
はじめに
2025年7月2日、MicrosoftはWindowsのアップグレードポリシーに大きな変更を加えました。
これまで、Windows 10やWindows 11のサポート期限が近づくと、Microsoftは更新プログラム「KB5001716」を通じて、ユーザーの同意なしに自動的に新しいバージョンへアップグレードを試みる仕様を採用していました。
しかし、2025年7月2日に「KB5001716」のリリースノートが更新され、「自動的にアップグレードを試みる」という記述が削除されました。これにより、今後はユーザーの意思を尊重する方針へと大きく転換されます。
変更後のアップグレード方針とは?
Microsoftは以下のような新しいポリシーを示しています。
- Windowsは定期的に通知を表示し、サポート終了時期やハードウェア要件をユーザーに知らせる
- ユーザーはアップグレードのタイミングを自分で選べる
つまり、「勝手にアップグレードされる」ことはなくなるというわけです。
なぜこの変更が重要なのか?
これまで、多くのユーザーが意図しないアップグレードによる不具合や互換性トラブルに悩まされてきました。
たとえば、業務用の特殊なアプリケーションや古い周辺機器を使用している場合、最新バージョンのWindowsでは動作しないことがあります。
今回の方針変更により、ユーザーがアップグレードのタイミングを自由に選べるようになったことで、そうしたトラブルを回避できる可能性が高まります。
KB5001716とは何だったのか?
「KB5001716」は、Windows Updateを通じてサポートが終了するWindowsバージョンを新しいバージョンへ誘導するための更新プログラムです。実質的には“アップグレードの仕組みそのもの”を含んだものでした。
リリース当初は、「Windowsのバージョンが古くなると自動的にアップグレードを試みる」と明記されていました。
しかし、2025年7月の説明改定でその一文が削除され、代わりに「ユーザー通知に基づくアップグレードの提案」に留める方針が明確になりました。
実は“目立たないけど重要”だったKB5001716
KB5001716は、一見すると普通の累積的な更新プログラムのように見えますが、実際には「アップグレード制御の中核」とも言える役割を担っていました。
この更新プログラムがPCにインストールされると、Windowsは以下のような条件を判断し、ユーザーのPCがアップグレード対象かどうかを裏でチェックしていました。
✔ 使用中のWindowsバージョンがサポート期限内かどうか
✔ 次期バージョンへの互換性(ドライバーやハード構成)
✔ Microsoftが定める「アップグレード適用タイミング」に合致しているか
つまり、KB5001716は「PCをどうアップグレードに導くか」を裏で判断・制御していたわけです。これが今回、“自動アップグレードの試行”という機能を失い、単なる通知表示に変化したというのは、実は非常に大きな意味を持ちます。
今後は、同じようなアップグレード用パッケージが配信されたとしても、ユーザーの確認なしにアップグレードが始まることはない、という安心感が得られるのです。
今後どうすればいい?
今後は以下の点に注意してWindowsを使用するのがおすすめです。
- 通知が来たら内容をよく確認し、必要がなければすぐにアップグレードしない
- 手動でアップグレードする際は、バックアップを必ず取得してから行う
- 長期間アップグレードしない場合は、サポート期限を確認し、いつまで使えるか把握しておく
自動アップグレードが行われなくなったとはいえ、サポート終了後の放置はセキュリティリスクを高める原因にもなります。通知を無視し続けていると、いつの間にか脆弱性にさらされてしまう危険性もあるため、アップグレードを「完全に避け続ける」のではなく、タイミングを自分で選んで備える姿勢が重要です。
特に企業や業務用途でWindowsを使用している場合は、アプリの互換性やネットワーク環境なども含めて事前検証を行い、計画的なアップグレード体制を整えておくと安心です。
通知が表示されたら内容を読み飛ばさず、一度立ち止まって、「今アップグレードすべきかどうか」を自分で考える習慣をつけておくと、トラブルを未然に防げます。
アップグレードを延期したい場合のコツ
「まだアップグレードはしたくない」「安定動作を優先したい」と考えている場合、以下のような設定をしておくことで、余計なアップグレードを防ぎ、通知の頻度も抑えることができます。
- 設定 > Windows Update > 一時停止で「最大5週間の更新停止」を活用する
- プロ版(Windows 10 Pro / 11 Pro)を使っている場合は、「ポリシーエディタ」や「レジストリ」で延期設定が可能
- 「通知を閉じるだけ」ではなく、通知が出るタイミングを記録しておくことで、次回の表示傾向がつかめる
特にProエディションでは、「機能更新プログラムを延期する(最大365日)」といった細かな制御が可能です。安定版が十分に評価されるまで待ちたい人にはおすすめの手段といえるでしょう。
ただし、サポート期限を過ぎたバージョンを使い続けると、セキュリティ更新プログラムも受け取れなくなるため、完全な放置は避け、最終的には移行を検討する必要があります。
まとめ
Microsoftの今回の方針転換は、ユーザーの自由を重視した柔軟な運用へと変わったことを示しています。
Windowsのバージョンアップに慎重な方や、特定のバージョンで使い続けたいというニーズにも配慮されたアップデートといえるでしょう。
今後も、OSのバージョン管理は「自分で選ぶ時代」になります。