
Windows 11のPCで、S/PDIF端子(光デジタル出力)から突然音が出なくなった…
そんなトラブルが近年増えています。とくに映画や音楽をAVアンプやDAC経由で楽しんでいるユーザーにとっては、死活問題です。
本記事では、S/PDIFを利用する環境で発生しやすい音声トラブルの原因と、2025年時点で有効な対処法を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
S/PDIF(光デジタル端子)とは?
光ファイバーケーブルを使って、デジタル音声を外部オーディオ機器に送るための端子です。
S/PDIFの仕様
- 伝送:デジタル(光/TOSLINK)
- 送れる音:
- PCMステレオ(2ch) … 〇
- Dolby Digital / DTS(圧縮5.1) … 〇(=ビットストリーム出力時)
- 非圧縮5.1/7.1 LPCM、Dolby TrueHD、DTS-HD、Atmos(TrueHDベース) … ✕(帯域/規格の限界)
→ 「映画の5.1が出ない」は“壊れている”とは限りません。アプリ/AVアンプ側も含めたビットストリーム設定が必要です。
ノイズに強く、音質の劣化も少ないため、AVアンプや外部DACでの高音質再生に最適です。
よくあるトラブルとタイミング
- Windowsアップデート後に音が出なくなった
- S/PDIFが出力先として選べない
- PCM音声は出るが、Dolby DigitalやDTSが出力されない
- 再起動後に設定が初期化される
これらのトラブルは、2024年後半から登場したWindows 11 バージョン24H2以降で顕著になっています。
症状別の最短チェック(上から順に)
A. まったく音が出ない
- 右下スピーカー → サウンド設定 → 出力 → S/PDIF / Digital Audio を選ぶ
- 「無効なデバイスを表示」をオン → もし無効なら有効化
- AVアンプ/DACの入力がOPT/TOSLINKになっているか確認
- ケーブル・端子の差し直し(コネクタの浮き・端面の汚れ)
- 別ソース(YouTube/ローカルWAV)でテスト
B. PCMは鳴るが5.1が出ない(Dolby/DTSが出ない)
- コントロールパネル → サウンド → 再生 → S/PDIF → プロパティ
- 「サポートされている形式」で Dolby/DTS がリスト/チェックされているか確認
- 再生アプリ(例:VLC、MPC-BE、Netflixアプリ等)のビットストリーム/パススルーをオン
- AVアンプ側がDolby/DTSデコードになっているか(PCM固定になっていないか)
C. 再起動の度にS/PDIFが消える/既定が変わる
- ドライバをロールバック or メーカー版に更新
- Windowsの自動ドライバ更新を抑止(後述)
- HDMI音声との競合なら、普段使わないHDMIデバイスを既定にしない/無効化で優先度を固定
D. 出力デバイス一覧にS/PDIFが出ない
- 再生デバイスの空白で右クリック → 無効なデバイスを表示
- デバイスマネージャー → サウンド → 目的デバイスが!や×になっていないか
- 別ドライバへ切り替え(メーカー配布/Windows標準)
- Windows Audio と Windows Audio Endpoint Builder が「実行中」か(サービスで確認)
【注意】2025年のWindowsアップデートによる影響
更新プログラム | 報告されている影響 |
---|---|
KB5037853 | Realtekドライバが自動更新され、S/PDIF出力が非表示に |
KB5039312 | Windowsの音声設定が初期化され、光出力が無効化される |
アップデート直後に音が出なくなった場合は、まずこれらの影響を疑いましょう。
具体的な設定手順(失敗しにくい順序)
3-1 既定デバイスとフォーマット
- 既定の出力を S/PDIF に設定
- サウンドの詳細設定 → S/PDIFのプロパティ
- 全般:デバイスを「既定にする」
- 拡張:すべての音響効果を無効化
- 詳細:24bit/48kHz(または44.1/48kHz)で安定するか確認
- サポート形式:Dolby/DTS にチェックが入るか確認(入らない機種もあり)
3-2 アプリ側のビットストリーム
- 動画再生プレイヤー(例:VLC)
- 出力装置:S/PDIF
- オーディオ出力モジュール:WASAPI(排他)など安定度の高いもの
- パススルー/ビットストリーム:有効
- ストリーミング(Netflix/Prime Video)
- アプリ/ブラウザ差で挙動が変わることがあるため、別経路でも試す
- 音楽再生(foobar2000など)
- WASAPI(排他)で2ch PCMをクリアに出す構成が◎
4. ドライバで直るケース(更新/ロールバック)
4-1 手順
- デバイスマネージャー → サウンド → 対象デバイスを右クリック
- 「ドライバーの更新」→ 自動/手動(メーカー配布版を推奨)
- 不具合後なら「ドライバーを元に戻す」で直前版へ
- うまくいかない時は一度アンインストール(ドライバ削除にチェック)→ 再起動 → 既定ドライバ or メーカー版を再導入
4-2 自動ドライバ更新の抑止(事故予防)
- 設定 → システム → バージョン情報 → 関連設定 → システムの詳細設定 → ハードウェア → デバイスのインストール設定 →
「いいえ(デバイスが正常に動作しない可能性があります)」 を選択 - Windows Updateの「オプションの更新」からオーディオドライバを入れない運用
- 必要に応じて「グループポリシー/レジストリ」でさらに強めの抑止(企業・上級者向け)
5. Windows Updateの影響と回避
