
はじめに
Windowsが不安定になったとき、多くの人が「もう再インストールするしかないのでは?」と考えがちです。しかし、初期化をするとアプリの再設定やデータ復旧に大変な手間がかかります。
そこで覚えておきたいのが 「インプレースアップグレード」 です。
これは データやアプリを残したままWindowsのシステム部分だけを上書き修復する方法。SFCやDISM、Windows Update修復でも直らなかった不具合が解決する“最後の切り札”になります。
インプレースアップグレードとは?
- 通常の再インストール:Windowsを完全に入れ直す → アプリや設定が消える
- インプレースアップグレード:Windowsを上書き → データやアプリはそのまま保持
つまり「壊れた部分だけを修復」できる方法です。
ライセンス認証も引き継がれるため、再度キーを入力する必要はありません。
こんなときに有効!
症状 | 詳細 |
---|---|
Windows Updateが失敗する | 何度試してもエラーや再起動ループになる |
アプリが起動しない | 再インストールしても改善しない |
ファイル破損 | SFCやDISMでも修復できなかった |
システムエラー | ログオン不可、explorer.exeが落ちる |
→ 「部分的な修復では限界がある」と感じたら、インプレースアップグレードを検討しましょう。
実行前に準備すること
- 安定したインターネット環境
- 20GB以上の空き容量
- 管理者権限アカウント
- 外付け機器は最小構成に(USB・周辺機器は外す)
- BitLockerを一時停止(回復キーを求められるトラブル回避)
👉 重要なデータは念のため 外付けSSDやUSBメモリにバックアップ しておきましょう。
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インプレースアップグレードの手順
手順1:Microsoft公式からツールを入手
👉 Download Windows 11(Microsoft公式)
ここから インストールアシスタント または Media Creation Tool をダウンロードします。
手順2:ツールを実行
- ダウンロードした
MediaCreationTool.exe
を起動 - 「このPCを今すぐアップグレードする」を選択
- 利用規約に同意
- 「個人用ファイルとアプリを保持」 にチェックを入れる(重要!)
- 「インストールの準備ができました」画面で保持オプションを再確認
- 実行
⚠️ 保持オプションがグレーアウトする原因
- エディションや言語が一致していない
- USBブートから実行している
- 古いISOを使用している
→ 最新の公式ISOをWindows上から実行すれば解決するケースが多いです。
実行前にやっておきたい修復コマンド
Microsoftは以下の順番を推奨しています。
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealthsfc /scannow
- DISM:システムイメージを修復
- SFC:破損したシステムファイルをチェック&修復
この2つを先に実行しておくと、インプレースアップグレードの成功率が高まります。
実行中にエラーが出たら?
- 外付けドライブを外す
- ウイルス対策ソフトを一時停止
- Windows Updateサービスを一時停止
- ISOファイルから直接
setup.exe
を実行
インプレースアップグレードの裏技・裏情報
1. 「Repair Install(修復インストール)」をバージョンダウンに使う
- 通常は最新バージョンへ更新されますが、一つ前の安定版ISO を使ってインプレースアップグレードすると「ダウングレードに近い修復」が可能です。
- 例:24H2で不具合が出た → 23H2のISOで実行すると安定化するケースがあります。
⚠️ Microsoft非推奨ですが、実務ではよく使われています。
2. 「SetupDiag」で失敗原因を解析
- インプレースアップグレードが失敗したときに便利な公式ツール。
👉 SetupDiag(Microsoft公式) - エラーコードやログを自動解析してくれるので、原因が「ドライバ」なのか「互換性」なのかが一目でわかります。
3. 「/ReflectDrivers」オプションでドライバ持ち込み
- ISOから
setup.exe
を実行するときに以下のオプションをつけると、特定ドライバを事前に読み込ませることができます。
setup.exe /ReflectDrivers <ドライバフォルダへのパス>
- RAID構成や特殊LAN/Wi-Fiドライバで失敗しやすい環境で有効です。
4. 「レジストリ修復」との合わせ技
- インプレースアップグレード前に以下のレジストリを削除すると成功率が上がることがあります。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\WindowsUpdate
- 古い更新情報が残っていると、インストーラが混乱するため。
⚠️ 削除前に必ずエクスポートでバックアップしましょう!
5. 互換性チェックのバイパス
- 古いCPUやTPMが原因でアップグレード拒否される場合、
- レジストリ
HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\Setup\MoSetup
にAllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPU = 1 (DWORD)
を追加すると実行可能になることがあります。
⚠️ 自己責任・非公式な方法です。安定性やセキュリティリスクがあるので検証用PC向きです。
- レジストリ
6. インターネットを切断して実行
- 特定の環境では、ネット接続があると強制的に最新ビルドをダウンロードしてしまい、保持オプションが選べなくなることがあります。
- 一時的にLANケーブルを抜いてからISOで実行すると、オフラインのまま保持オプションが選べることがあります。
7. Windows.old フォルダの活用
- インプレースアップグレード後は
C:\Windows.old
が作成されます。 - これを利用すれば、消えたと思った古い設定ファイルや一部アプリデータを復元できることがあります。
(ただし数日〜数週間で自動削除されるので注意は必要です。)
よくある質問(FAQ)
Q:ライセンスはどうなる?
→ 自動的に引き継がれるので再認証不要です。
Q:データは絶対に消えない?
→ 通常は保持されますが、念のためバックアップ推奨。
Q:どれくらい時間がかかる?
→ 通常30分~1時間(PC性能による)。
まとめ|「壊れたら初期化」の前に!
- データやアプリはそのまま
- ライセンスも引き継ぎ
- システムだけを綺麗に修復
「もう限界かも」と思ったときの 最終兵器 がインプレースアップグレードです。
クリーンインストールの前に、ぜひ試してみてください。
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