
「再起動したら、スタートのピン留めが元に戻ってる…」
――Windows 11 でときどき見かけるこの現象は、じつは大きく2パターンに分かれます。
ひとつはPC側の不具合や設定破損によるもの。
もうひとつは、会社や学校のPCで“管理ポリシー”が自動で元の並びに戻しているケースです。
本記事ではまず原因をサクッと切り分け、個人PCであれば安全な順に「直す手順」を、管理端末であれば「設計上の仕様と対処の考え方」を、どなたにもわかりやすく丁寧に解説します。
まずは3分で「どっちのケースか」かんたん判定
下の3つの質問に「はい/いいえ」で答えるだけで、原因の方向性がわかります。
質問1:このPCは、会社や学校から支給されたPCですか?
・はい → 多くの場合、PCに「職場のルール」が入っていて、ピン留めの並びが自動で元に戻る仕組みになっています。
→ この場合は不具合ではなく仕様です。この記事の「会社・学校PCのとき」をご覧ください。
・いいえ → 次へ。
質問2:設定アプリを開き、
「アカウント」→「職場または学校にアクセスする」に組織のアカウントが接続されていますか?
または、画面のどこかに「このデバイスは組織によって管理されています」
(または「一部の設定は組織によって管理されています」)
の表示がありますか?
- はい → 上と同じく、職場のルールで元に戻っている可能性が高いです。
→ 「会社・学校PCのとき」へ。 - いいえ → 次へ。
質問3:この現象(ピン留めが消える)は、最近はじまったものですか?
- はい → 個人PC側のトラブルや設定の壊れが考えられます。
→ 下の「個人PCのとき(やさしい順の対処)」へ。 - いいえ(ずっと前から) → ツールによるカスタマイズ・クリーナー等が原因のことがあります。
→ まずはカスタマイズ系ツールを一時オフにして様子見→改善しなければ「個人PCのとき」へ。
会社・学校PCのとき
- 並びが戻るのは、PCに入っている職場のルール(管理の設定)で元に戻すよう決められているためです。
- 自分で直すことは難しいので、担当の方に「スタートのピン留めをユーザー側で維持できる設定に変えられるか」を相談してください。
- 相談するときのひとこと例: 「スタートのピン留めの並びを自分で変えても、毎回初期に戻ってしまいます。ユーザーの変更を保持する運用にできますか?」
個人PCのとき
- Windowsを最新に
設定 → Windows Update → 「更新プログラムのチェック」。終わったら再起動して様子見。 - スタートだけリフレッシュ(かんたん)
Ctrl + Shift + Esc「詳細」タブ → StartMenuExperienceHost を右クリック →「タスクの終了」。数秒後に自動で戻ります。様子見。 - 保存データを作り直す(安全に)
ピンの並びをスマホでスクショ→start2.bin
を別名にしてからサインアウト/サインイン(本文の手順どおり)。新しく作られたら、もう一度ピン留めして様子見。 - それでも直らなければ
この記事の「コマンドで修復(DISM→SFC)」→「新しいユーザーで確認」→「修復インストール」の順で進めます。
※難しそうに感じたら、無理せず3のところまでで一度止めてOKです。
ワンポイント
不安なら:作業の前に必ずスクショとバックアップ(start2.bin
のコピー)を取っておくと安心です。
迷ったら:「会社・学校PCかどうか」→「更新」→「スタートのリフレッシュ」の順でOK。
個人PC向け:安全な順の対処(上から試す)
1. Start メニューのプロセスを再起動する
- 方法(簡単):
Ctrl+Shift+Esc
→[詳細]タブ →StartMenuExperienceHost.exe
を右クリック→[タスクの終了]。数秒で自動再起動します。改善するか確認。
補足:コマンドで行う場合(管理者の Windows ターミナル)
Get-Process StartMenuExperienceHost -ErrorAction SilentlyContinue | Stop-Process -Force
参考:Start メニューの再起動手順はタスク マネージャーや PowerShellからも可能です。
2. システムファイルの整合性を修復(DISM → SFC の順)
管理者の Windows ターミナルで次を順に実行
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealthsfc /scannow
DISMはイメージの修復、SFCは保護されたシステムファイルを検証・修復します。実行後に再起動。
3. スタートのレイアウト保存ファイルをバックアップ→再生成
スタートのピン留めレイアウトは、ユーザープロファイルごとに start2.bin
へ保存されています。場所:
%LocalAppData%\Packages\Microsoft.Windows.StartMenuExperienceHost_cw5n1h2txyewy\LocalState\start2.bin
※ビルドによっては start.bin
も併存。
- バックアップ(PowerShell一例)
$src = "$env:LOCALAPPDATA\Packages\Microsoft.Windows.StartMenuExperienceHost_cw5n1h2txyewy\LocalState\start2.bin"$dest = "$env:USERPROFILE\Desktop\start2_backup_$(Get-Date -f yyyyMMdd_HHmmss).bin"Copy-Item $src $dest -ErrorAction SilentlyContinue
- 再生成
StartMenuExperienceHost.exe
を終了(手順1と同様)。start2.bin
