
はじめに
2025年9月の累積更新プログラム KB5065429 を適用した後、一部のアプリケーションで予期しない挙動が報告されています。代表的なのは AutoCAD(2022〜2026バージョン) の起動時にUAC(ユーザーアカウント制御)が表示される問題、そして OBS Studio+NDI環境 におけるラグやフレーム落ちです。
さらに、Windows 10 22H2が「最終バージョン」になる可能性も取り沙汰されており、アップグレードや運用方針の判断が迫られています。
本記事では、これらの不具合の内容と原因、Microsoftや開発元の対応状況、そしてユーザーが取るべき対処法をわかりやすく解説します。
AutoCAD(2022〜2026)でUACが表示される問題
症状
KB5065429を適用した環境で、AutoCADを起動すると 「管理者権限が必要です」 というUACダイアログが表示される場合があります。標準ユーザーで作業していた人にとっては大きな手間です。
原因
この問題は、Microsoftが2025年8月以降の更新で導入した MSI修復プロセスの強化(MSI Repair Hardening) が原因です。
MSI形式のインストーラで構成されたアプリケーションが起動時に自己修復を行うとき、従来はユーザー権限で処理できていた部分が「管理者権限必須」に変わりました。そのため、AutoCADのような大規模アプリは起動時に不必要なUACが出てしまいます。
対処法
- 最新パッチを適用する
KB5065429以降では順次修正が進められています。Windows Updateをこまめに確認しましょう。 - 管理者アカウントで実行する
一時的な回避策として、AutoCADを管理者として実行することでエラーは抑制できます。 - グループポリシーやKIR(Known Issue Rollback)の適用
企業環境では、Microsoftの提供するポリシー設定で修復処理の動作を制御することが可能です。
OBS Studio+NDIでラグやスタッターが発生
症状
配信ソフト「OBS Studio」でNDI(Network Device Interface)を利用して映像や音声を別PCに送信している場合、KB5065429を適用すると ラグ・カクつき・音声の乱れ が顕著になるケースがあります。特に「ディスプレイキャプチャ」を有効にしていると影響が出やすいと報告されています。
原因
更新プログラムによって、RUDP(Reliable UDP)プロトコル の処理に不具合が生じたことが原因とされています。RUDPは、UDP通信にTCP的な信頼性を付与する仕組みですが、今回の変更で過剰な再送処理や遅延が発生し、映像配信に不安定さをもたらしました。
対処法
- OBSのNDI設定を変更
RUDPではなく TCPモード または通常の UDPモード に切り替えることでラグを軽減できます。 - 最新パッチを適用する
Microsoftはこの不具合についても修正を進めており、KB5065429以降の累積更新で改善報告があります。 - 回避策として別のキャプチャ方式を使用
Display Captureではなく、ウィンドウキャプチャやゲームキャプチャを利用することで安定度を上げられる場合があります。
Windows 10 22H2は最終バージョンになる?
