
はじめに
Windows 11のアップグレード後や、最近のセキュリティ更新後に突然現れる
「シムSBATデータの確認に失敗しました」
「セキュリティポリシー違反」
というメッセージ。
初めて見るとびっくりしますが、これは最近導入が進んでいる Secure Bootの新しい保護機能「SBAT」 が関係しています。
この記事では、
- なぜこのエラーが起きるのか
- どんなときに出やすいのか
- どうやって対処すれば良いのか
を、順番に丁寧に解説していきます。
Secure Bootの新しい保護機能「SBAT」とは?
SBAT(エスバット と読みます/Secure Boot Advanced Targeting の略) は、従来のSecure Bootの仕組みをさらに細かく制御する新しい保護機能です。
通常のSecure Bootでは「正しい署名がある起動ファイルなら許可」という単純な仕組みでしたが、SBATでは、さらに「いつ発行された署名なのか」「古いバージョンが危険視されていないか」まで評価します。
SBATがチェックするポイント
• ブートローダーやカーネルのSBATバージョン情報(履歴データ)
• 発行元のセキュリティポリシー(廃止された鍵の利用有無)
• 危険度の高い古い署名バージョンの排除
これにより、
• 過去に一度は「署名あり」と許可された古いブートローダーでも、
• 後から「これは危険」と判断されたものはブロックできる
という新しいセキュリティレイヤーが追加されています。
主なエラーメッセージ例
実際に出るメッセージの一例です。
- シムSBATデータの確認に失敗しました
- セキュリティポリシー違反
- Secure Boot Image failed to verify with SBAT policy
- Security Policy Violation
ポイントは、どれも Secure Boot関連 ということです。
なぜ今このエラーが増えてきたのか?
2025年以降のWindows 11(特に24H2世代)は、SBATを含むSecure Bootの強化が本格的に進行しています。
- Microsoftが古いセキュアブート鍵を廃止
- BIOSメーカーがSBAT準拠を求められる
- Windowsアップデート側もSBATチェックを強化
このため、以下のようなPCで特に発生しやすくなっています。
- 中古PCや自作PC
- 古いLinuxを使っていたPC
- BIOSが古いままのPC
- 一度カスタムSecure Boot設定をいじったPC
特にこのタイミングでエラーが急増している背景には、「古い安全なものもいつまでも許可し続けない」 というセキュリティ強化の流れがあります。攻撃者が古いブートローダーの脆弱性を突いて侵入する事例が増えたことで、各社が一斉にSBATの運用強化を進め始めているのが現状です。
主な原因一覧
原因 | 具体的内容 |
---|---|
BIOSがSBAT未対応 | 古いファームウェアのままで、SBAT検証項目に未対応 |
古い起動ドライバー | 過去にインストールされた署名切れのドライバー・起動ローダーが残存 |
累積更新後のSBAT適用 | Windows UpdateでSBATが新たに有効化されるケース |
Secure Bootの「カスタム」設定残り | 古いPK(プラットフォームキー)やdb(許可リスト)が残存 |
このようにSBATエラーは「単純にWindowsのせい」だけではなく、PC側(BIOSや過去の設定)の影響が大きく関わっているのが特徴です。特に中古PCや、過去にLinuxを入れていたマシン、自作PCなどは想定外の古い情報が残っていて引っかかるケースが目立っています。逆に言えば、しっかり準備すれば事前に防げるエラーとも言えます。
対処法① BIOS(UEFI)を最新版にアップデートする
BIOSアップデートは最も確実な根本解決策
各メーカーは2024年〜2025年にかけて、SBAT対応BIOS を順次配布しています。これが最も本質的な修正方法です。
BIOS更新の具体的手順
- メーカー公式サイトにアクセス
→ 例:Dell、HP、Lenovo、ASUS、MSIなど - 型番・モデル名を検索し、最新BIOSをダウンロード
- ダウンロードしたBIOS更新ツールを実行
※多くの場合、Windows上でそのまま実行可能 - 更新中は電源断に注意!UPS利用推奨
【補足】
古い自作マザーボードではBIOS更新が提供終了している場合もあります。
また、BIOS更新失敗時は深刻な不具合を生む可能性もあるため、事前バックアップと慎重な操作が重要です。
対処法② Secure Bootの設定を「出荷時リセット」する
Secure Bootのカスタムモードが原因の時に有効
一部のPCでは、Secure Bootの「カスタム」モードが有効になっており、古い鍵情報(PK, KEK, DB, DBX)が残っていることでSBATに引っかかるケースがあります。
リセット手順
- BIOS(UEFI)画面に入る
- Secure Boot設定に移動
- 「Restore Factory Keys」または「Standard Mode」選択
- 変更を保存して再起動
これにより、署名検証の最新状態に戻せます。
対処法③ Secure Bootを一時的に無効化する(応急処置)
どうしても急ぎで起動したい場合の手段
- BIOS画面に入り、Secure BootをDisabledに設定
- 起動は可能になる(ただしセキュリティは低下する)
※常用は推奨しませんが、重要な作業が残っている場合の一時しのぎには使えます。
対処法④ 古いドライバー・ブート情報の整理
特にLinuxを併用していたPCでは、ブート領域に古いGrubなどが残っていてSBATに引っかかることもあります。
- 不要なLinux領域・旧ブートエントリーの削除
- Windowsの「bcdedit /enum all」コマンドで古いブート情報を確認・整理
⚠️専門知識が不安な場合は無理に触らず、プロやメーカーサポートに相談がおすすめです。
今後の予防策
- BIOSは常に最新版を維持すること
- Windowsの累積更新前後にSBATエラーが出ていないか注意
- 中古PC購入時はSecure Bootの状態も確認しておく
今後はSBAT以外にも、より細かなセキュリティ検証が導入される可能性があります。特に中古PCや法人リース返却品などを購入する際は、事前に
「BIOSがSBATに対応しているかどうか」
も確認しておくと安心です。 PC購入後の最初のアップデート前にBIOSを最新化しておくと、多くのエラー予防につながるでしょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. パソコン自体が壊れたわけではありませんか?
A. ハード障害ではありません。セキュアブートの検証ポリシーに引っかかっただけです。
Q2. 放置すると危険ですか?
A. 放置すると今後の更新で起動不可になる可能性があります。早めの対応がおすすめです。
Q3. 自作PCでもSBATは影響ありますか?
A. あります。特に自作PCはBIOS更新が止まっているケースが多く注意が必要です。
このSBAT関連エラーは、セキュリティの進化に伴う「正常な副作用」とも言えます。エラーが出ること自体は不安になりますが、早い段階で対処すればPC自体は長く安全に使い続けることが可能です。 特にBIOSの更新は重要な予防策ですので、メーカーサイトの確認を定期的に行っておきましょう。
まとめ
以下に「状況」と「対処法」を表にまとめました。
状況 | 具体的推奨対策 |
---|---|
アップグレード前 | BIOS更新・Secure Bootの初期化 |
アップグレード直後に出た | Secure Boot「出荷時リセット」→だめなら一時オフ |
累積更新後に突然発生 | 最新BIOS確認・SBAT対応状況確認 |
何をしても改善しない | メーカーサポートへ相談 |
今回の「シムSBATデータの確認に失敗しました」問題は、これから24H2が本格配信される2025年後半にかけて、日本国内でも大きく増加する可能性が高いと見られます。
今後も当サイトでも、この新しいSecure Boot周りのトラブル情報を随時追いかけていきますので、引き続き参考にして頂ければ幸いです!
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