
はじめに
ExcelやWordなどでファイルを開いた際に、
「このファイルのソースが信頼できないため、Microsoftによりマクロの実行がブロックされました」
という警告が表示されて驚いたことはありませんか?
「パソコンが壊れたのでは?」「ウイルスに感染したのでは?」と不安になる方も多いのですが、実はこれはMicrosoftが意図的に導入したセキュリティ機能によるものです。
本記事では、このエラーの正体と背景を整理しつつ、安全にマクロを使いたい場合の具体的な解除方法を初心者の方にもわかりやすくご紹介します。あわせて、「そもそもマクロとは何か?」という基本や「企業での対応方法」についても補足します。
マクロとは何か?
まずは「マクロってそもそも何?」というところから確認しておきましょう。
- マクロとは?
ExcelやWordに搭載されている「作業を自動化するプログラム機能」で、VBA(Visual Basic for Applications)という仕組みを使って動作します。 - 便利な利用例
- 複雑な表計算をボタン一つで処理する
- 書類のフォーマットを自動で整える
- 定型レポートを瞬時に作成する
このように、業務効率を大きく改善できるとても便利な機能です。
一方で、「プログラムを自動で実行できる」という性質から、悪意あるマクロがウイルスを仕込む手段として利用されてしまったという経緯もあります。
なぜマクロがブロックされるのか?
背景にあるセキュリティの脅威
長年、世界中で「マクロ付きOfficeファイルを使ったマルウェア感染」が問題となっていました。
例えば、次のような流れです。
- 攻撃者が「請求書.xlsm」などと題した不審なファイルをメールで送信
- ユーザーが開くと「コンテンツの有効化」というボタンが表示される
- ユーザーがクリックすると、悪意あるマクロが自動実行 → ウイルス感染
こうした被害を防ぐため、Microsoftは2022年から「インターネット経由のファイルに含まれるマクロを既定でブロック」する仕様を導入しました。
どんなときにエラーが出るのか?
このエラーは、主に以下のような場面で表示されます。
- メール添付のExcel(.xlsm)やWord(.docm)ファイルを開いたとき
- インターネットからダウンロードしたファイルを開いたとき
- OneDriveやSharePointから初めて取得したファイルを開いたとき
つまり、「外部から取得した」と判定されたOfficeファイルが対象となります。
安全かどうかを確認するポイント
マクロは便利な機能ですが、悪用されるリスクがあるため、解除は必ず安全が確認できた場合にのみ行うようにしましょう。
確認ポイント
- 送信元は信頼できるか?
- 知っている取引先や社内の同僚からのファイルか?
- 不審なメールアドレスや、怪しい日本語表現のメールなら開かないで削除が安全です。
- ファイル形式を確認する
- マクロ有効形式は
.xlsm
や.docm
です。 - 「.pdf」に見せかけた偽装ファイルなどもあるため注意が必要です。
- マクロ有効形式は
安全が確認できた場合の解除方法
方法① ファイルのプロパティから解除
最も簡単で安全な方法です。
- 対象ファイルを右クリック → [プロパティ]
- 「全般」タブの下にある セキュリティ:このファイルは他のコンピューターから取得したものです の横にある [許可する] にチェック
- [OK] を押して閉じる
- 再度ファイルを開くとマクロが実行可能になります
方法② 信頼できるフォルダに保存する
複数のファイルを使う場合や、毎回解除するのが面倒な場合に便利です。
- Excelを開き、[ファイル] → [オプション]
- [セキュリティ センター] → [セキュリティ センターの設定]
- [信頼できる場所] を選択し、任意のフォルダを登録
- 今後そのフォルダに保存したファイルはブロックされず開けます
よくある質問(FAQ)
Q1. マクロを有効にすると本当に安全ですか?
→ 信頼できる相手から受け取ったファイルであれば大きな問題はありません。ただし、少しでも不安があれば実行しないのが原則です。
Q2. 社内ファイルなのに毎回ブロックされます。
→ OneDriveやSharePointを経由した場合、「インターネット由来」と判定されることがあります。管理者に「信頼できる場所」を設定してもらうと解決できます。
Q3. 解除方法が見当たりません。
→ 企業環境では、管理者がグループポリシーでマクロを強制的にブロックしている可能性があります。その場合は自分で解除できません。
企業ユーザー向け補足
- IT管理者は「グループポリシー」や「レジストリ」を通じて、組織全体でマクロの有効化/無効化を制御できます。
- セキュリティリスクを抑えるため、企業では「原則ブロック」「必要部門だけ例外許可」という運用が推奨されます。
裏技:マクロを安全に活用するための知識と小技
マクロは危険だから使わない…と思ってしまいがちですが、正しく設定すれば業務効率を大幅に上げられる強力なツールです。ここでは、知っておくと安心できる「裏技」的な活用知識を紹介します。
1. 「信頼できる場所」をフォルダ単位で登録する
毎回プロパティを解除するのは面倒ですが、「信頼できる場所」機能を使えば解決できます。
ExcelやWordの設定で「このフォルダ内のファイルは常に安全」と登録しておけば、その中のマクロ付きファイルはブロックされません。
例えば「C:\TrustedMacros」など専用フォルダを作り、そこだけ許可しておけば、万一の感染リスクを最小限にできます。
2. マクロを含まない形式で保存し直す
どうしてもマクロが不要な場合は、「マクロなし形式」で保存し直す裏技も有効です。
- Excelなら
.xlsx
- Wordなら
.docx
に変換すれば、マクロは完全に削除されます。これで誤作動やセキュリティリスクを心配せずにファイルをやり取りできます。
3. VBAコードを「読むだけ」で安全確認
少し慣れている方なら、マクロを実行する前に VBAエディタで中身をチェックする のもおすすめです。
- Excelで
Alt + F11
を押すとVBAエディタが開きます。 - 「見たことのない怪しい関数」や「インターネットに接続しようとするコード」が含まれていないかを確認できます。
これだけで「危ないマクロかどうか」の初歩的な見分けができます。
4. サンドボックス環境で試す
高度な方法ですが、どうしても怪しいファイルを開く必要がある場合は、仮想環境(VirtualBoxやHyper-Vなど)でテストするのも裏技です。
- メインPCとは切り離された環境で開けば、万が一ウイルスが仕込まれていても被害は最小限。
- IT部門ではよく行われる安全確認手法です。
5. 「マクロ専用PC」を用意する
業務でどうしても古いマクロを使い続ける必要がある場合、普段使いのPCとは別にマクロ専用PCを用意するのも安全対策の一つです。
- ネットワークを切断した環境でだけ利用する
- 機密情報のファイルは扱わない
といった運用にすれば、リスクを最小化しつつ必要なマクロを維持できます。
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「マクロは危険そうでよくわからない」「セキュリティと効率化のバランスをどう取れば?」そんな方におすすめの入門〜解説書籍です。初心者にも分かりやすく、実務にも直結する内容が多いのが特徴です。
- マクロ(VBA)の基本と安全な使い方を丁寧に解説
- セキュリティ警告の意味や回避策を学べる
- Excel/Wordをもっと便利に活用できるテクニック収録
まとめ
「このファイルのソースが信頼できないため…」という警告は、Microsoftがマクロによるウイルス感染を防ぐために導入した新しいセキュリティ機能です。
- 不審なファイルは絶対に開かない
- 安全と確認できた場合のみ、プロパティの「ブロック解除」や「信頼できる場所」を利用する
- 企業環境では必ず管理者の方針に従う
マクロは強力な機能ですが、使い方を誤ると大きなリスクになります。正しく理解して安全に使うことが、安心したPC利用につながります。
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