
はじめに(状況解説)
2025年10月配信の更新適用後、「内蔵の SATA SSD を認識しない/急に消えた」という相談が一部で見られます。
ただし、マイクロソフトが“アップデートが原因でSSDが壊れた”と公式に認めた事実は現時点で確認できません。8月の KB5063878(Windows 11 24H2)や KB5062660 以降、「大量連続書き込み後にドライブが消える/破損する」とするユーザー報告を受け、Microsoft・SSD各社が調査・説明を行ってきましたが、Microsoftは「関連なし」との見解を示し、Phison も“初期(検証用)ファームウェアなど条件依存”の可能性を示唆しています。
重要:“公式の既知の不具合”としてSATA SSD消失が掲示されているわけではありません。 Windows 11 24H2のリリースヘルスでも、現時点でSSD消失は明記されていません(別件のIntel SSTドライバ既知問題はあり)。
本稿では、「SATA SSDが認識されない/見えなくなる」症状に絞って、現実的に役立つ切り分け手順・回避策をまとめます。
(参考:8月以降の「大量書き込み後に消える」系レポートは別枠で継続観測中。詳細は参考リンク欄を参照。
症状の典型例
- BIOS 画面でも SSD が表示されない(または出たり消えたりする)
- Windows 起動後、エクスプローラー/ディスクの管理に表示されない
- デバイス マネージャー>ストレージコントローラーに警告(三角)や不明デバイス
- 大量コピー/ゲームの大規模パッチ(50GB+)など連続書き込み直後に発生(過去報告で多いトリガー)
原因候補(技術的背景・SATA 観点)
「Windows更新=SSD破壊」とは断定できません。実務上は複合要因で起きます。
- SATAコントローラ/ドライバの相性
OS更新でI/Oパターンや電源制御のタイミングが変わると、古いAHCI/RAIDドライバで不整合が露呈することがあります。 - 電源制御/省電力(Link Power Management 等)の干渉
待機復帰の瞬間にリンクが落ち、OSから見えなくなるケース。 - SSD側ファームウェアの不具合/古さ
過去報告では特定条件下の連続書き込み後に消失・破損が疑われましたが、ベンダは初期ファームや環境依存を示唆。 - BIOSの古さ/SATAモードの不整合(AHCI⇔RAID切替、CSM/UEFI周辺)
- 物理層(ケーブル接触・SATAポート劣化・電源不足)
“たまたまアップデート直後に顕在化”はよくあります。 - 他ソフトのフック
常駐型セキュリティ、バックアップ、暗号化(BitLocker)等がI/Oに介入し、タイミング競合を起こすことがあります。
まずはここから:最短の切り分けフロー
目標:「OS側の見え方」か「ハード側の消失」かを即判定し、ロールバック可否を早く決める。
1. BIOS/UEFI で認識しているか確認
- 認識しない:物理層 or BIOS/電源管理の線が濃厚。
→ SATAケーブル/電源ケーブル差し直し、別SATAポートへ接続、可能なら別PCでの認識確認。 - BIOSでは認識、Windowsだけ見えない:OS/ドライバ/パーティション側で切り分けへ。
2. Windows 側の基本チェック
- デバイス マネージャー:
「IDE ATA/ATAPI コントローラー」「ストレージ コントローラー」配下に警告がないか。
→ ドライバ更新(Intel RST/AMD SATA AHCI 等、マザボ配布版を優先)。 - ディスクの管理(diskmgmt.msc):
未初期化/ドライブ文字未割り当ての可能性。右クリック→ドライブ文字の変更を試す。 - 高速スタートアップを一時無効:
「電源オプション>電源ボタンの動作を選択>高速スタートアップを有効にする」のチェックを外す。
3. 直前の更新をロールバック(安全第一)
- 更新プログラムのアンインストール
「設定>Windows Update>更新の履歴>更新プログラムをアンインストール」
または管理者でコマンド:wusa /uninstall /kb:<KB番号>
※ 8月の件は KB5063878/KB5062660 が焦点でしたが、10月適用分で発生したならその月の累積更新のKBを確認・ロールバックを検討。Microsoftは KB5063878と故障の因果を否定していますが、現象が解消するなら暫定回避として有効。