2025年9月現在、MicrosoftはWindows 10の新機能更新を打ち切り、22H2が最終バージョン になると案内しています。つまり今後はセキュリティ更新のみが提供され、OS自体の進化は止まります。
- サポート期限
Windows 10 Home/Pro:2025年10月14日まで
Windows 10 Enterprise/Education(ESU契約時):最大で2028年まで延長可能
このため、長期的に利用する場合はWindows 11(24H2以降)への移行が推奨されます。特に業務ソフトや配信ソフトを多用するユーザーは、最新OSへの移行を計画的に進めるのが安全です。
専門用語の解説(初心者向け)
- UAC(User Account Control)
アプリがシステムに大きな変更をしようとしたときに警告を出す仕組み。 - MSI(Microsoft Installer)
Windows向けのインストール形式。アプリが起動時に自己修復を行う場合がある。 - NDI(Network Device Interface)
映像や音声をLAN経由で別PCに送れる仕組み。配信者やスタジオでよく使われる。 - RUDP(Reliable UDP)
UDP通信のスピードに、TCP的な信頼性を組み合わせた通信方式。
[スポンサーリンク]
Windowsアップグレード前の備えとおすすめ製品
KB5065429の不具合対応やWindows 11への移行を行う前に、必ずデータのバックアップを取っておくことをおすすめします。また、最新環境で安心して作業を続けるために、以下の製品を活用してみてください。
▶ 外付けSSDを探す
▶ USBメモリを探す
▶ 解説本を探す
1. AutoCADユーザー向けの運用小技
- スタートアップを抑制する
AutoCADは起動時に多数のアドオンやプラグインを読み込むため、MSI修復処理が走りやすくなります。不要なアドオンをアンインストール、またはスタートアップ抑制のオプションを活用することで、起動時の負担を軽減できます。 - プロファイルの分離
業務でAutoCADを複数バージョン利用する人は、ユーザープロファイルを分けておくとトラブルが発生しても影響範囲を限定できます。特に22H2以降の更新では、同一PCに複数バージョンが混在していると修復動作が増える傾向が報告されています。
2. OBS+NDI配信での安定化テクニック
- LAN環境を見直す
RUDPの不具合に限らず、NDI配信はネットワークの遅延に敏感です。ルーターを挟まずスイッチングハブ直結にするだけで遅延が半減することもあります。 - GPUエンコードを使い分ける
OBSは「x264(CPU)」「NVENC(NVIDIA GPU)」「AMF(AMD GPU)」など複数のエンコード方式を選べます。パッチの影響でラグが出る場合は、別のエンコード方式を試すのも有効です。 - 録画と配信を分離する
配信用PCと録画用PCを分け、NDIではなくHDMIキャプチャボード経由にすることで、Windows更新の影響を受けにくくできます。プロ配信現場では昔から使われている安定手法です。
3. Windows Update管理の裏ワザ
- 「更新一時停止」機能の活用
22H2ユーザーは最大35日まで更新を一時停止できます。重大な不具合が出た直後に慌てて更新せず、様子を見たいときに便利です。 - KIR(Known Issue Rollback)の仕組みを理解する
Microsoftは重大不具合をサーバー側から「ロールバック」できるKIRを導入しています。管理者はグループポリシーで即適用できますが、家庭用PCでは反映まで最大24時間かかることがあります。KIRの有無を確認しておくと、不具合対応が楽になります。
4. 22H2最終版に備える工夫
- ハードウェア互換性の先取りチェック
Windows 11ではTPM 2.0やSecure Bootが必須となっています。アップグレード前に「PC正常性チェックツール」を実行して条件を満たしているか確認しておくと安心です。 - デュアルブートや仮想環境を利用
どうしても業務ソフトがWindows 10でしか動かない場合、Windows 11をメインにしつつ、Hyper-VやVMwareでWindows 10環境を残す方法もあります。将来的な互換性問題に備えられる裏技的運用です。
5. プロ向けの小ネタ
- イベントビューアーで原因特定
OBSのラグやAutoCADのUAC表示は、イベントビューアーの「アプリケーションログ」や「Windowsインストーラログ」に痕跡が残ります。どのモジュールが原因か特定できれば、次回以降のトラブルシューティングが格段に楽になります。 - 配信者は「テスト配信環境」を別PCに用意
本番環境を常に最新パッチにせず、1台を“実験機”としてWindows Updateを先に適用。問題がなければ本番機に反映する…という運用でリスクを下げられます。
まとめ
Windows 10 22H2は事実上の最終バージョンとなるため、長期利用を考える場合はWindows 11へのアップグレード計画を進めておくことが望ましい。
KB5065429以降、AutoCAD(2022~2026) で起動時にUACが出る問題、OBS Studio+NDI でラグが出る問題が発生。
原因は「MSI修復の強化」「RUDP処理の不具合」で、Microsoftが修正パッチを順次展開中。
対処法は、最新の累積更新プログラムを適用するほか、設定変更や一時回避策を利用すること。