し
    • 自動攻撃分断(Defender XDRと連携) など

P1 と P2 の違い

  • P1:次世代AV+ASR+基本的な応答(手動中心)。まず入口対策と標準化を固めたい組織向け。
  • P2EDR/自動調査・修復/TVM/自動攻撃分断まで含む“本気運用”プラン。SOC的な運用や可視化の深さが必要ならこちら。
  • 導入の考え方:小規模ならまずP1でASR/改ざん防止を“検出→ブロック段階”で慣らし、運用が回り始めたらP2へ拡張が定石です。

比較の要点

項目P1P2
次世代AV/ASRありあり
EDR(ふるまい検知/証跡)あり
自動調査・修復あり
TVM(脆弱性/露出管理)あり
自動攻撃分断(XDR連携)あり
運用イメージ入口対策の標準化インシデント対応まで一気通貫

(正式な機能境界は常に公式ドキュメントで確認してください)


対応プラットフォームと“現場での”入れどころ

MDEはWindows / macOS / Linux / Android / iOSに対応し、OSごとに提供機能が最適化されています。Windowsは最も機能が厚く、サーバー(Windows Server, Linux)にもエージェントを展開可能です。

  • Windows:ASR/EDR/センサー機能が充実。Defender Antivirusの管理/検査をMDEコンソールから統合。
  • macOS:2025年はオフライン環境向けの定義配布(ローカルミラー)がプレビューに。
  • Android/iOS:アプリの脅威検出、Web保護、条件付きアクセス連携など。Android版は2025年9月に共有デバイスモードのサインインループ問題が解消されています。

コツ:まずはWindowsクライアント+重要サーバーから着手し、macOS/モバイルに段階展開するのが現実的です。


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“家庭向けDefender”や“Defender for Business”との違い

  • 家庭向けDefender:Microsoftアカウント個人利用の範囲。企業の資産管理/EDR/TVMは対象外
  • Defender for Business:中小企業向けの“おまかせ的”パッケージで、Business Premiumと組むと導入が容易。ただし、SOC前提の深いEDR運用やTVMの使い込みを突き詰めるならMDE P2が本命です。

最新動向(2025年秋時点)

①名称変更:E5 Security → Microsoft Defender Suite

2025年10月1日、Microsoftは「Microsoft 365 E5 Security」→「Microsoft Defender Suite」へ名称を変更しました(同時にE5 Complianceは「Microsoft Purview Suite」に)。ライセンス文言の検索が増えた背景です。

② TVMの誤検知が話題に

2025年10月、DefenderのTVMがSQL Server 2017/2019を“EoL”と誤検知する不具合が報告されました。Microsoftは修正ロールアウト中と案内。慌ててサーバー棚卸しを変更しないこと、正しいサポート期限(2017は2027年10月、2019は2030年1月)を確認のうえ経過観察を。

③ エージェントやプラットフォームの細かな改善

Windows版/Android版/macOS版で安定性や運用性の改善が継続。特にWindowsのNDR/TVM周りの改善、Androidの共有端末挙動の修正、macOSの定義ミラー対応がトピックです。

参考:OS側の大きな方針として、AV/EDRの“カーネル外”化に向けた動き(プライベートプレビュー)が報じられています。将来的にドライバ障害の波及リスクを下げる狙いで、エコシステム連携のうえ段階的に進む見込みです。


導入の基本:要件・ライセンス・オンボードの流れ

①ライセンスとプラン選定

  • 小規模〜まずは標準化P1(ASRの定着・改ざん防止・脅威対策の統制)
  • 監視・調査・自動修復までP2(EDR/TVM/自動攻撃分断)
  • 既存スイート:Microsoft 365 E5(新名:Defender Suite)に含まれる形での採用も選択肢。

② オンボード

  1. 設計:対象OS・ポリシー(ASR/AV/EDR/TVM)・例外・役割分担(運用/監視)を整理
  2. 登録:Intuneやスクリプトでオンボードパッケージを配布
  3. 段階運用:ASR等は検出モード→一部ブロック→全面ブロックの順に上げる
  4. ダッシュボード整備:インシデント・アラート・推奨事項(TVM)を週次でレビュー
  5. 自動化:P2なら自動調査・修復のスコープを拡大し運用負荷を逓減
    (詳細手順・対応機能表は公式ガイドを必ず参照)

ポイント:“一気にブロック”は事故のもと。まずは監査/検出で影響範囲を把握してから切り替えると、業務停止のリスクを最小化できます。


現場の“あるある”設定と運用のコツ

  • ASR(攻撃面の縮小)は業務影響が出やすいルールが含まれます。最初は監査モードでログを見て、例外(署名済みツールや社内スクリプト)を洗い出し→対象部門から段階ブロックへ。
  • 改ざん防止(Tamper Protection)は標準でONに。サードパーティ製品との競合がある場合は先に整合性を確認。
  • TVMの“推奨事項”は優先度(露出/流通性/悪用状況)を見て短期ToDo化。誤検知疑いはリリースノートやサポート通達を確認し、運用判断で“抑止”を入れすぎない
  • インシデント応答は“端末隔離→調査→修復→証跡保存→再発防止”の定型フローをチームで共有。P2の自動調査・修復まず限定スコープでA/B運用して効果と副作用を見極めるのが安全です。

よくある質問(FAQ)

Q1. Windows標準の“ウイルス対策(Defender Antivirus)”と何が違いますか?
A. Defender AntivirusはOSに備わるマルウェア対策エンジンです。MDEはその管理強化+ASR+EDR+TVMなど、企業運用で必要な可視化と自動化を足す製品です。

Q2. 小規模でもP2は必要?
A. 初期はP1で“入口対策の標準化”を固め、監視・可視化不足を感じたらP2にシフトするのが王道です。

Q3. macOSやAndroidでも意味がありますか?
A. はい。Windows以外の端末が“侵入経路”になることは普通です。MDEは各OS向けの改善が継続しています(2025年も更新多め)。

Q4. 価格や試用は?
A. P1/P2の試用導線は公式サイトから。既にMicrosoft 365 E5(Defender Suite)を契約中ならP2相当の権利を含む構成もあります(テナントの契約を要確認)。


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まずはアカウント保護と標準化から

※MDEのライセンス販売とは別製品です。導入要件は公式でご確認ください。

まず取り組む“3ステップ”

  1. 資産の棚卸し:OS/アプリのバージョン・EoL・管理者/ローカル権限の状況を準備
  2. P1でASRを“監査→段階ブロック”:Tamper保護もON、例外は最小限
  3. P2へ拡張して“見える化と自動化”:EDR/TVM/自動修復をSOCルールに組み込み

これで「感染しにくい+侵入に気づける+復旧が早い」体制に近づきます。


まとめ

MDEは“OS別の点対応”ではなく、“組織全体のプロセス”として効果を発揮します。

P1→P2の段階導入、ASRの検出運用からのスムーズなブロック化TVMの優先順位運用が成功のカギです。

2025年はライセンス名称変更(Defender Suite)やTVM誤検知の話題など“ニュースの揺れ”もありましたが、基本設計と運用の型を先に固めておけば、変化には対応できます。


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