プリソンスマニュエル 第5話

瞬は重たい沈黙を破るように、静かに口を開いた。

「おそらく、あの魔物に…昔会った事があるんです。」

「え?『昔会った』ってどういうこと?」

あかりは首をかしげながら訊いた。

興味と疑念が入り混じった表情が顔に浮かんでいる。

瞬は、一度彼女の目を見てから、視線をテーブルの上に落とした。

「10年前、僕はある場所で不思議な老人に出会ったんです。その老人は、僕に不思議な力を与えたと自称していました。最初は冗談かと思っていましたが、それ以来、僕の人生は変わってしまったんです。」

「その力…具体的にはどういうものなの?」

身を乗り出したあかりの関心が強まるのを感じながら、瞬はさらに話を進めた。

「物や人の『オーラ』と少し先の未来が見えるんです。それ自体は無害なのですが…。」

瞬は目を閉じ、少しの間を置いて続けた。

「でも、僕がそういう力をつかうには代償が伴ったんです。力を使い続けるたびに、周りに奇妙な現象が起こるようになって…その中で最も危険だったのが、あの魔物です。」

あかりは瞬をじっと見つめ、真剣に話を聞いていた。

「つまり、その老人が与えた力が原因で、あの魔物が現れるようになったってこと?」

瞬は小さくうなずいた。

「はい。そしてその魔物は、僕の力に引き寄せられるように頻繁に現れるようになりました。」

「それなら、何故今まで何も言わなかったの?」

あかりの声には、少しの苛立ちが含まれていた。

「もしもっと早く教えてくれたら、私も何か対策ができたかもしれないのに。」

瞬は眉を寄せて少しうつむいた。

「僕一人で何とかできると思っていたんです。他人を巻き込みたくなかったんです。」

その言葉に、あかりはしばし黙り込んだ。

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