
台風や大雨による床上浸水で、パソコンや外付けHDD、電源タップなどが水に濡れてしまうことがあります。
このとき、動くかどうかを確かめるために電源を入れてはいけません。
浸水したパソコンの内部には、水分だけでなく、泥や砂、塩分などが入り込んでいる可能性があります。そのまま通電すると、基板がショートしたり、発煙・発火したりして、取り出せたはずのデータまで失うおそれがあります。
また、床やコンセント周辺が濡れている場合は、パソコンに触ること自体が危険です。まず避難と感電防止を優先し、安全が確認できるまでは機器や電源プラグに近づかないでください。
この記事では、パソコンが大雨や浸水で水に濡れたときに、最初に確認すること、やってはいけないこと、データを守るための相談先についてわかりやすく解説します。
パソコンより先に、人の安全を確認する
床やコンセント、電源タップの周辺まで浸水している場合は、パソコンを動かしたり、電源プラグを抜いたりしないでください。
濡れた床に立ったまま電気製品やコンセントに触れると、感電する危険があります。
次のような状況では、機器に近づかず、避難と安全確保を優先します。
- 床に水が残っている
- コンセントや電源タップが水に浸かっている
- 電源コードが水の中にある
- 焦げたにおいや異音がする
- パソコンやバッテリーから煙・熱が出ている
安全な場所から分電盤を操作できる場合は、避難前にブレーカーを切ることも通電火災の防止につながります。ただし、分電盤の周辺まで濡れている場合や、安全に近づけない場合は、自分で操作せず、電力会社や電気工事業者などへ相談してください。
浸水したパソコンには電源を入れない
安全が確認できたあとも、水に濡れたパソコンの電源は入れないでください。
「一度だけ起動してデータを取り出したい」と思うかもしれませんが、その通電によって基板がショートし、故障を悪化させる可能性があります。
一度は正常に起動できても、内部に残った泥や不純物によって腐食が進み、数日後や数週間後に突然故障することもあります。
特に、次の機器が浸水した場合は、見た目が乾いていても使用を再開しないでください。
- プリンターやモニター
- ノートパソコンやデスクトップPC本体
- ACアダプターや充電器
- 電源タップや延長コード
- 外付けHDD・SSD
- USBハブやドッキングステーション
安全に触れられる場合だけ、電源を切って接続を外す
水が引いていても、コンセントや配線が安全とは限りません。床・手・コンセント周辺が乾いていて、焦げたにおいや発熱などの異常がなく、安全に作業できる場合に限って、電源を切り、電源プラグや周辺機器を外します。
床やコンセント周辺が濡れている場合、電源コードが水に浸かっている場合は、パソコンやプラグに触れないでください。ブレーカーを切った後でも、ノートパソコンには内蔵バッテリーが残っています。無理に本体を開けたり、バッテリーを取り外したりしないでください。
すでに電源が切れているパソコンは、動作確認のために電源ボタンを押さず、そのままメーカーや修理業者へ相談します。大切なデータがある場合は、依頼時にその旨も伝えましょう。
片付ける前に被害状況を写真で残しておく
避難や感電防止を優先したうえで、安全な場所から撮影できる場合は、片付ける前の被害状況を写真に残しておきましょう。撮影のために水の残る場所へ戻ったり、機器を持ち上げたりする必要はありません。
住まい全体の浸水状況が分かる写真は、住宅の被害に関する罹災証明書の申請や、保険会社への説明に役立つ場合があります。パソコンなど家財の被害についても、設置場所と機器の状態が分かる写真を残し、補償の対象や必要な資料を保険会社へ確認してください。
次のような写真を残しておくと、状況を説明しやすくなります。
- パソコンが置かれていた場所の全体
- パソコンや周辺機器の浸水状態
- 壁や家具に残った水位の跡
- 泥や汚れが付着した部分
- パソコンのメーカー名、型番、製造番号
- ACアダプターや外付けHDDなどの被害
安全のために機器を移動する必要がある場合も、可能であれば移動前と移動後の両方を撮影します。
パソコンが保険の補償対象になるかどうかは、契約内容や浸水の原因によって異なります。処分や修理を申し込む前に、加入している保険会社へ確認してください。
安全な場所へ移動できたら、表面の水分を拭き取る
避難後、水が引き、電源設備の安全を確認できた場合に限り、無理のない範囲でパソコンを扱います。発熱、膨張、異臭、煙などがある機器には触れたり、運んだりしないでください。
異常がなく安全に触れられる場合は、乾いた布で表面の水分を軽く拭き取ります。表面を拭いても内部が安全になったわけではないため、電源を入れたり充電したりせず、修理やデータ復旧の相談先に浸水したことを伝えてください。
ただし、強く振ったり、何度も向きを変えたりすると、内部の水分や泥が別の場所へ広がる可能性があります。
泥水が付着していても、水道水で洗ったり、自分で分解して内部を掃除したりしないでください。表面を軽く拭き取ったあとは、風通しのよい安全な場所に置き、専門業者へ相談しましょう。
浸水したパソコンでやってはいけないこと
