
はじめに
2025年夏以降、世界中のユーザーから「Windowsアップデート後にSSDが突然認識されなくなった」「PCが起動できない」といった深刻な報告が相次ぎました。特にWindows 11 バージョン24H2適用後に発生したことから、多くの人が「Windows Updateが原因だ」と考え、SNSやフォーラムで大きな話題になりました。
しかし、その後の調査によって原因が明らかになりました。実際には Microsoftの更新プログラムそのものではなく、Phison製コントローラを搭載した一部SSDのプレリリース版ファームウェアに不具合が存在していた のです。
この記事では、なぜ誤解が広まったのか、どのSSDが影響を受けたのか、そしてユーザーが今すぐ取るべき対策について詳しく解説します。
1. SSD消失問題の経緯
- 2025年6月から配信されたWindows 11 24H2累積更新(KB5063878 など)適用後に、SSDが突然認識されないケースが報告されました。
- 多くは「Windowsアップデート直後」に症状が出たため、自然と「更新プログラムが原因」と考えられました。
- ところがその後、SSDメーカーのPhisonが調査を行い、プレリリース版ファームウェアに潜んでいた不具合がトリガーになっていたことを発表。
- Windows Updateはあくまで「大量のデータ書き込み」を誘発したきっかけであり、根本原因はSSD側にあったのです。
2. プレリリース版ファームウェアとは?
SSDのファームウェアは、ストレージを制御するいわば「頭脳」です。製品出荷前の段階では、テスト目的の「プレリリース版」が使われることがあり、一部が市場に出回ってしまうこともあります。
今回の問題は、プレリリース版ファームウェアを搭載したSSD が、特定条件下で不具合を起こすことに起因していました。
- 大容量ファイル(50GB以上)の連続書き込みでフリーズ → 認識不能に
- 内部キャッシュやHMB(ホストメモリバッファ)処理が暴走
- 再起動してもSSDがBIOSから見えなくなるケースも
つまり「Windows Updateによる大量の更新ファイル展開」が、隠れていたバグを引き出しただけだったのです。
3. 影響を受けたとされるSSDモデル
調査によれば、Phison製のE12/E16/E18/E21などのコントローラを搭載したSSDで報告が集中しました。代表的なモデルは以下の通りです。
メーカー | モデル例 | 備考 |
---|---|---|
Corsair | Force MP600 / MP510 | Phison E16/E12 搭載 |
Kioxia | Exceria Plus G4 / G3 | 一部ロットにプレリリースFW |
SanDisk / WD | Extreme Pro NVMe / WD SN770 / SN5000 | FW更新が推奨 |
Crucial | P3 Plus | E21搭載モデルで症状確認 |
その他 | Phisonリファレンス設計採用SSD | 中小ブランドでも影響あり |
※すべてのロットが影響するわけではありません。製造時期や出荷先によって差があります。
4. なぜ「Windowsのせい」と誤解されたのか?
理由① タイミングの一致
Windows Update直後に発症するため、誰もがまず更新を疑いました。
理由② 過去の事例
WindowsアップデートによってSSDの書き込み寿命が悪化する問題が過去に存在したため、ユーザー心理的に「またか」と連想された。
理由③ Microsoftの沈黙
当初はMicrosoftから公式コメントがなく、SNSやフォーラムで「更新=悪」の構図が広がってしまった。
結果、根本原因が明らかになるまで「WindowsがSSDを壊した」という誤解が世界的に拡散しました。
5. ユーザーが今すぐ取るべき対策
(1) ファームウェア更新
- 各メーカーの公式サポートページで最新ファームウェアを確認。
- Corsair SSD Toolbox、WD Dashboard、Crucial Storage Executiveなどの専用ツールで更新可能。
(2) データバックアップ
- 万が一の再発に備えて、重要データは外付けSSD/HDDやクラウド(OneDrive/Google Driveなど)に保存。
(3) 不具合発症中の応急処置
- 別PCに接続してデータ救出を試みる。
- Linux Live USBでマウントして最低限のファイルを退避。
- BIOSでSATA/NVMeモードを切り替えて再認識させる場合もある。
6. 裏技・応急対応(上級者向け)
- 外付けケース経由で読み出し:M.2 NVMe → USB変換ケースを利用し、別PCでデータをコピー。
- 仮想環境に接続:SSDをVHD化してVirtualBoxやVMwareで起動を試みる。
- ファーム書き換え失敗時のリカバリ:メーカーによっては「強制リフラッシュツール」を提供していることもある。
ただしこれらは高度な操作であり、最悪の場合データが完全に消える可能性もあるため、慎重に行う必要があります。
7. 今後への教訓
今回の件で改めてわかったのは、アップデート直後のトラブルは必ずしも「Windows側の不具合」ではないということです。
- ハードウェア側の隠れた不具合が、アップデートという負荷で表面化することがある
- ファームウェア更新はBIOS更新と同じくらい重要
- 定期的なバックアップが最大の防御策
特にSSDは高速化の裏でコントローラが複雑化しており、ファームウェアの完成度が安定性に直結します。
[PR] データ消失が不安な方へ
万が一SSDが突然認識されなくなっても、バックアップがあれば安心です。信頼性の高いSSDとあわせて、外付けストレージやクラウド保存を活用してみてください。
1. PhisonのプレリリースFWはOEMテスト用
Phison製SSDは多くのブランド(Corsair、Kioxia、SanDisk、ADATAなど)に採用されていますが、メーカー向けに配布される「プレリリース版ファームウェア」は、安定性よりも新機能検証を目的としていることがあります。これが誤って一般販売モデルやユーザー環境に混入したのが、今回の問題の背景とされています。つまり、ユーザーの手元に届いた時点で“完成品”ではなく“評価版に近いファームウェア”が走っていた可能性があるのです。
2. Firmware更新失敗=認識消失リスク
SSDのファームウェア更新は、途中で電源が落ちたり不正終了すると「ブリック化(認識不能)」につながります。特にPhison系コントローラは、内部の安全領域に書き込む方式を取っており、更新中の失敗で安全領域が壊れると復旧が難しい構造になっています。そのため、ノートPCでバッテリー駆動中にFW更新しないことが重要です。
3. ファームウェア更新は「専用ツール」推奨
多くのユーザーはWindows標準の「デバイスマネージャー」でドライバ更新と勘違いしていますが、SSDのFW更新はブランドごとの専用ユーティリティ(例:Crucial Storage Executive、Corsair SSD Toolbox)を使うのが鉄則です。これらのツールは、失敗時のリトライ機能や電源監視を組み込んでおり、安全性が高いです。
4. 非公式に使える復旧ルート
一部のPhison SSDは、認識不能になっても内部のセーフモードに入ると再度FWを書き直せる仕組みを持っています。メーカーのRMAサポートでしか公開されないツール(量産用ユーティリティ)を使う必要がありますが、裏ルートとして「データは無理でもSSD自体は蘇る」ケースがあります。これがメーカー修理で“データは消えたが新品同等に交換された”と言われる理由です。
まとめ
- SSD消失問題の原因は Windows Updateではなく、Phison SSDのプレリリース版ファームウェア でした。
- Windowsはあくまでトリガーであり、根本的にはSSD側の問題。
- ユーザーは 最新ファームウェア適用と定期バックアップ を徹底することが最重要。
- 「アップデートで壊された」と思い込む前に、ハード側の情報も確認する習慣を持つことが今後の安心につながります。