—再生不具合・共有不可・UAC表示などをやさしく解説—

本記事では、Windows 11 24H2向けの累積更新 KB5064081(プレビュー) と KB5065426(9月の月例) に関連して寄せられている不具合・質問を整理し、だれでも実践できる回避策・対処手順を丁寧にご案内します。まず結論です。通常利用の方はKB5065426以降(または後述のOOBも含む最新累積)への更新を基本方針にしつつ、Blu-ray/地デジ視聴などDRM保護コンテンツ再生を日常的に使う環境だけは注意してください。根拠はマイクロソフトの公開情報に基づきます。
1. 2つのKBの位置づけと違い
- KB5064081:配信日 2025/08/29、OS Build 26100.5074、プレビュー(非セキュリティ)。機能改善・修正を多数含みます。
- KB5065426:配信日 2025/09/09、OS Build 26100.6584、月例セキュリティ。KB5064081の内容を内包しつつ、後述の既知問題の一部を解消。
補足:Windows 11 24H2の更新履歴ページでも上記の配列(4081→5426→OOB)が確認できます。
比較早見表
| 項目 | KB5064081 | KB5065426 |
|---|---|---|
| 種別 | プレビュー | 月例セキュリティ |
| OSビルド | 26100.5074 | 26100.6584 |
| 主なポイント | 8/29公開の機能改善 | 9/9公開、既知問題の修正を多数同梱 |
| 注意点 | 以降の更新と組み合わせでDRM再生不具合が報告 | SMBv1共有やPSDirectに既知問題(回避策あり) |
上の表は「プレビュー(KB5064081)」と「月例(KB5065426)」の立ち位置を俯瞰するためのものです。迷ったら 月例(KB5065426 以降)を基本 にし、Blu-ray/地デジなど DRM再生を常用する環境だけ注意、レガシー共有(SMBv1)が残る場合は TCP:445 を許可しつつ SMBv2/v3 への移行 を検討してください。
2. 公式が公表している「既知の問題」と現状
(1) DRM保護コンテンツが再生できない
Blu-ray/DVD/デジタルTV系アプリで、著作権保護(HDCP/DRM)付きの映像がエラー・ブラックアウト・途中停止等になる場合があります。起点はKB5064081(26100.5074)以降で、ストリーミングサービスは影響なしと明記。現在マイクロソフトが修正に取り組んでいます。
補足:この問題はストリーミングサービスには影響しません。また、EVR+HDCPを使うアプリの一部の問題は9月のプレビュー更新(KB5065789)以降で緩和されましたが、デジタル音声DRMを使う一部アプリでは引き続き不具合が残る可能性があります。最新の累積を適用してください。
(2) NDI配信がカクつく/音ズレする(解消済み)
8月の更新後、OBS/NDI ToolsなどのNDI利用でひどいスタッターが生じる事象がありましたが、KB5065426以降で解消されています。
(3) MSI修復時に標準ユーザーへUACが出る(解消+運用策)
MSI修復(Active SetupやAutodesk製品、Office 2010などを含む)に伴うUACプロンプトの想定外表示は、KB5065426で挙動が緩和され、必要に応じてMSI単位で許可リスト(アローリスト)運用も可能になりました。
(4) SMBv1共有に接続できない/NetBT経由で失敗(回避策あり)
2025年9月の更新適用後、レガシーなSMBv1 + NetBT経由の共有へ接続できない場合があります。TCP 445 を許可するとSMBが自動的にTCPへフォールバックし復旧します(※SMBv2/v3は非影響)。恒久修正は今後の更新で提供予定。
(5) PSDirect(Hotpatch環境のVM間)接続失敗(回避策あり)
9月の更新適用デバイスで、ホスト/ゲストの片方だけ未更新などの条件でPSDirectが断続的に失敗することがあります。ホスト・ゲストの両方に最新更新(KB5066360等)を適用してください。
3. いまの運用指針(どれを入れるべき?)