水に濡れたパソコンは、対処を誤ると故障が悪化し、取り出せるはずだったデータまで失う可能性があります。
電源を入れて動作確認する
最も避けたいのが、動くかどうかを確かめるために電源を入れることです。
内部に水分や泥が残った状態で通電すると、基板がショートしたり、発煙・発火したりするおそれがあります。電源が切れている場合は、そのままの状態を保ってください。
充電器やACアダプターを接続する
ノートパソコンのバッテリーが切れていても、充電器を接続して起動を試してはいけません。
パソコン本体だけでなく、ACアダプターや電源コードが濡れている可能性もあります。浸水した充電器や電源タップは、乾いたように見えても再使用しないでください。
ドライヤーや暖房器具で乾かす
ドライヤーの熱を当てると、内部の部品やバッテリーが傷む可能性があります。また、強い風によって水分や汚れをさらに奥へ押し込んでしまうこともあります。
電子レンジ、オーブン、ストーブ、布団乾燥機などを使うことも大変危険です。
米や乾燥剤の中に入れる
濡れた電子機器を米や乾燥剤と一緒に入れる方法が紹介されることがありますが、浸水したパソコンへの対処としてはおすすめできません。
表面の水分が減っても、内部に付着した泥や不純物までは取り除けません。米の粉や細かな異物が端子や通気口に入り込む可能性もあります。
慣れていない人が分解する
パソコンを無理に分解すると、ケーブルや部品を破損したり、修理やデータ復旧の作業が難しくなったりすることがあります。
特にノートパソコンにはリチウムイオンバッテリーが内蔵されています。穴を開けたり、強く曲げたりすると、発煙・発火につながるおそれがあるため、自分で取り外そうとしないでください。
数日間乾かしたあとに自分で起動する
見た目が乾いていても、安全に使用できるとは限りません。
大雨や床上浸水による水には、泥、砂、塩分などの不純物が含まれていることがあります。水分が蒸発したあとも汚れが内部に残り、腐食やショートの原因になるため、点検を受ける前に電源を入れないでください。
発熱・膨張・異臭がある場合はパソコンに近づかない
水に濡れたノートパソコンから、次のような異常が見られる場合は注意が必要です。
- 本体が急に熱くなっている
- バッテリー部分が膨らんでいる
- 焦げたようなにおいや刺激臭がする
- 煙や火花が出ている
- 「シュー」という音がする
このような場合は、パソコンを持ち上げたり、充電器を接続したり、自分でバッテリーを取り出したりしないでください。
周囲の人を離れさせ、安全な場所へ避難します。煙や火が出ている場合は、無理に対処せず119番へ通報してください。
大切なデータがある場合は、起動せず専門業者へ相談する
仕事のファイル、家族の写真、会計データなど、失いたくないデータが保存されている場合は、自己判断で電源を入れず、早めに専門業者へ相談しましょう。
相談先は、目的によって異なります。
- パソコン本体を直したい:メーカーやパソコン修理業者
- 保存データを最優先で取り出したい:データ復旧業者
- 会社や学校から借りているパソコン:勤務先や管理担当者
- リース・レンタル品:契約している会社
メーカー修理では、部品交換や初期化によって保存データが消える場合があります。データを最優先したい場合は、修理を依頼する前に「データを残したい」と伝えてください。
また、何度も電源を入れたり、自分でSSDやHDDを取り外したりすると、故障を悪化させる可能性があります。相談時には、次の情報を伝えると状況を説明しやすくなります。
- いつ、どの程度まで浸水したか
- 電源が入っている状態だったか
- 浸水後に電源を入れたか
- 水道水、雨水、泥水のどれに濡れたか
- 異臭・発熱・煙などがあったか
- 取り出したいデータの種類
データ復旧は、機器の状態によって費用や復旧できる範囲が大きく異なります。依頼前に、診断料、復旧できなかった場合の費用、見積もり後のキャンセル料、データの取り扱いについて確認しておくと安心です。
パソコン本体が起動できなくても、SSDやHDDの状態によってはデータを取り出せる可能性があります。ただし、ストレージが基板に直接取り付けられている機種や、データが暗号化されている機種では、復旧が難しい場合もあります。
OneDriveに同期していたデータは別の端末から確認する
WindowsパソコンでOneDriveを利用していた場合は、パソコン本体が故障しても、同期済みのデータがクラウド上に残っている可能性があります。
浸水したパソコンは起動せず、スマートフォンや別のパソコンからOneDriveへサインインして確認してください。
主な確認方法は次のとおりです。
- WebブラウザーからOneDriveを開く
- スマートフォンのOneDriveアプリを開く
- 別のWindowsパソコンからOneDriveへサインインする
「デスクトップ」「ドキュメント」「ピクチャ」などのバックアップを有効にしていた場合は、これらのフォルダーに保存したファイルを確認できることがあります。
ただし、OneDriveを使用していても、すべてのファイルが自動的に保存されているとは限りません。同期が完了していなかったファイル、同期対象外のフォルダー、パソコン本体や外付けHDDだけに保存していたデータは、クラウド上に残っていない場合があります。
