
PC入れ替え・初期化・OS移行のたびに「設定の戻し」「アプリの入れ直し」「ユーザーからの問い合わせ」が増えて困っていませんか?
そこで登場したのが、組織向けに用意されたWindows Backup for Organizationsです。
ただし名前に「Backup」と付いているものの、これは“ファイルやディスク丸ごと”をバックアップする仕組みではありません。主役は、Windowsの設定とMicrosoft Storeアプリの一覧(復元時に再インストール/スタートに戻す)をクラウドに保持し、新しい端末に素早く環境を戻すことです。
この記事では、Windows Backup for Organizationsのできること/できないこと、導入条件、Intuneでの有効化手順、従来のバックアップとの違い、運用で詰まりやすい注意点まで、まとめて解説します。
Windows Backup for Organizationsとは?
Windows Backup for Organizationsは、組織のWindowsデバイス移行をスムーズにするためのエンタープライズ向け機能です。ユーザーの作業環境のうち、主に次をクラウドに保存します。
- Windowsの設定(設定アプリで管理される各種設定を中心)
- Microsoft Storeアプリの一覧(復元後に再インストールしてスタートに戻せる)
目的は「災害対策でデータを守る」よりも、端末交換・初期化・OS移行で“同じ使い心地”を素早く再現すること。PC配布や更改が多い組織、リモートワークでITが現場に触れない組織ほど効果が出ます。
重要:これは「ユーザーデータ」のバックアップではありません
Windows Backup for Organizationsが扱うのは、基本的にWindows設定とStoreアプリの一覧です。
ドキュメント等のファイルやデータのバックアップは対象外なので、別途OneDriveなどの仕組みが必要です。
個人向け「Windows Backup」との違い
個人向けの「Windows Backup」は、主に個人のMicrosoftアカウント+OneDriveと組み合わせて使うイメージです。一方、Windows Backup for OrganizationsはEntra IDとIntuneを前提に、管理者が組織単位で制御できる点が決定的に違います。
| 比較項目 | Windows Backup(個人) | Windows Backup for Organizations(組織) |
|---|---|---|
| 管理主体 | ユーザー本人 | 管理者(Intune/Entra) |
| 対象 | 個人のPC | 組織のWindows 10/11デバイス |
| 復元の狙い | 個人の設定引き継ぎ | 端末移行の標準化・工数削減 |
| データ(ファイル) | OneDrive等で補完 | OneDrive等で別途実装が前提 |
主な機能(できること)
- Windows設定のバックアップ/復元(対象はカタログで明確化)
- Microsoft Storeアプリの一覧をバックアップ(復元時に再インストールしてスタートに反映)
- Intuneでバックアップを有効化(設定カタログで制御)
- 復元(Windows Restore)をテナント側で有効化して、OOBE(初期設定)経由で環境を戻す
できないこと(勘違いされやすい点)
- ユーザーファイル(ドキュメント等)のバックアップ/復元は目的外(OneDrive等が推奨)
- Win32アプリ(一般的なデスクトップアプリ)の丸ごと復元は対象外(Storeアプリの一覧が中心)
- ディスクイメージ/ベアメタル復旧のような「従来のバックアップ」は代替しない
導入要件(ざっくり把握)
Windows Backup for Organizationsは、Microsoft Entra 参加(Entra joined / hybrid joined)と、Intuneを使った管理が基本前提です。
- デバイス:サポートされるWindows 10/11(バックアップの可否・復元の可否は条件で差が出ます)
- 参加状態:Microsoft Entra joined / hybrid joined
- 管理:Microsoft Intune(有効化・復元設定の制御に使用)
- ライセンス:Intuneが利用できるMicrosoft 365/EMS等(例:Microsoft 365 E3/E5、Business Premiumなどに含まれる)
ポイントは、「バックアップできる」=「復元までフルでできる」ではないこと。復元側(Windows Restore)の要件は運用設計に直結するので、先に“復元する端末条件”から確認するのが安全です。
導入方法(Intuneで有効化する手順)
Windows Backup for Organizationsは既定で無効です。Intune側でバックアップ設定を配布し、さらにテナントで復元ページを有効化する、という流れになります。
手順1:バックアップ(Backup)を有効化
- Intune 管理センターで Windows の構成プロファイル(設定カタログ)を作成
- Windows Backup for Organizations 関連の設定を「有効」にして対象デバイスへ割り当て
設定場所や具体的な項目は、Microsoft Learn のIntune手順に沿って設定します(UIの名称は更新されることがあります)。
手順2:復元(Restore / Windows Restore)をテナントで有効化
- Intune の「Enrollment(登録)」関連の設定で、Windows Backup and Restore を有効化
- 復元ページを表示する設定(Show restore page)などを有効化して保存
復元は、ユーザーが新端末の初期設定(OOBE)でサインインした後に適用される流れが基本です。
従来のバックアップとの違い(何を置き換え、何を置き換えない?)
Windows Backup for Organizationsは「バックアップ」という言葉から、ファイルの保護や障害復旧まで全部やってくれると誤解されがちです。実際には、端末移行の工数削減が中心で、従来のバックアップと役割が違います。
| 目的 | Windows Backup for Organizations | 従来のバックアップ(例:イメージ/ファイル/3-2-1) |
|---|---|---|
| 端末移行を速くする | ◎(設定+Storeアプリ一覧) | △(復元はできるが手間が大きい) |
| ユーザーファイルを守る | ×(OneDrive等が必要) | ◎ |
| 障害・ランサム対策 | △(設計次第) | ◎(オフライン保管等ができる) |
| 管理者の運用負荷 | ○(Intuneで統制) | △〜×(製品・設計で差) |
つまり、「設定移行の仕組み」+「データ保護(OneDrive/バックアップ製品)」を組み合わせるのが現実的です。
メリット(導入すると得すること)
- 端末更改・OS移行が速くなる:初期設定や細かな環境戻しの手間が減る
- 問い合わせが減る:「設定が消えた」「いつもの配置がない」といった初期混乱が減る
- リモート環境に強い:現場に触れなくてもクラウド復元の流れを作れる
- BCPの“復旧スピード”に寄与:端末交換時に業務復帰が早い
デメリット・注意点(ここで詰まりやすい)
- ファイルは守れない:データはOneDrive等が前提
- 復元できる範囲に限界:Storeアプリ一覧が中心で、Win32アプリは別対応
- 既定で無効:Intuneの構成が必要
- 要件の差:バックアップ可でも復元側要件を満たさないと“戻せない”
- ネットワーク設計が必要:端末台数が多いほど帯域・タイミング設計が重要
個人利用の代替案(近いことをする方法)
Windows Backup for Organizationsは組織(Entra/Intune)前提なので、個人が同じ形で使うのは難しいです。目的が「環境とデータを守る」なら、次の組み合わせが現実的です。
- 設定・主要フォルダー:OneDrive(既知のフォルダー移動/同期)
- Officeも含めて整える:Microsoft 365(1TBつき)
- 大事なデータの二重化:外付けSSD/HDDに定期バックアップ(ファイル履歴やバックアップソフト)
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まとめ:これは「端末移行の切り札」。データ保護は別で組む
Windows Backup for Organizationsは、Windows設定とStoreアプリ一覧をクラウドに保持し、新しい端末で素早く“いつもの環境”に戻すための機能です。
一方で、ユーザーファイルのバックアップやディスク丸ごとの復旧を置き換えるものではありません。OneDrive等のデータ保護と組み合わせて、はじめて“詰まない移行設計”になります。

