
2026年8月11日、MicrosoftはExcel 2016向けのセキュリティ更新プログラム「KB5002903」を配信しました。
KB5002903はWindows 11本体の更新ではなく、Excel 2016で確認された複数の脆弱性を修正するための更新プログラムです。悪意のあるExcelファイルを開いた際に、外部からコードを実行されたり、情報が漏えいしたりする危険性への対策が含まれています。
ただし、すべてのExcel利用者が対象になるわけではありません。主な対象はMSI形式でインストールされたExcel 2016で、Microsoft 365やクイック実行版のOffice 2016には、この更新プログラムは適用されません。
この記事では、KB5002903の更新内容や対象となる環境、インストール方法、現在確認されている不具合について、初めての方にも分かりやすく解説します。「Windows Updateに表示されたけれど、インストールしても大丈夫?」と心配な方も参考にしてください。
KB5002903とは
KB5002903は、2026年8月11日に配信されたExcel 2016向けのセキュリティ更新プログラムです。更新内容は、Microsoftの「Excel 2016用セキュリティ更新プログラム(KB5002903)」でも確認できます。Microsoft公式・KB5002903
Windows 11の機能を追加したり、動作を改善したりする累積更新プログラムではありません。Excelに見つかったセキュリティ上の問題を修正し、悪意のあるファイルを利用した攻撃からパソコンを守ることが主な目的です。
今回の更新では、次のような脆弱性が修正されています。
- Excelで意図しないコードが実行される可能性
- Excelを通じて情報が漏えいする可能性
たとえば、メールに添付された不審なExcelファイルや、信頼できないWebサイトからダウンロードしたファイルを開くことで、脆弱性を悪用される恐れがあります。
普段からExcelを使用している場合でも、信頼できないファイルを開かないことが大切です。KB5002903を適用することで、こうした危険性を減らすことができます。
なお、KB5002903は以前配信されたExcel 2016向けセキュリティ更新プログラム「KB5002886」に置き換わる更新です。過去の更新を個別に探してインストールする必要はなく、通常は最新のKB5002903を適用すれば問題ありません。
KB5002903の対象となるExcel
KB5002903の対象は、基本的にMicrosoftインストーラー(MSI)形式でインストールされたExcel 2016です。32ビット版と64ビット版の両方に対応しています。
一方、次の環境ではKB5002903は適用されません。
- Microsoft 365に含まれるExcel
- クイック実行形式のOffice 2016
- Excel 2019
- Excel 2021
- Excel 2024
- Web版やスマートフォン版のExcel
Microsoft 365やクイック実行版のOfficeは、KB5002903とは異なる仕組みで更新されます。そのため、Excelを使用していても、Windows UpdateにKB5002903が表示されないことがあります。
表示されなくても、すぐに「更新に失敗している」と判断する必要はありません。使用しているOfficeの種類によって、配信される更新プログラムが異なるためです。
使用しているExcelのバージョンを確認する方法
Excelのバージョンが分からない場合は、次の手順で確認できます。
- Excelを起動します。
- 左上の「ファイル」をクリックします。
- 「アカウント」を選択します。
- 「製品情報」や「Excelのバージョン情報」を確認します。
「Microsoft 365」と表示されている場合は、KB5002903の対象ではありません。「Microsoft Office Professional Plus 2016」などと表示されている場合は、インストール形式によって対象になる可能性があります。
さらに「Excelのバージョン情報」を開くと、32ビット版または64ビット版のどちらを使用しているか確認できます。
なお、Windows UpdateにKB5002903が自動的に表示されている場合は、通常、パソコン側で対象となるOffice製品が検出されています。32ビット版と64ビット版を自分で判断して、手動でダウンロードし直す必要はありません。
KB5002903のインストール方法
KB5002903は、通常のWindows Updateを通じて自動的にダウンロード・インストールされます。基本的には、Microsoft Updateカタログから手動で探す必要はありません。
Windows Updateからインストールする方法
- 「スタート」ボタンを右クリックします。
- 「設定」を選択します。
- 左側の「Windows Update」をクリックします。
- 「更新プログラムのチェック」をクリックします。
- KB5002903が表示された場合は、そのままインストールします。
更新後に再起動を求められた場合は、作業中のファイルを保存してから再起動してください。
ただし、Officeの更新だけで再起動が求められない場合もあります。更新履歴に「正しくインストールされました」と表示され、Excelが正常に起動できれば、基本的に追加の操作は必要ありません。
KB5002903が表示されない場合
KB5002903がWindows Updateに表示されない場合は、次のような理由が考えられます。
- パソコンにExcel 2016がインストールされていない
- Microsoft 365やクイック実行版のOfficeを使用している
- すでにKB5002903がインストールされている
- Windows Updateの確認がまだ完了していない
- 会社や学校で更新プログラムが管理されている
対象外の環境にKB5002903が表示されないのは正常です。表示されないからといって、Microsoft Updateカタログから無理にダウンロードする必要はありません。
手動でインストールする場合の注意点
KB5002903には、32ビット版と64ビット版があります。手動でインストールする場合は、Windowsの種類ではなく、Officeのビット数に合ったファイルを選ぶ必要があります。
たとえば、Windows 11が64ビット版でも、Officeが32ビット版であれば、32ビット版のKB5002903が必要です。
種類を間違えるとインストールできないため、特別な事情がなければWindows Updateから適用する方法が安全です。会社や学校のパソコンでは、管理者の許可なく手動でインストールしないようにしてください。
KB5002903で不具合は発生している?