4. ファームウェア/BIOS 更新
- SSDメーカー提供ユーティリティ(Crucial Storage Executive、WD Dashboard、Samsung Magician 等)でSSD FW更新を確認。
- マザーボードBIOS/チップセット(Intel/AMD)も最新化。
- Phisonは公式声明で、初期ファームや周辺環境の影響に言及。最新FW適用は最優先。
5. コマンドでのOS整備(論理整合の確認)
- システムファイルとコンポーネントストアを点検・修復
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
sfc /scannow
- ※ 実害のあるストレージ障害が疑われるときは、むやみに書き込み系ツールを走らせない(まずバックアップ優先)。
6. 書き込み負荷の“抑制策”
- 過去の報告は「50GB超の連続書き込み」で再現しやすいとの指摘。
大容量コピーや大型ゲームパッチは、一気にやらず分割、別ドライブ経由に。
それでもダメなら:データ保全を最優先に
- 読み取り優先で救出:別PC・USB-SATAアダプタで接続し、読み取りできるうちに最重要データから退避。
- SMART 値の確認(代替処理済セクタ・CRCエラー・温度など)。異常が出ていればハード故障寄り。
- BitLocker を有効化していた場合は、回復キーを用意してから移設・復旧作業を行う。
- 復旧業者も選択肢。物理障害の兆候(通電で落ちる、発熱異常、異音等)があれば無理をしない。
予防策(今後のアップデートに備える)
- 定期バックアップ(イメージ+クラウド/外付けの二重化)
- 更新を即日適用しない:数日~1週間様子を見て初期報告を確認。AskWoodyなどのコミュニティ情報を参考にMS-DEFCONの水準も目安に。
- SSD/BIOS/チップセットの定期アップデート
- 温度管理(ヒートシンク・エアフロー)。ベンダも過去声明で放熱への配慮を促しています。
- 大容量書き込みの分割と検証用ドライブの用意(業務PCはまず検証環境で評価してから本番へ)
よくある質問(FAQ)
Q1. 本当に「Windowsの更新がSSDを壊している」のですか?
確定ではありません。 Microsoftは KB5063878 との因果を否定、Phisonも初期FWや条件依存を示しています。現象は環境差が大きく、最新FW/BIOS/ドライバでの再現性は限定的との説明が主流です。
Q2. 今月(10月)の更新は止めた方がいい?
業務マシンは“短期の様子見”が無難。 個人用途でもバックアップ後に適用を。発生時はロールバックで様子を見る判断が現実的です。公式の既知の不具合としては現時点で明記されていません。
Q3. 発生したらデフラグやベンチを回してもいい?
推奨しません。 書き込み負荷で状況が悪化する可能性があります。まずデータ退避→原因切り分けが先です。
関連・参考(経緯把握に)
- Microsoft Answers:24H2/KB5063878 適用後に「SSD消失」報告。条件は大容量連続書き込みなど
- AskWoody(MS-DEFCON 3):KB5063878 は注意喚起。消失・データ破損の報告をまとめ。
- BleepingComputer:Microsoftは因果関係を否定。
- Phison 公式声明:業界全体の報告を調査、初期FWや環境依存の可能性に言及。
- Tom’s Hardware/The Verge:報道・解説。早期ファーム/古いBIOSが絡むケースを紹介。
まとめ(編集部見解)
SATA SSDが“まったく認識されない”場合、物理層/BIOS/電源管理の影響も大きく、OS更新だけを単独犯と断定しにくいのが実情です。
一方で、「大量連続書き込み後に消える」系の報告(主に8月~)は一定数あり、最新FW/BIOS/ドライバへの更新と更新適用の慎重化は引き続き有効な自衛策です。
結論: 業務PCはバックアップ→小規模検証→本適用の三段構え。発生時はロールバック+FW/BIOS更新、書き込み負荷の分割で実害を最小化しましょう。
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