回復ドライブとは?何ができて、何ができないのか

「パソコンが急に起動しなくなったらどうしよう…」
「もしもの時のために、回復ドライブを作っておいた方がいいって聞いたけど、正直よく分からない」
そんな不安や疑問を持ったことはありませんか?
Windows 10 / Windows 11 には、**「回復ドライブ(Recovery Drive)」**という仕組みがあります。
USBメモリに“万が一のための復旧用データ”を入れておき、パソコンが正常に起動しなくなったときに使う「レスキュー用USB」のようなものです。
しかし実際には、
- 回復ドライブとインストールUSBの違いが分からない
- どこまで直せて、どこからは直せないのかが曖昧
- 「とりあえず作ったけど、これで本当に安心なの?」
と感じている方も多いはず。
この記事では、回復ドライブとは何か、何ができて・何ができないのかを、できるだけ難しい言葉を使わずに解説します。
1. 回復ドライブとは?ざっくり一言でいうと…
まずはざっくりイメージから。
回復ドライブ = パソコンが起動しなくなったときに、Windowsの修復ツールを起動するためのUSBメモリ
です。
もう少し詳しく言うと、
- Windows本体の「回復環境(WinRE)」と呼ばれる修復ツール一式
- 場合によっては、「そのPC用の再インストールデータ」の一部/全部
をUSBメモリに書き出したものが「回復ドライブ」です。
回復ドライブを使う典型的な場面
- Windowsが黒い画面・青い画面のまま起動しない
- 自動修復ループから先に進めない
- システムファイルが壊れてしまい、通常の起動ができない
- ブート領域が壊れてしまった
こうしたときに、回復ドライブから起動して「修復のメニュー」を表示し、Windowsの修復を試みるのが主な使い方です。
2. 回復ドライブで「できること」
まずは「何ができるのか」を整理しておきましょう。
ただし、PCメーカーやWindowsの入れ方(プリインストール/自分でインストール)によって内容は少し変わります。
① Windowsの回復メニューを起動できる
回復ドライブの一番基本的な役割は、
Windowsの通常起動ができないときでも、「トラブルシューティング」画面を表示できる
という点です。
ここから、次のような操作が行えます。
- スタートアップ修復(起動トラブルの自動修復)
- システムの復元(復元ポイントを使って元の状態に戻す)
- イメージでシステムを回復(システムイメージバックアップがある場合)
- コマンドプロンプトを使った手動修復(上級者向け)
- 「このPCを初期状態に戻す」(※条件付き)
Windowsが普通に立ち上がらなくなっても、「修復用のメニューに入れる」というだけで復旧の可能性はぐっと上がります。
② PCを初期状態に戻せる場合がある
PCの種類や作られ方によっては、
- 購入時の工場出荷状態
- あるいは「クリーンなWindowsのみ」の初期状態
に戻すためのデータが、回復ドライブに含まれる場合があります。
この場合、回復ドライブから起動して、
- 「ドライブから回復」
- 「工場出荷時の状態に戻す」
といったメニューを選ぶことで、Windowsを初期化することができます。
ただしここは環境差が大きいポイントなので、「注意点」のところで改めて整理します。
③ システム修復用のコマンドが使える
回復ドライブから「コマンドプロンプト」を起動すると、
sfc /scannow(システムファイルの整合性チェック)DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth(イメージの修復)bootrec /fixmbr//fixboot//rebuildbcd(ブート領域の修復)
などのコマンドを実行できます。
これはどちらかというと中級者〜上級者向けですが、「専門家に見てもらうときに必要になることが多い」機能です。
ユーザー自身が操作しなくても、「回復ドライブさえあれば、サポート側ができることが増える」というイメージでOKです。
④ 別ドライブにあるデータを救出できる場合も
回復ドライブから起動し、コマンドプロンプトや一部ツールを使うことで、壊れたWindows環境からデータを別の場所にコピーして救出することができる場合もあります。
- Cドライブは壊れているが、Dドライブや外付けHDDは生きている
- 完全に初期化する前に、どうしても必要なファイルだけコピーしたい
といった場面で、「最後の頼み」として使えることがあります。
ただし、BitLockerなどで暗号化されている場合や、ストレージ自体が物理的に壊れている場合は難しくなります。
3. 回復ドライブで「できないこと」・過信しない方がいいポイント
ここが一番大事です。
回復ドライブがあると安心感は高まりますが、「これさえあれば絶対大丈夫」というお守りではありません。
① すべてのトラブルが必ず直るわけではない
回復ドライブはあくまで「修復のためのツールを起動する手段」です。
以下のような場合は、回復ドライブを使っても直らないことがあります。
- SSD / HDD 自体が物理的に故障している
