
スマホでログインするとき、Microsoft Authenticatorのパスワード自動入力(オートフィル)を使っていた方も多いと思います。
ところが 2025年夏、Microsoftはこの「パスワード管理&オートフィル機能」を Authenticatorから廃止しました。その結果、
- 「パスワードが急に出てこなくなった」
- 「保存しておいたはずのログイン情報が見えない」
- 「Edgeで使ってと言われるけど、どうしたらいいの?」
と戸惑っている方も多いはずです。
この記事では、
- いつ・何が・どう変わったのか(時系列)
- いまパスワードはどこにあるのか
- 今からやっておくべきこと(確認・移行・設定見直し)
- これからの「パスワードレス/パスキー」との付き合い方
を、できるだけ分かりやすく整理していきます。
そもそも Authenticator のオートフィルって何をしていた?
Microsoft Authenticator はもともと、
- Microsoftアカウントや職場/学校アカウントの2段階認証(ワンタイムコード・通知承認)
- パスワードレスサインイン(番号タップ・生体認証)
のためのアプリです。そこに後から追加されたのが、
- Webサイトやアプリのパスワード保存
- フォームのオートフィル(自動入力)
- 住所・支払い情報の保存
といった「パスワードマネージャー」としての機能でした。
つまり、スマホ版の“ブラウザ外付けパスワード管理機能”として使えていたわけです。
2025年に何が起きた?変更のスケジュール
Microsoft公式のサポート情報と各種報道をまとめると、
Authenticatorのオートフィル機能は次の流れで段階的に終了しました。
2025年5月:事前通知スタート
- Authenticatorアプリ内で、
「オートフィル機能の提供終了」の通知が表示され始めました。
2025年6月:新しいパスワードの追加・インポートが停止
- Authenticatorアプリ上で
新しいパスワードを追加したり、インポートしたりできなくなりました。
2025年7月:オートフィル自体が停止
- Webサイトやアプリのログイン画面で、
Authenticatorによる自動入力(オートフィル)が利用できなくなりました。
2025年8月1日ごろ:保存済みパスワードがアプリから見えなくなる
- 2025年8月以降、
Authenticatorアプリ内からパスワード・住所などの保存情報は参照できなくなりました。
注意しておきたいのは、
「Authenticatorアプリからは見えなくなるが、
Microsoftアカウントに紐づくデータとしては Edge 側に引き継がれている」
という点です。
一方で、ジェネレーターで一時的に作っただけで保存していなかったパスワードなどは削除されると案内されています。
じゃあ、いま自分のパスワードはどこにあるの?
Microsoftの方針としては、
「パスワードやオートフィルは Edge に一本化」 という形になりました。
● 基本イメージ
- Authenticator
- これから
- 2段階認証(MFA)
- パスワードレスサインイン
- パスキーの保管・認証
- もうできない
- パスワードの保存
- オートフィル
- これから
- Microsoft Edge
- これから
- パスワードの保存・同期・オートフィル
- 住所・支払い情報の保存・オートフィル
- これから
と役割分担された形です。
自分が Authenticator を「パスワード管理」に使っていたか確認する方法
一番重要なのは、「自分はAuthenticatorをパスワードマネージャーとして使っていたのかどうか」を確認することです。
1. スマホでの記憶を思い出してみる
- サイトやアプリのログイン時、
画面下から出てくる候補をタップしていたか? - その候補に、「鍵アイコン+Authenticator」らしき表示があったか?
もし心当たりがあるなら、Authenticator 内にパスワードを保存していた可能性が高いです。
2. Edge モバイルアプリで確認する
Authenticatorで保存していたパスワードは、
Microsoftアカウントに紐づいているため、基本的には Edge のパスワード管理画面に見える形で引き継がれます。
(※細かい画面構成はバージョンにより変わるため、ここでは流れだけ)
- スマホで Microsoft Edge アプリを開く
- 右下または右上の「…(メニュー)」→[設定]
- [パスワード]を開く
- サイト名やアプリ名が並んでいれば、そこに移行されている可能性あり
もしここに見覚えのあるログイン情報が並んでいれば、
「AuthenticatorからEdge側にデータが残っている」 と考えられます。
これからやるべきこと:3つのチェックリスト
チェック1:Edge側にパスワードがあるか確認する
上で書いたように、まずは
- Edge(PC版/スマホ版)で
- 「保存されたパスワード」が存在するかどうか
を確認します。
もしある程度のサイト・アプリ情報がそこに見えているなら、
「完全に消えた」わけではなく、Authenicater から Edge へ役割が移っただけと考えられます。
チェック2:他のパスワードマネージャーを使っていないか
すでに、
- 1Password
- Bitwarden
- KeePass 系
- Google パスワードマネージャー(Chrome)
- AppleのiCloudキーチェーン
など、別のパスワードマネージャーをメインにしている方は、
Authenticator終了の影響がほとんどない場合もあります。
「メインは別ツールだけど、いくつかだけAuthenticatorに残っている」
というパターンもあるので、念のためEdge側も含めて一度総点検しておくと安心です。
チェック3:重要サービスのログインができるか実際に試す
- Microsoftアカウント
- メインのメール
- クラウド(OneDrive など)
- よく使うショッピングサイト
- ネットバンキング・証券(ある場合)
など、「ここに入れなくなったら困る」サービスに自力でログインできるかを、今のうちに1つずつ確認しておくのがおすすめです。
Edgeに乗り換える?それとも他のパスワードマネージャーへ?