2026年8月17日現在、Microsoftの公式ページには、KB5002903をインストールしたことによる既知の不具合は掲載されていません。
ただし、これは「すべての環境で不具合が起きない」という意味ではありません。使用しているパソコンやOfficeの構成、アドイン、セキュリティソフトなどの影響により、更新後に個別の問題が発生する可能性はあります。
更新後は、念のため次の点を確認しておくと安心です。
- Excelが正常に起動するか
- 既存のファイルを開けるか
- ファイルの保存や上書きができるか
- 印刷やPDFへの変換ができるか
- マクロやアドインがこれまでどおり動作するか
- 共有フォルダー上のファイルを開けるか
特に、マクロや業務用のアドインを使用している環境では、更新後に動作を確認しておきましょう。
なお、Excelが一時的に起動しない、画面が固まるといった症状が出ても、KB5002903だけが原因とは限りません。同じ日に配信されたWindowsやOfficeの別の更新プログラム、アドイン、ファイル自体の破損などが影響している場合もあります。
不具合が発生したときは、すぐに更新プログラムを削除するのではなく、まずExcelやパソコンの再起動、別のファイルが開けるかどうかの確認から行ってください。
KB5002903はインストールしても大丈夫?
KB5002903は、Microsoftが正式に配信しているExcel 2016向けのセキュリティ更新プログラムです。対象のパソコンにWindows Updateを通じて表示された場合は、基本的にインストールして問題ありません。
今回修正される脆弱性には、悪意のあるExcelファイルを開くことでコードを実行される可能性や、情報が漏えいする可能性が含まれています。そのため、特別な事情がなければ、更新を長期間見送るよりも早めに適用する方が安全です。
業務用のマクロや特殊なアドインを使用している場合は、作業に余裕がある時間帯に更新し、インストール後にExcelの起動やファイルの保存、印刷などを確認しておくと安心です。
Office 2016はすでにサポートが終了している
注意したいのは、Office 2016のサポートが2025年10月14日に終了していることです。
サポート終了後もExcel 2016を起動して、これまでに作成したファイルを開くことはできます。しかし、今後新たな脆弱性や不具合が見つかっても、継続的に修正プログラムが提供されるとは限りません。
KB5002903が2026年8月に配信されたからといって、Office 2016の通常サポートが再開されたわけではありません。Microsoftの判断により、サポート終了後の製品に例外的な更新が提供される場合がありますが、それを今後も受け取れる保証はありません。
今回KB5002903が表示された場合は適用しつつ、Office 2016を使い続けている方は、Microsoft 365やサポート期間内の買い切り版Officeへの移行も検討しましょう。
すぐに移行できない場合は、次の点を特に意識してください。
- Windows UpdateとOfficeの更新を最新の状態にする
- 送信元が不明なExcelファイルを開かない
- メールの添付ファイルを安易に有効化しない
- 「コンテンツの有効化」や「マクロを有効にする」をむやみに押さない
- 大切なExcelファイルのバックアップを取る
KB5002903の適用は必要な安全対策のひとつですが、サポートが終了したOffice 2016を将来にわたって安全に使えるようにするものではありません。この違いは押さえておきましょう。
更新後にExcelの調子が悪いときの対処法
KB5002903のインストール後にExcelが起動しない、ファイルが開けないなどの問題が発生した場合は、次の順番で確認してみましょう。
1.パソコンを再起動する
更新直後は、Office関連のファイルやサービスの切り替えが完了していないことがあります。
作業中のファイルを保存してからパソコンを再起動し、もう一度Excelを起動してください。「シャットダウン」ではなく「再起動」を選ぶのがポイントです。
2.別のExcelファイルを開いてみる
特定のファイルだけが開けない場合は、KB5002903ではなく、そのファイル自体に問題がある可能性があります。
新しい空白のブックや、別のExcelファイルが正常に開けるか確認してください。
メールやWebサイトから入手したファイルだけが開けない場合は、Excelの保護ビューやセキュリティ設定によってブロックされていることもあります。ただし、安全性を確認できないファイルの警告を無理に解除してはいけません。
3.Excelをセーフモードで起動する
アドインが原因かどうかを確認するには、Excelをセーフモードで起動します。
- 「Windows」キーを押しながら「R」キーを押します。
- 「ファイル名を指定して実行」に「excel /safe」と入力します。
- 「OK」をクリックします。
セーフモードでは正常に起動する場合、追加しているアドインが影響している可能性があります。