- データが完全に破損している
- マザーボードやメモリなど、ハードウェア側に問題がある
- ウイルス・マルウェアにより深刻なダメージを受けている
この場合、回復ドライブから起動できたとしても、修復に失敗したり、そもそもストレージを認識しないこともあります。
② 他のPCには基本的に使えない
回復ドライブは、作成したPC専用と考えるのが基本です。
- メーカー独自ツールやドライバ構成が違う
- CPUやチップセットの世代が違う
- ライセンスの扱いが異なる
などの理由から、AというPCで作った回復ドライブを、Bという別PCの復旧に使うことは想定されていません。
「家族のPC用に1本作っておけば、どのPCでも直せるUSB」ではない、という点に注意が必要です。
③個人ファイルは基本的に守ってくれない
回復ドライブは、「Windowsを動かすための最低限の環境」を復旧することが目的です。
- ドキュメント
- 写真・動画
- デスクトップ上のファイル
といった個人ファイルの保護は、回復ドライブの仕事ではありません。
初期化や「ドライブから回復」を実行すると、Cドライブのデータが消えてしまう可能性が高いため、
「大事なデータは別途バックアップ(外付けHDDやクラウドなど)を取る」
ことが絶対条件です。
④メーカー・構成によっては「工場出荷時に戻せない」こともある
最近のPC、とくに
- 自分でWindowsをクリーンインストールしたPC
- Windows 11をあとから入れた自作PC
- メーカーの回復パーティションを削除してしまったPC
などでは、回復ドライブを作っても「工場出荷時の状態に戻すイメージ」は含まれないことがあります。
その場合は、
- Windowsの修復メニューの起動
- シンプルな「このPCを初期状態に戻す」(Windows標準)
まではできても、メーカー独自アプリや最初から入っていたソフトまで完全再現することはできません。
「買ったときと全く同じ状態に戻る回復USB」とは限らない、というのがポイントです。
⑤ ストレージ交換後は使えない/制限されるケースも
ストレージ(HDD → SSD など)を交換した場合、
- 回復ドライブから起動しても、元の回復情報を正しく使えない
- 容量の違いで回復処理が失敗する
などのケースもあります。
とくにメーカー製PCでは、「工場出荷時に戻す」処理が、工場出荷時と同じストレージ構成を前提にしていることも多いため、ストレージ換装を検討している場合は要注意です。
4. 回復ドライブとよく混同される4つのもの
ここからは、「これって何が違うの?」と混乱しがちなものを、サクッと整理しておきます。
① 回復パーティションとの違い
- 回復パーティション
- PCのストレージ内にある、隠し領域
- Windowsの回復環境や、メーカー独自のリカバリーデータが入っている
- 通常はエクスプローラーに表示されない
- 回復ドライブ
- その回復環境の一部/全部を、USBメモリにコピーしたもの
- 内蔵ストレージが壊れた・削除された場合でも、外付けのUSBから起動できる
イメージとしては、
「回復パーティションの“コピー”を外付けに逃がしたのが回復ドライブ」
という感じです。
②インストールメディア(インストールUSB)との違い
Microsoft公式の 「インストールメディア作成ツール(Media Creation Tool)」 を使って作るUSBは、Windows本体のインストールデータだけを入れたUSBです。
- インストールメディア
- どのPCでも(条件を満たしていれば)使える
- 完全にクリーンなWindowsを入れ直すのに向いている
- メーカー独自のソフトや初期アプリは含まれない
- 回復ドライブ
- 基本的には作成したPC専用
- そのPCの状態に合わせた回復環境が入る
- メーカーによっては工場出荷時のイメージも含まれる
両方あると理想ですが、優先度としては、
① データのバックアップ
② WindowsのインストールUSB
③ 余裕があれば回復ドライブ
という順番で考えると現実的です。
③システムイメージバックアップとの違い
システムイメージは「そっくりそのままコピー」ですが、回復ドライブはあくまで「修理工場の入口」と考えると分かりやすいと思います。
- システムイメージバックアップ
- 指定したタイミングのCドライブの中身(Windows+アプリ+設定)を丸ごと保存
- 復元すれば、「その時点の状態」に一気に戻せる
- 容量が大きい
- 回復ドライブ
- あくまで「修復メニュー」を起動するためのもの
- イメージバックアップがあれば、それを復元する“入り口”として使える
④通常のファイルバックアップとの違い
- ファイルバックアップ
- ドキュメント・写真・動画・仕事のデータなど
- 「消えたら困るもの」を外付けHDDやクラウドにコピーしておく
- 回復ドライブ
- Windowsを直すためのツール
- 個人ファイルは基本的に対象外
「回復ドライブがあるからバックアップはいらない」
というのは完全な誤解です。
5. 回復ドライブは作っておくべき?おすすめの考え方
では、実際のところ「回復ドライブは作っておくべき?」というと――