大雨の前にできるパソコンの浸水対策
浸水してからでは、パソコンやデータを守るためにできることが限られます。
台風や線状降水帯による大雨が予想されているときは、避難が必要になる前に、無理のない範囲で次の対策を行っておきましょう。
- ノートパソコンを机や棚の上へ移動する
- 床置きのデスクトップPCを高い場所へ移す
- 外付けHDD・SSDを床から離す
- 電源タップや充電器を床に置かない
- 重要なデータをクラウドにもバックアップする
- バックアップ用の外付け機器を別の階や別の場所に保管する
- パソコンや周辺機器の型番・製造番号を写真に残す
- 避難前に、使用していない機器の電源プラグを抜く
外付けHDDやSSDへバックアップしていても、パソコンと同じ床や机の下に置いていると、浸水時に両方を失う可能性があります。
重要なデータは、パソコン本体だけに保存せず、外付け機器とOneDriveなどのクラウドへ分けて保存しておくと安心です。外付け機器はバックアップ後にパソコンから取り外し、できれば別の階や別の建物など、同時に被害を受けにくい場所へ保管します。
ただし、大雨がすでに強くなっている場合や、避難情報が発表されている場合は、パソコンの移動やバックアップよりも避難を優先してください。
修理できないパソコンも、すぐに家庭ごみへ出さない
修理やデータ復旧が難しいと判断された場合も、浸水したパソコンを自己判断で分解したり、そのまま家庭ごみに出したりしないでください。
ノートパソコンにはリチウムイオンバッテリーが内蔵されていることが多く、浸水や破損によって発熱・発火する可能性があります。
処分するときは、次の窓口へ相談します。
- パソコンメーカーの回収窓口
- 購入した家電量販店
- 自治体が案内している回収窓口
- パソコンのリユース・回収事業者
発熱、膨張、異臭などがある場合は、自分で運搬する前に、メーカーや自治体、消防などへ対応方法を確認してください。
また、ストレージ内に個人情報が残っている可能性があります。データを取り出さない場合も、データ消去やストレージの取り扱いについて回収先へ確認しておくと安心です。
パソコンの浸水・水没についてよくある質問
Q. パソコンを数日乾かせば電源を入れてもよいですか?
大雨や床上浸水で濡れたパソコンは、乾いたように見えても自分で電源を入れない方が安全です。内部に泥や不純物が残っていると、通電したときにショートや発火が起きる可能性があります。
Q. 少しだけ水がかかった場合も修理が必要ですか?
水がかかった場所や量、電源が入っていたかどうかによって異なります。通気口、端子、キーボードなどから内部に入った可能性がある場合は、起動せずメーカーや修理業者へ相談してください。
Q. 水没した外付けHDDやSSDを別のパソコンにつないでもよいですか?
つながないでください。内部に水分や汚れが残った状態で通電すると、外付け機器の故障が悪化するだけでなく、接続先のパソコンにも影響する可能性があります。大切なデータがある場合は、データ復旧業者へ相談します。
Q. OneDriveにデータがあるか確認するにはどうすればよいですか?
浸水したパソコンは起動せず、スマートフォンや別のパソコンからOneDriveへサインインして確認します。ただし、同期していなかったファイルや同期対象外のフォルダーは保存されていない場合があります。
Q. 水没したパソコンのデータは必ず復旧できますか?
必ず復旧できるとは限りません。水の種類、浸水時間、通電の有無、SSDやHDDの状態などによって結果が異なります。復旧の可能性を下げないためにも、電源を入れずに相談することが大切です。
Q. 火災保険でパソコンの被害は補償されますか?
水災補償や家財補償を付けているかなど、契約内容と被害の原因によって異なります。安全に撮影できる場合は被害状況を記録し、処分や修理を申し込む前に保険会社へ必要な手続きを確認してください。罹災証明書は住宅の被害の程度を証明するものです。
まとめ
パソコンが大雨や床上浸水で水に濡れたときは、動作確認のために電源を入れないでください。
床やコンセント周辺まで濡れている場合は、パソコンに触ること自体が危険です。機器の救出よりも避難と感電防止を優先し、安全が確認できるまでは近づかないようにします。
水が引き、電源設備の安全を確認できた後、安全に触れられる場合は電源を切り、電源ケーブルや周辺機器を外します。ただし、内蔵バッテリーを無理に取り外したり、ドライヤーで乾かしたり、数日後に自分で起動したりしないでください。
大切なデータが入っている場合は、メーカー修理へ出す前に、データを残したいことを伝えましょう。データを最優先する場合は、電源を入れずにデータ復旧業者へ相談します。
また、被害を片付ける前に、パソコンや設置場所、浸水した高さなどを写真に残しておくと、保険や罹災証明書に関する手続きで役立つ場合があります。
今後の浸水被害に備えるためにも、パソコンや外付けHDDを床から離し、重要なデータを外付け機器とクラウドの両方へ保存しておきましょう。