- 品質更新やドライバ配信のタイミングでS/PDIFが非表示/既定が変わる事例は珍しくありません。
- 対処方法
- 更新の一時停止で様子見(最大5週間)
- 問題発生直後は 更新履歴→更新プログラムのアンインストール を検討
- 以後は上記の自動ドライバ抑止で再発防止
6. サービス/システム側の復旧(鳴らない時の“地ならし”)
- サービス(services.msc)
- Windows Audio / Windows Audio Endpoint Builder → 「実行中」に
- システム整合性:管理者のコマンドプロンプトで
sfc /scannow DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
- イベントビューアー:Windowsログ→システム/アプリでAudio/Driverのエラー有無を確認
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まずは“つながり”を安定させる
- 🔗 光デジタル(TOSLINK)ケーブル
カチッと奥まで差さる高精度フェルール。差し込み不良が原因の“無音”をまず排除。 - 🎛️ ミニTOSLINK変換(3.5mm光⇄角型)
ノートの丸型光端子にも対応。相性切り分け用に1個常備。 - 📐 L字TOSLINKアダプタ
壁ピタ設置でも抜けにくく、背面干渉による瞬断を回避
7. BIOS/UEFI・物理レイヤの見直し
光ケーブルの品質/曲げ、端面の汚れ、発光確認(送信側トスリンクが赤く発光しているか)
マザーボードの HD Audio / SPDIF 項目が無効化されていないか
フロント/リア端子設定の競合(オンボード+USBオーディオの多重)
隠れエラーを見つける方法
設定をすべて見直しても音が出ない場合、Windows内部で「既定の出力処理」が正しく機能していないケースがあります。
このようなときは、以下の手順を試すことで問題の根本を探れることがあります。
- 「イベント ビューアー」を開いて、オーディオ関連の警告・エラーが発生していないか確認
- 「トラブルシューティングツール」(設定 → システム → トラブルシューティング → その他のトラブルシューティング)で「オーディオの再生」を実行
- 「SFC /scannow」や「DISM」コマンドを用いたシステム修復
これにより、構成ファイルやレジストリの破損が原因で音が出なくなっていた場合でも修復できる可能性があります。
【裏ワザ】どうしても音が出ないときは?
・USB DAC(同軸/光出力付きのモデルだと経路を柔軟に変更可)
・HDMI音声→AVアンプ(S/PDIFの帯域制限を回避。eARC対応なら上位フォーマットも)
・HDMI音声分離器(Audio Extractor)でHDMI入力から光分岐
・Linux等での切り分け(ハード故障かOS/ドライバ要因かを判断)
9. 音質向上のコツ(S/PDIF派の運用術)
- 拡張効果はオフ(Windows側のEQやエフェクトを切る)
- WASAPI(排他)でプレイヤーからダイレクトに出力
- ケーブルの見直し(嵌合が甘い/緩いものはドロップやノイズの原因)
- アプリ個別のミュート/音量を必ず確認(OSとは独立している場合あり)
【予防策】Windowsにドライバを勝手に変えさせない方法
Windows Updateによる自動ドライバ更新を無効化することで、S/PDIFが勝手に消えるリスクを減らせます。
手順(Windows 11)
- 設定 → システム → バージョン情報 → 関連設定 → システムの詳細設定
- 「ハードウェア」タブ →「デバイスのインストール設定」
- 「いいえ(デバイスが正常に動作しない可能性があります)」を選択 → 保存
よくある質問(FAQ)
Q. S/PDIFで“非圧縮の5.1LPCM”は出せますか?
A. いいえ。S/PDIFは帯域的に2ch PCMまたは圧縮5.1(Dolby/DTS)までです。非圧縮マルチはHDMIなどを使用してください。
Q. PCMは出るのにDolby/DTSだけ出ないのはなぜ?
A. 再生アプリのビットストリーム/パススルー設定がオフ、またはAVアンプ側のデコード設定/対応が原因のことが多いです。
Q. HDMIモニターを繋ぐとS/PDIFが既定から外れます。
A. HDMI音声が“新規デバイス”として既定に昇格しがちです。S/PDIFを既定に固定し、不要なHDMIデバイスは無効化/優先度を下げましょう。
Q. アップデート後にS/PDIFが消えました。
A. ドライバのロールバック/再導入 → 自動ドライバ更新の抑止を。必要なら直近の品質更新をアンインストールして検証します。
Q. 何をやっても鳴らない…
A. サービス稼働、SFC/DISM、イベントログ、別OS/別デバイスでの切り分けまで行い、経路そのものの置き換え(USB DAC/HDMI)も検討しましょう。
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映画の5.1を安定伝送するなら
- 🎧 USB DAC(S/PDIF出力付き)
オンボード依存を脱却。USB→光/同軸で安定したビットストリーム出力。 - 🎬 HDMIオーディオエクストラクタ
映像は4K60のまま、音声だけ光へ分離。Dolby/DTSパススルー対応品を。
まとめ|S/PDIFトラブルの3ステップ確認
S/PDIFから音が出ない場合は、以下の3点を重点的に確認しましょう。
表示されない → 表示/既定化の基本整備
2chしか出ない → 仕様理解+ビットストリーム設定
更新後に壊れた → ドライバ対策+自動更新抑止
最終手段 → 経路を変える(USB DAC/HDMI)
これらの設定を見直すことで、多くのトラブルが解消します。