
はじめに
Windows 11(24H2)の累積更新 KB5063878 をきっかけに、ネット上で「SSDが消える/認識されない」という話題が急拡散したことがあります。
ただし、現在までに分かっている最新整理は少し冷静です。Microsoftは調査のうえ「更新がSSDを壊した(ブリックした)という直接の証拠は見つからない」という立場を示しており、SSDコントローラ大手のPhisonも長時間テストで再現できなかったとしています。一方で、レビュー用など一部環境で工程版(エンジニアリング/プレリリース)ファームウェアや古いBIOSが絡んだ可能性が語られ、さらに偽の“影響一覧”文書が拡散して混乱が増幅しました。
この記事では、「何が事実で、何が未確定か」を分けて整理し、読者が今すぐ取れる安全策(予防・復旧)をまとめます。
1. まず結論:KB5063878で「SSDが壊れる」と断定はできない
最初に結論です。現時点で「KB5063878が原因でSSDが壊れる」と断定できる公的根拠はありません。
- Microsoftは、ハードウェアメーカー(Phisonを含む)と調査したうえで更新が直接原因という証拠はないというスタンスを示しています。
- Phisonも、報道で言及されたような致命的障害を社内の長時間検証では再現できなかったとしています。
- また、問題を煽る形で出回った「影響コントローラ一覧」のような文書は偽造(偽文書)としてPhisonが法的措置の意向を示し、情報のノイズが非常に大きかったのも事実です。
大事な考え方
「更新が“きっかけ”になって症状が表面化する」ことはあり得ますが、「更新が“唯一の原因”」とは限りません。ストレージは、ファームウェア/BIOS/ドライバ/電源/温度/空き容量など複数要因が絡みます。
2. なぜここまで混乱した?(誤解が広がった3つの理由)
- 更新直後は大量の書き込みが起きやすい
累積更新・最適化・キャッシュなどで負荷が増え、潜在的な不安定さが表面化しやすい。 - 工程版(プレリリース)FWの可能性
一部のレビュー環境などで「製品向け最新版」ではないファームウェアが使われ、そこが疑われました(一般ユーザー環境とは条件が違う可能性)。 - 偽文書・未検証の“影響一覧”が拡散
不安を煽る情報が独り歩きし、「更新=悪」の印象が固定化しやすかった。
3. 影響しやすい“条件”は?(モデル名より、まずFWと環境)
ネット上には「このSSDが危険」というリストが出回りましたが、モデル名の羅列はおすすめしません。誤記や混在が起きやすく、偽情報も紛れやすいからです。
代わりに、チェックすべきは次の4つです。
- SSDのファームウェアが最新か(最優先)
- BIOS/UEFIが最新か(NVMe互換・省電力挙動に影響)
- チップセット/ストレージ関連ドライバ(Intel RST/AMDなど)が適正か
- 電源・温度・空き容量(高負荷時に不安定化しやすい)
最短の確認:SSDメーカー公式ユーティリティで「ファームウェア更新が出ていないか」を確認するのが最短です。Crucial=Storage Executive、WD=Dashboard、Corsair=SSD Toolboxなど。
4. いますぐできる安全策(確実&現実的)
A. SSDファームウェアを最新化する(最重要)
- 必ず公式ツールで実施(非公式の量産ツールや強制書き換えは避ける)
- ノートPCはAC給電で実施(更新中の電断は危険)
- 更新前にバックアップ → 更新 → 再起動 → SMART確認
B. バックアップを二重化する(外付け+クラウド)
ストレージのトラブルは“原因が何であれ”起きます。重要データは外付けストレージ+クラウドの二系統にしておくと、最悪でも詰みません。
C. 大容量の連続書き込みは「分割・間隔」で安全側に
もし不安があるなら、ゲームの巨大パッチ適用や数十GB単位のコピーは分割し、間隔を空けて温度も見ながら行うと安全側です(あくまで暫定の“事故回避”策)。
D. 既にSSDが“見えない”ときの応急処置
- BIOS/UEFIでSSDが認識されているか確認(OS以前の切り分け)
- Windowsが起動するなら「ディスクの管理」で状態確認(オフライン化・未割り当てなど)
- 別PC+NVMe-USB外付けケースで読めるか試す(データ救出優先)
- Linux Live USBでマウントを試し、読める範囲を退避
- どうしても認識しない場合は、自己流で弄らずメーカーサポート(RMA)へ
注意:「強制リフラッシュ」「量産ツールで復旧」は、データを失う可能性が上がります。データが大事なら、まず“読み出し(救出)”が先です。
5. KB5063878の公式情報で分かっていること(Known issues)
KB5063878のMicrosoft公式ページには、WSUS配信時のインストールエラー(0x80240069)など複数の既知の問題が記載されていますが、少なくとも公式の「Known issues」欄にSSDが消えるという項目は明記されていません。
つまり、SSD消失の話は公式に再現が確定した既知問題として掲載されている類いではない、という整理になります(不具合報告がゼロという意味ではありません)。
よくある質問(Q&A)
Q1. Windows UpdateがSSDを壊したのですか?
A. 現時点では断定できません。Microsoftは調査で「更新が直接原因という証拠はない」立場を示し、Phisonも長時間検証で再現できなかったとしています。
Q2. 影響するSSDモデルはどれ?
A. 確定した公式リストはありません。モデル名よりも、メーカー公式ツールでファームウェア更新を確認するのが最短で確実です。
Q3. デバイスマネージャーの「ドライバ更新」で直りますか?
A. 多くの場合、SSDのファームウェア更新はドライバ更新とは別物です。メーカー公式ユーティリティで確認してください。
Q4. 更新中に電源が落ちるとどうなりますか?
A. 最悪、SSDが認識不能になる恐れがあります。必ずAC給電で実施し、更新前にバックアップを取ってください。
Q5. SSDが突然見えなくなったら最初に何をする?
A. まずBIOSで認識されるかを確認し、次に別PC+外付け化で読めるか試してデータ救出を優先してください。無理な復旧操作は後回しが安全です。
[PR] データ消失が不安な方へ
万が一SSDが突然認識されなくなっても、バックアップがあれば安心です。信頼性の高いSSDとあわせて、外付けストレージやクラウド保存を活用してみてください。
まとめ
- KB5063878をきっかけに「SSDが消える」話題が拡散したが、更新がSSDを壊すと断定できる根拠はない。
- Phisonは偽文書の拡散を否定し、長時間テストで再現できなかったとする報道もある。
- 読者が取るべき現実的な対策は、SSDファームウェアの最新化、バックアップ二重化、不安がある場合の大容量書き込みの分割。
- すでに見えない場合は、自己流の強制復旧より、データ救出を最優先に。
ストレージの不調は、原因がWindows側でもSSD側でも「起きた後に焦る」と被害が拡大します。最新ファームウェア+バックアップを“日常の保険”にして、トラブルに強いPC環境を作っておきましょう。