を start2.bin.old へリネーム。- サインアウト→サインインで既定ファイルが再生成されます。
- 必要に応じてピン留めをやり直して挙動を確認。
なお、Webサイトのピンなどの一部アセットは ProgrammableTilesAssets
を併せて扱う例がQ&Aに見られます(バックアップ時の補助情報として)。
4. 新しいローカルユーザーで再現するか確認(プロファイル切り分け)
設定 →[アカウント]→[その他のユーザー]→[アカウントの追加]でテスト用ユーザーを作成し、同現象が出るか確認。新ユーザーで 発生しなければ既存プロファイル側の問題と判断できます。
5. サードパーティのUI改変ツールを一時無効化
ExplorerPatcher/StartAllBack などのシェル改変ツールがピン留めに影響する事例が報告されています。現象の切り分けとして一時アンインストールor停止で挙動を確認しましょう。
6. それでも直らない場合:修復インストール(インプレースアップグレード)
個人データやアプリを保持したままWindowsを上書きして修復する方法です。公式の手順・解説を参照してください(ISOやインストール アシスタント利用)。
企業・学校など管理端末でのポイント(管理者向け要約)
- Windows 11 ではStart レイアウトの配布をJSON/XMLで行い、GPOやIntune(MDM)から固定(ユーザー変更不可)にもできます。この設定が有効だとユーザー側のピン変更は維持されません。
- Intune で既定レイアウトを配布した構成では、サインインやポリシー再適用で定義が再現され、ユーザーの並べ替えは持続しない運用が一般的です(運用事例・技術記事)。
- 設計のコツ
- 初期体験用の既定レイアウト(Default)のみ配布し、ユーザー変更を尊重したい場合は固定ポリシー(変更不可)を避ける。
- IntuneのConfigureStartPins(OMA-URI)でJSONを配り、固定度合いを意図に合わせて調整。
※ 管理下のPCでユーザーのピンが毎回戻るのは仕様通りの可能性が高いので、“不具合”ではなくポリシー設計の話と明示できます。
バックアップ&復元の実用メモ
- 手動バックアップ:
start2.bin
を定期的にコピーしておく(上記スクリプト)。復元はアプリ停止→既存start2.bin
を置き換え。 - 補助ファイル:サイトピンなどのアセットは
ProgrammableTilesAssets
を一緒に退避しておくと復元がスムーズなケースあり。
よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ start2.bin
が毎回初期化されるの?
A. 管理ポリシーでレイアウトが固定されているか、プロファイルやシステム側の破損が疑われます。Q&Aでは24H2でも“再起動やサインアウトでピンが既定に戻る”報告が出ています。まずは「管理端末かどうか」を確認し、個人PCなら上の順で修復を。
Q2. start2.bin
の場所はどこ?
A. %LocalAppData%\Packages\Microsoft.Windows.StartMenuExperienceHost_cw5n1h2txyewy\LocalState\start2.bin
(古いビルドは start.bin
)。
Q3. SFC/DISMはどの順番で実行すべき?
A. 公式ガイドは DISM → SFC の順を推奨しています。
Q4. 「ピン留め」ができない/メニューが反応しない
A. StartMenuExperienceHost.exe
の再起動や、エクスプローラ再起動で復帰する場合があります(タスク マネージャーから実行)。
まとめ
- 現象の正体:再起動やサインインのたびにスタートのピン留めが既定に戻るのは、
(A) 個人PC側の不具合/プロファイル破損 と (B) 管理ポリシー(Intune/GPO)による上書き のどちらかで起きることがほとんどです。 - まずは切り分け:会社・学校などの管理端末なら“仕様どおり”の可能性が高く、運用やポリシー設計の見直しが必要です。個人PCなら不具合側の対処を上から順に試します。
- 個人PCの対処順(安全な順)
- StartMenuExperienceHost を再起動
- DISM → SFC でシステム修復
start2.bin
のバックアップ → 再生成- 新規ユーザーで再現チェック(プロファイル切り分け)
- UI改変ツール(ExplorerPatcher/StartAllBack 等)を一時停止
- 改善しなければ 修復インストール(インプレース) を検討
- 管理端末のポイント:既定レイアウト配布や固定ポリシーが有効だと、ユーザーの並べ替えは保持されません。初期配布のみ・一部ピンのみ固定など、固定度合いの再設計が有効です。
- バックアップのコツ:
start2.bin
(+必要に応じてProgrammableTilesAssets
)を定期退避。並びはスクリーンショットでも記録しておくと復元が早いです。 - 予防策
- シェル改変・カスタマイズ系ツールはアップデート直後は様子見してから導入
- クリーナー系ツールでスタート関連フォルダを除外
- 強制終了や電源断は避け、シャットダウン手順を守る
- 月1回程度の復元ポイント作成やバックアップ習慣化
- クイック3分で試すなら
- タスク マネージャーで StartMenuExperienceHost を終了→再起動
- 管理者ターミナルで
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
→sfc /scannow
start2.bin
をリネーム→サインアウト/サインイン
ここまで対応しても直らない場合は、修復インストールの検討か、管理者(ポリシー担当)への相談が近道です。
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