① 結論:作れるなら作っておいた方が“保険”になる
- USBメモリ(16GB〜32GB程度)が1本用意できる
- あとでどのPCのものか分からなくならないよう、ラベルやメモを付けて保管できる
この2点をクリアできるなら、作っておく価値は高いです。
とくに、
- ノートPCでストレージ交換が難しい機種
- メーカー独自のリカバリーデータが入っているPC
- 自宅にPCが1台しかなく、壊れると本当に困る環境
こうした場合は、“お守り”として用意しておく方が安心です。
回復ドライブ作成には、信頼できるメーカーのUSBメモリ(16〜32GB以上)を1本用意しておくと安心です。
一度作った回復ドライブは、他のデータ保存には使わず「非常用」として保管しておきましょう。
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②ただし「これさえあれば何とかなる」とは思わないこと
繰り返しにはなりますが、
- 回復ドライブがあっても、ハードウェア故障は直せない
- 個人ファイルの保護は別途バックアップが必要
- 他のPCに流用はできない
- ストレージ交換後は使えないこともある
といった限界があります。
「回復ドライブ」+「インストールUSB」+「データのバックアップ」
の3つが揃って、ようやく「万が一にかなり強い状態」になります。
6. 回復ドライブ作成のタイミングと注意点(ざっくり)
詳しい手順は別記事でじっくり解説するとして、ここではポイントだけまとめておきます。
① 作成に向いているタイミング
- PCを購入して、初期セットアップが終わった直後
- 大きなバージョンアップ(例:Windows 11 24H2 への更新)の後
- ひと通り環境を整え、「今の状態を守りたい」と感じたとき
※プリインストールのソフトも含めて完璧に残したい場合は、「システムイメージバックアップ」も検討するとさらに安心です。
②用意するUSBメモリ
- 容量:16GB〜32GB程度(環境によって要求容量が変わります)
- 他のデータは消えてよいもの(作成時に中身が削除されるため)
- Windows 10 / 11 の回復ドライブ専用としてラベリングしておく
③作成時によくあるトラブル
- USBメモリの不良・相性で作成に失敗する
- セキュリティソフトや常駐ソフトの影響でエラーになる
- システムファイルが既に壊れており、回復環境がコピーできない
こういった場合は、
- 別のUSBメモリを試す
- 一時的にセキュリティソフトを止めてみる
sfc /scannowやDISMでシステムを整えてから再挑戦
といった手順が必要になることがあります。
7. よくある疑問Q&A
最後に、読者が気にしそうなポイントをQ&A形式で補足しておきます。
Q1. 回復ドライブを作ったら、回復パーティションは削除してもいい?
A. 基本的にはおすすめしません。
両方あるからこそ、より柔軟な回復ができるケースも多いためです。
ストレージ容量を少しでも空けたいなら、ほかの方法での整理を優先しましょう。
Q2. Windows 10 で作った回復ドライブは、Windows 11 にしてからも使える?
A. 原則として、その時点の環境に対応した回復ドライブを作り直すのがおすすめです。
メジャーバージョンアップ後は、最新の状態に合わせて回復ドライブを作り直す方がトラブル時に安心です。
Q3. 回復ドライブさえあれば、バックアップはいらない?
A. いります。必須です。
回復ドライブは「Windowsをどうにか動くようにする」ためのもので、
あなたの大事なデータ(写真・仕事のファイルなど)を守ってくれるものではありません。
Q4. USBメモリはずっと差しっぱなしにしておいた方がいい?
A. 使うとき以外は抜いて、わかりやすい場所に保管するのがおすすめです。
- 「PC名+作成日」などを書いたラベルを貼る
- 取扱説明書や保証書を保管しているファイルに一緒に入れておく
といった形で、非常時にすぐ取り出せる場所に置いておきましょう。
まとめ:回復ドライブは「万能薬」ではないが、あると“かなり心強い”保険
ここまで見てきたように、回復ドライブには次のような性質があります。
- ✅ Windowsが起動しないときでも、修復メニューを起動できる
- ✅ 場合によっては、工場出荷時や初期状態への回復も可能
- ✅ システムイメージやバックアップがあれば、それを復元する“入り口”になる
- ❌ 個人ファイルを自動的に守ってくれるものではない
- ❌ すべてのトラブルが必ず直るわけではない
- ❌ 他のPCには基本的に使えない
だからこそ、
「回復ドライブ」+「インストールUSB」+「日頃のバックアップ」
この3つの組み合わせで、はじめて“本当にトラブルに強いPC環境”と言えます。
もしこの記事を読んで、
- まだ回復ドライブを作っていない
- バックアップも取っていない
- インストールUSBも持っていない
という方がいたら、今日のうちにできることから1つだけでも進めてみてください。
「いざというとき、過去の自分がちゃんと準備してくれていて助かった」
そう思える日が、きっと来ます。