「ファイル」→「オプション」→「アドイン」から、最近使用したアドインを一時的に無効にして動作を確認してください。
4.Officeを修復する
Excelそのものが起動しない場合は、Officeの修復を試します。
- 「設定」を開きます。
- 「アプリ」→「インストールされているアプリ」を開きます。
- 一覧からMicrosoft Office 2016を探します。
- 右側の「…」またはOfficeを選択し、「変更」をクリックします。
- 表示された画面に従って修復を実行します。
Office 2016のインストール形式によって、表示される修復方法は異なります。最初に簡易的な修復を試し、改善しない場合は画面に表示される別の修復方法を検討してください。
5.新しく作成したファイルで保存を試す
既存のファイルだけで保存エラーが発生する場合は、ファイルの保存場所やアクセス権が影響している可能性があります。
新しい空白のブックを作成し、デスクトップなど別の場所に保存できるか確認してください。
OneDriveや社内の共有フォルダーにあるファイルだけで問題が起きる場合は、ネットワーク接続や同期状態も確認しましょう。
6.更新プログラムの削除は最後に検討する
再起動やセーフモード、Officeの修復を試しても改善せず、KB5002903の適用直後から明らかに問題が発生した場合は、次章の手順でアンインストールを検討します。会社や学校のパソコンでは、自分で削除せず管理者へ相談してください。
KB5002903をアンインストールする方法
再起動やOfficeの修復などを試しても改善せず、KB5002903のインストール直後からExcelに重大な不具合が発生している場合は、一時的に更新プログラムを削除して原因を切り分ける方法があります。
ただし、KB5002903を削除すると、修正された脆弱性が再び残る状態になります。削除は一時的な確認手段と考え、不具合が解消されたあとはMicrosoftの修正情報や新しい更新プログラムを確認してください。
コントロールパネルから削除する手順
- タスクバーの検索欄に「コントロールパネル」と入力して開きます。
- 「プログラム」をクリックします。
- 「プログラムと機能」を開きます。
- 左側の「インストールされた更新プログラムを表示」をクリックします。
- 右上の検索欄に「KB5002903」と入力します。
- 表示された更新プログラムを選択します。
- 「アンインストール」をクリックします。
- 画面の案内に従い、必要に応じてパソコンを再起動します。
削除後にExcelが正常に動作するようになった場合は、KB5002903または同時期に変更されたOfficeの構成が影響していた可能性があります。
一方、削除しても症状が変わらない場合は、アドイン、Excelファイルの破損、Office本体、Windows側の問題など、別の原因も考えられます。
削除した更新が再びインストールされることもある
KB5002903はセキュリティ更新プログラムのため、アンインストールしても、Windows Updateによって再びインストールされることがあります。
更新を長期間停止すると、Excel以外の重要なセキュリティ更新も受け取れなくなる可能性があります。そのため、Windows Update全体を長期間停止したり、更新サービスを無効にしたりする方法はおすすめできません。
業務で使用しているExcelに影響が出た場合は、問題が起きた日時やエラーメッセージ、使用しているOfficeの種類を記録し、社内の管理者やMicrosoftのサポートへ相談するとスムーズです。
KB5002903をインストールできないときは
KB5002903のダウンロードが進まない、インストールに失敗する、同じ更新が繰り返し表示される場合は、次の項目を順番に確認してください。
パソコンを再起動して、もう一度確認する
別の更新プログラムの処理が途中になっていると、KB5002903を正常にインストールできないことがあります。
パソコンを再起動したあと、「設定」→「Windows Update」→「更新プログラムのチェック」の順に開き、もう一度インストールを試してください。
ExcelやOfficeアプリを終了する
Excel、Word、OutlookなどのOfficeアプリが起動したままだと、更新対象のファイルを置き換えられず、インストールに失敗する場合があります。
Officeアプリをすべて終了してから、Windows Updateを再実行してください。画面を閉じてもバックグラウンドで動作していることがあるため、改善しない場合は再起動後、Officeアプリを開かずに更新を試すとよいでしょう。
空き容量とインターネット接続を確認する
更新ファイルは、32ビット版が約128.6MB、64ビット版が約133.7MBです。ただし、インストール処理には一時ファイルを保存する領域も必要になります。
Cドライブの空き容量が少ない場合は、不要な一時ファイルなどを整理してから再度試してください。また、通信が不安定な場合は、安定した回線に接続して更新します。