- 一般的なPC利用:KB5065426以降への更新を基本にしてください。NDI問題やMSI/UACの挙動が整います。
- 光学メディアや地デジ視聴が必須:DRM再生不具合が残る可能性があります。現状はストリーミングに切替、または修正提供まで様子見の判断が安全です。
- 企業・教育機関での一括運用:SMBv1/NetBTの環境が残っている場合は、ポリシーやFW設定でTCP 445を許可しつつ、SMBv2/v3への移行計画を前倒ししましょう。
なお、OOB(臨時)更新KB5068221が公開され、KB5065426のセキュリティ修正を内包したうえで追加の品質改善が含まれます。常に「最新の累積(LCU)」を採用する方針が無難です。
4. だれでもできる具体的な対処手順
ここでは、読者の方がすぐ実践できる形で、「症状別」→「最短ルート」→「根本対策」の順にまとめます。時間がない場合は各項目の①だけを試してみてください。
A. SMBv1/NetBT 共有に接続できない(回避策あり)
- 最短ルート(回避):ファイアウォール/UTMでTCP:445(SMBの直接TCP)を許可します。これによりNetBT経由からTCPへフォールバックし、接続が復旧するケースが多数あります。
- 確認ポイント:
Win + R→\\サーバー名\共有名と入力して接続テスト。PowerShellが使える場合は、Get-SmbConnectionで Dialect(SMBバージョン)が2/3になっているか確認。 - 推奨の恒久策:SMBv2/v3へ移行(旧NAS/複合機のファーム更新、SMBv2/v3対応設定)。やむを得ずSMBv1を残す場合も、445の許可+外部公開の禁止は必須です。
- 家庭/小規模向けの具体例:「Windows セキュリティ」→「ファイアウォールとネットワーク保護」→「詳細設定」→「受信の規則」で ファイルとプリンターの共有 (SMB 受信) を有効化。ルーターのパケットフィルタでも外向けの445は閉じたままにします。
- 企業/学校向けメモ:GPO/MDMで「SMBv1無効」「SMBv2/v3必須」をベースライン化。移行完了まではセグメント分離+監査ログで暫定運用を。
用語ミニBOX:SMBはWindowsの共有プロトコル。SMBv1は古く脆弱性の歴史があり、SMBv2/v3が推奨。NetBTは古い名前解決/トランスポート経路で、直接TCP(445)接続の方が安定・安全です。
B. DRM保護コンテンツが再生できない(Blu-ray/DVD/地デジ)
- 最短ルート(まずはここから):アプリ(再生ソフト)とGPUドライバを最新に。再起動も忘れずに。HDCP対応が弱いHDMIケーブル/切替器は一度外し、PC⇔ディスプレイを直結して検証。
- 次の一手:Windowsの表示の詳細設定でリフレッシュレートを60Hzに下げる/HDRを一時的に無効にする/外部モニターが複数ある場合は単一表示に切替える。これでHDCPハンドシェイクが安定することがあります。
- ケーブル/ポート見直し:HDMIは規格差や劣化の影響が顕著です。別ポート/別ケーブルに差し替え、4K/高リフレッシュ環境では「認証済みケーブル」を使用。
- アプリ設定の見直し:再生レンダラーが選べる場合はEVR(Enhanced Video Renderer)を選択。オーバーレイ表示や録画系フック(OSD、キャプチャソフトのオーバーレイ)はオフに。
- 代替手段:一時的にストリーミングサービスへ切替(DRM種別が異なるため回避になることがあります)。業務で視聴が必須なら、修正更新の提供まで更新の保留も選択肢。
補足: HDMI分配器やキャプチャ機器、古いAVアンプ経由はHDCPが不安定になりやすいです。問題切り分け時は「PC→ディスプレイ直結」「ケーブル交換」が鉄板です。
C. NDI配信が重い/音ズレする
- 最短ルート:最新の累積更新を適用(本記事の推奨に従う)。NDI Tools/OBSも最新版に更新。
- ネットワークの基礎固め:有線接続を推奨。Wi-Fiの場合は5GHz/6GHz帯、PC側の電源プランを高パフォーマンスに。NICの省電力機能(省電力イーサネットや省電力リンク)をオフにする。
- Windowsファイアウォール:NDI関連アプリの受信許可を確認(プライベート/ドメイン)。ネットワーク プロファイルは「プライベート」に設定。
- NDI設定の工夫:ビットレートを一段落とす/必要に応じて送受信のトランスポート設定(UDP/TCP)を切替。同一セグメント内での運用とし、L3越えやVPN越えは避ける。
- 同時起動アプリの整理:録画/編集/クラウド同期などI/O負荷が高いアプリは停止。CPU/GPUの使用率が頭打ちならプリセットを1段階落とす。
D. MSI修復時に標準ユーザーへUACが出る
- 一般ユーザー向け:アプリの「修復/変更」は管理者アカウントで実行(右クリック→管理者として実行)。職場PCはIT管理者に依頼するのが安全です。
- まずは最新化:Windowsの最新累積を適用。挙動が緩和され、不要なUAC発生が減ります。対象アプリも最新のMSI/修復モジュールへ更新。