Authenticatorのオートフィル終了後、選択肢としては大きく2つです。
選択肢1:Microsoft Edge のパスワード機能に乗り換える
Microsoftの推奨はこれです。
- Windows PC でもスマホでも Edge を使う
- Edge の「パスワード保存」「オートフィル」を有効にする
- Microsoftアカウントで同期して、端末間で共有
メリット
- Authenticatorからの移行が比較的スムーズ
- Windows・Edgeとの相性がよい
- 追加アプリを増やさずに済む
注意点
- 「ブラウザに依存する形」なので、
- ChromeやFirefoxなど別ブラウザをメインにする人には向きにくい
- ブラウザ乗り換え時に、また移行作業が必要になる
選択肢2:別のパスワードマネージャーに移行する
すでに Chrome/Google や iCloud キーチェーン、
あるいはサードパーティのパスワードマネージャーを使っている場合は、
そちらをメインに据え直すという考え方もあります。
- すでに別の管理ツールが「メイン」であれば、
Authenticator側に残っているパスワードを手作業で移す(またはリセットして作り直す) - そのうえで、
- Authenticator → 2段階認証・パスキー
- パスワード管理 → 別ツール
と役割をはっきり分ける
という整理も、セキュリティ的には悪くありません。
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「パスワードレス」「パスキー」とAuthenticatorのこれから
Microsoftは、この変更を「パスワードからパスキーへの移行」の一環と位置づけています。
パスキーとは?
ざっくり言うと、
- Webサイト側が持っている鍵(公開鍵)と
- 自分の端末にある鍵(秘密鍵)
を組み合わせて認証する仕組みで、
長いパスワードを覚えなくても、端末の生体認証やPINだけでログインできる方式です。
- パスワードのように「漏洩して再利用される」リスクが低い
- フィッシングサイトにパスワードを入力してしまう…といった事故も防ぎやすい
といったメリットがあります。
Authenticator の役割
今後の Authenticator は、
- MicrosoftアカウントやEntra ID(旧Azure AD)用の
- パスワードレスサインイン
- パスキー
- 2段階認証
を担うアプリとして残り続けます。
「パスワードを保存して自動入力するアプリ」から
「パスワードレス・パスキー認証を担当するアプリ」へ
という方向にシフトした、と捉えると分かりやすいです。
これからの実用的な運用プラン例
最後に、Windowsユーザー・スマホユーザーが現実的に取りやすい運用例を3パターン挙げておきます。
パターンA:Microsoft中心で揃える
- パスワード管理 → Edge のパスワードマネージャー
- ログインの強化 → Authenticator(2段階認証+パスキー)
Windows+Edge メインの方なら、
この形が一番シンプルで管理しやすいと思います。
パターンB:ブラウザ別のパスワード管理+Authenticatorは「MFA専任」
- パスワード管理 →
- Chrome:Googleパスワードマネージャー
- Safari:iCloud キーチェーン
- Authenticator → Microsoftアカウント・仕事用アカウントの2段階認証・パスキーのみ
というふうに、「パスワードは各ブラウザ」「AuthenticatorはMFA専任」という役割分担もアリです。
パターンC:サードパーティのパスワードマネージャー+Authenticator
- パスワード管理 → 1Password/Bitwardenなど
- Authenticator → Microsoftアカウントのパスワードレス・2段階認証
仕事柄、複数プラットフォームをまたぐ方や、「パスワードは完全に1つのツールに集中させたい」方には、このパターンも根強いです。
まとめ:Authenticatorのオートフィル終了は「終わり」ではなく「役割の分離」
2025年6〜8月にかけて、Microsoft Authenticatorのパスワード保存・オートフィル機能は段階的に終了しました。
保存していたパスワードは、Authenticatorアプリからは見えなくなったもののMicrosoftアカウント側のデータとして Edge で扱う形に移行しています。
これからは、
・パスワード管理・オートフィル → Edge などの専用ツール
・2段階認証・パスキー → Authenticator
という形で役割分担されていきます。
まずは、
- Edgeや他のパスワードマネージャーに、パスワードがきちんと残っているか
- 重要なサービスに、自力で問題なくログインできるか
- Authenticatorは「何をするアプリ」として自分の中で位置づけるか
この3点を確認・整理しておくと、今後のパスワードレス時代への移行もスムーズになるはずです。
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