Windows Updateのトラブルシューティングを実行する
Windows 11では、次の手順でWindows Updateのトラブルシューティングを実行できます。
- 「設定」を開きます。
- 「システム」→「トラブルシューティング」を選択します。
- 「その他のトラブルシューティングツール」を開きます。
- 「Windows Update」の右側にある「実行する」をクリックします。
- 画面の案内に従って操作します。
完了後にパソコンを再起動し、KB5002903をもう一度インストールしてください。
Officeを修復する
Officeの更新情報やファイルに問題があると、KB5002903のインストールが繰り返し失敗することがあります。
前述した「Officeを修復する」の手順を実行し、完了後にWindows Updateをもう一度確認してください。
エラーコードを記録しておく
インストールに失敗したときに「0x80070643」などのエラーコードが表示された場合は、番号をメモしておきましょう。
同じ「インストールできない」という症状でも、原因はエラーコードによって異なります。何度も同じ操作を繰り返すより、表示された番号をもとに原因を確認した方が解決しやすくなります。
なお、Windows UpdateにKB5002903が表示されない場合は、インストール失敗ではなく、使用しているOfficeが対象外である可能性があります。Microsoft 365やExcel 2021などを使用している場合は、KB5002903を手動でインストールする必要はありません。
KB5002903についてよくある質問
Q.KB5002903はWindows 11の更新プログラムですか?
いいえ。KB5002903は、Excel 2016を対象としたセキュリティ更新プログラムです。Windows Updateを通じて配信されますが、Windows 11本体の累積更新プログラムではありません。
Q.Microsoft 365やExcel 2021・2024にも必要ですか?
必要ありません。KB5002903の対象は、主にMSI形式でインストールされたExcel 2016です。Microsoft 365、クイック実行版のOffice 2016、Excel 2021・2024などでは、別の仕組みや更新プログラムが使用されます。KB5002903が表示されなくても、更新失敗とは限りません。
Q.更新後にマクロが動かなくなった場合はどうすればよいですか?
最初に、Excelをセーフモードで起動し、アドインの影響がないか確認してください。また、ファイルの保存場所や、Excelに表示されている警告メッセージも確認します。
ただし、セキュリティ警告を消すためにマクロの設定をすべて許可するのは危険です。信頼できるファイルか判断できない場合は、マクロを有効にしないでください。
会社で使用しているマクロの場合は、自分で設定を変更せず、システム管理者やファイルの作成者へ相談しましょう。
Q.KB5002903を削除しても大丈夫ですか?
KB5002903はセキュリティ上の問題を修正する更新プログラムなので、問題がない場合は削除しない方が安全です。
更新直後からExcelが起動しないなどの重大な問題が発生し、再起動やOfficeの修復でも改善しない場合に限り、一時的な原因の切り分けとして削除を検討してください。
Q.Office 2016はこのまま使い続けられますか?
サポート終了後もOffice 2016のアプリや保存済みのファイルが突然使えなくなるわけではありません。
ただし、新たな脆弱性や不具合に対する修正が今後も提供される保証はありません。今回のKB5002903を適用したあとも安全性が永続的に確保されるわけではないため、できるだけ早めにサポート期間内のOfficeへの移行を検討しましょう。
まとめ
KB5002903は、2026年8月11日に配信されたExcel 2016向けのセキュリティ更新プログラムです。悪意のあるExcelファイルを開いた際に、コードを実行されたり、情報が漏えいしたりする可能性がある複数の脆弱性を修正します。
対象は主にMSI形式でインストールされたExcel 2016で、Microsoft 365やクイック実行版のOffice 2016、Excel 2021・2024などには適用されません。
2026年8月17日現在、MicrosoftからKB5002903に関する既知の不具合は公表されていません。Windows Updateに表示された場合は、作業中のファイルを保存したうえで、基本的には早めにインストールしてよいでしょう。
ただし、Office 2016のサポートは2025年10月14日に終了しています。今回の更新を適用しても、今後すべての脆弱性が継続的に修正されるとは限りません。
KB5002903を適用するとともに、不審なExcelファイルやマクロを安易に開かないことも大切です。Office 2016を使い続けている場合は、サポート期間内のOfficeやMicrosoft 365への移行も少しずつ検討しておきましょう。