- 管理者向けの確実な方法:ソフト配布はIntune/Configuration Manager 等で「システム権限」実行に統一。修復系はサイレントパラメータ(
msiexec /fvomus <MSI> /qn等)で配布し、ユーザー操作を介さない。 - 署名と信頼性:配布するMSIはベンダー署名済みを原則に。ユーザーPC側で不明な配布元のMSIを禁止(アプリ制御/AppLocker/WDAC)しておくと誤操作を防げます。
- どうしても出る場合:そのMSIがelevated custom actionを含むためです。UACは仕様上必要になるため、配布方式(システム権限)に寄せるのが最短解です。
小ワザ集
・問題切り分けは「再起動→ケーブル直結→別ポート/別ケーブル→別ディスプレイ」の順が最短。
・更新直後の挙動不安定は、再起動2回で安定することが多いです(ドライバ/サービスの再初期化)。
・VPN/プロキシを使っている場合、再生/共有のテスト中は一時無効化で変化を見ると原因絞り込みが早いです。
5. 手動更新・ロールバックの基礎知識(安全第一)
Windows Updateで正常に進まない場合は、Microsoft Update CatalogからMSUを取得し、DISMで適用する方法があります。例
- 適用(管理者コマンド)
DISM /Online /Add-Package /PackagePath:C:\Packages\Windows11.0-KB5065426-x64.msu
(KB5064081も同様の手順・記述あり)
アンインストールが必要なケースは、SSUとLCUが結合されているため wusa /uninstall では不可。DISM /Online /Remove-Package によるLCUの削除手順が案内されています(パッケージ名は DISM /Online /Get-Packages で確認)。
注意:WUSAで共有フォルダ上の複数.MSUから実行すると失敗する既知の問題があり、一度ローカルにコピーしてから実行するのが安全です。なおDISM /Add-PackageはWindows 11 21H2以降ならオンラインでMSU適用に対応しています。
6. 迷ったらこの判断
- 一般ユーザー:最新のKB5065426以降(OOB含む)へ。
- BD/DVD/地デジが業務必須:再生アプリの更新+ストリーミング代替で凌ぎ、修正が出たら適用。
- SMBv1/NetBTのレガシー共有:TCP 445 許可で当面しのぎ、SMBv2/v3へ移行。
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更新前後の“保険”に。まずはこの5点
- リカバリー用に:USBメモリ・回復ドライブの作成や手動更新(MSU持ち込み)に。32GB以上推奨。
- ケーブル周りの切り分けに:HDMIケーブル・画面が真っ暗・HDCP関連の誤判定時はケーブル交換で改善することも。
- ネットワークの代替手段:USB Bluetooth/Wi-Fiアダプタ・ドライバ不調やSMB切り分け時の“仮ネットワーク”として。
- クリーニング:エアダスター・端子のほこり・酸化で映像/通信が不安定になるケースの定番対策。
- 体系的に学ぶなら:Windows 11 解説書 / 更新・復元・セーフモードなど“いざ”に役立つ基礎を短時間で復習。
まとめ
- 基本方針:迷ったら 月例のKB5065426(またはその後続/OOBを含む最新の累積更新)を適用 してください。8月以降に目立った NDIのスタッター や MSI修復時のUAC挙動 はここで改善されています。
- 注意すべき環境:Blu-ray/DVD/地デジなどDRM保護コンテンツ を日常的に使う場合は、再生不具合が続く可能性があります。アプリを最新版に更新しつつ、当面は ストリーミング等の代替 を検討してください。
- 共有トラブル:レガシーな SMBv1+NetBT を使う環境では接続できないケースがあります。TCP:445の許可でフォールバック させるか、早めに SMBv2/v3へ移行 しましょう。
- 失敗時の基本手順:空き容量の確保、VPN/プロキシ一時無効、DISM / SFC、Windows Updateの再初期化、Microsoft Update Catalogからの手動MSU適用 が有効です。ロールバックは 最小限・一時的 にとどめ、最新累積へ復帰 を前提にしてください。
更新前チェックリスト(すぐ使えます)
- 重要データのバックアップ(外付けSSD/クラウド)
- 復元ポイント・回復ドライブの用意
- デバイスドライバと視聴アプリの更新(DRM系は特に)
- セキュリティソフトの一時保護やVPNの切り替え方を確認
- 失敗時に使う MSUファイルの保管場所 と 管理者権限のコマンド をメモ
最後に:記事内では 「配信日」「OSビルド」「KB番号」 を明記しておくと、読者が自分の環境と照合しやすく、後日の追記や差分説明もしやすくなります。今後の修正やOOBが出たら、冒頭の“最新情報”欄に1行追記 していく運用がおすすめです。
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